この世界には水界と陸界がある。
水界か陸界か・・・。
これら2つの道を選び、それぞれ進化していったグループがいる。
硬骨魚には大きく分けて
「条鰭類」と「肉鰭類」に分けられる。
■水界を選んだ条鰭類■
サケ、スズキ、フナ、コイ、カレイ・・・。
魚といえば、この条鰭類を指す。といっていいほど
現在ではすっかり魚類の主流となった硬骨魚である。
じつにその種数は2万種を越え、
魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類といった
脊椎動物全体のおよそ半数を占めるという繁栄ぶりで、
世界の7割を占める水界を牛耳るグループといえよう。
水界では、やはりその遊泳能力がものをいうわけだが、
水中を敏速に泳ぐためには強い筋肉が必要で
それを支える硬い骨は硬骨魚である彼らには備わっていたわけだ
ちなみに条鰭類の特徴は
鰭条に支えられたヒレ。
ヒレの動きを巧みにコントロールでき、
遊泳能力をさらに高めている。
ケイロレピス 属名(Cheirolepis )
条鰭類が現れたのはおおまかに4億年前。
デボン紀に生息したケイロレピスはもっとも原始的な条鰭類
の1種だ。
硬骨魚であるが、背骨の構成部分だけが硬骨で、
その他は軟骨だった。よって支えられる筋肉はそれほど
強力なものではなかっただろう。
もうひとつ原始的なところは尾ビレだ。
上向いた尾の下にヒレが伸びるという上下非相称。
現在の進化した条鰭類は上下が相性的な尾ビレとなっており
さらなる推進力をもたらし、速い泳ぎを可能としている
レピドテス 属名(Lepidotes )
恐竜時代の湖や浅海に生息した人間ほどの大きさの巨大魚だ。
肉食恐竜バリオニクス
に食べられた化石が
見つかったことで知られている。
そして、
なんといってもこの古代魚の特徴は瓦のような重厚な鱗に
ぎっしりと覆われているところだ!
この重厚な鱗は硬いエナメル質でできており、
「ガノイン鱗」と呼ばれている。
原始的な条鰭類はこのガノイン鱗で覆われ、
重装備で防御面などで役立ったかもしれないが
やはり、遊泳能力による機動面においては
かなりの制約を受けたのはいうまでもない。
そこで現在の進化した条鰭類は
厚いエナメル質を剥ぎ取り、「円鱗」「櫛鱗」といわれる
薄くて軽量なウロコで覆われている。
これで軽量化のみならず、
体は屈曲しやすく、体表は滑らかになっている。
そんなこんなで
条鰭類は遊泳能力向上という方向性で進化したわけだが
その究極形態がこいつだ!
マグロ である。
外洋で食物連鎖の頂点に位置する肉食魚だ!
見事なまでの紡錘形の体形、鱗は表皮に埋め込まれ
折りたたんだヒレを収納する溝まであり、
高速で泳ぐ際の水の抵抗を徹底的に排除した
体形になっている!
その泳ぐ速度は時速30~60km
最大速度は時速160kmにも及ぶという!
また外洋を生活圏としているため、その行動範囲はきわめて広く
高速で長距離を大回遊する。
じつに長距離遊泳に適した赤色筋が発達しており、
運動によって出た熱を体内でキープする「奇網」の発達で、
海水温より高い体温を維持し、運動能力を高めているという!
しかし
このような卓越した運動能力を維持するには
かなりのエネルギーが必要なため、
大量のエサと酸素が必要になる。
水中の酸素はきわめて低い!
大量の酸素をエラから取り入れるためには
24時間年中無休で泳ぎ続けることを強いられているのだ!
つまり
泳ぎを止めると窒息死である。
水界での進化の頂点を極めたマグロ。
その進化の代償はあまりにも大きい?
一方、もうひとつの進化の道を選んだ肉鰭類では・・・
■陸界を選んだ肉鰭類■
条鰭類と同じく硬骨魚類の仲間ではあるが
条鰭類とは対照的に
現在世界中に6種の肺魚と1種のシーラカンスが残すのみ
となっており、
肺魚は淀んだ水辺で、シーラカンスは深海へ
競合の少ない世界でひっそりと生き続けている・・・。
彼らの鰭は骨と筋肉からなり、泳ぐというよりは
歩くに適した鰭になっている。
今では衰退している彼らであるが
じつに彼らから大きなグループが生まれた!
陸上を4本の足で歩く動物だ!
両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類といった
四肢動物に進化した。
彼らは水界を諦め、陸上動物を残して衰退していった魚たち
といえよう。