彼女曰く、私の先祖が、友達の先祖に悪い事をしたから、私が罪滅ぼしの為に面倒なその友達に一生尽くさないといけないんだそうな…。
で、その友達から逃げてもずっと追っかけて来て、別の辛い事が起きるんだそうな。
面倒臭い話しである。
悪い事ってなんだろう…、どの程度だろうか…。
畑の芋を盗ったとか、そんな時代なのか?
先祖の因果が子孫に報いってヤツなのか?
先祖だか前世だかしらないがその時点で解決出来なくて今回私に回って来たとして、一方的に尽くす事で救われるのは妙じゃないだろうか。
例えば自分で解決出来ない辛い事が起きて、どうにもこうにも自己処理出来ない、納得いかない時、先祖なり前世が絡んでると言われれば、落としどころとしていいと思うし、それならば今居る自分の出来る対処能力で、次世代に悪い事が回らないよう処理する知恵なり行動を身につけるのが学びじゃないんだろうか…。
一方的に尽くせといっちゃうあたり、非情にセコイ。
尽くせば許すって、なんだそりゃ。
ただ丸ごと許し、自分が許しを乞うことで、相手を助長させるほうが罪だと思うが。
私は、
「わかった。 私はその子に一生尽くす気はないから、その追っかけてくる別の不幸を選ぶ事にするよ」
アイスコーヒーをちゅるっと吸いながら答えた。
すると彼女は、悪代官なみのシタリ顔をして言い放った。
「霊をバカにしちゃいけないよ!そんな甘いモンじゃないよ!気をつけないと命取られるよっ!」
芋を盗んで(…たかどうか知らんけど) 子孫の命かよ…。
とりあえず「そ~なんだ~」と、流した<鋁窗。
その後も彼女の勢いは衰えず、誰々にどう助言してやった
誰々の不幸を自分が貰ってやったと熱弁をふるい
「みんな困った時だけ寄って来て、私が重たいものを貰ってあげるともう知らん顔なんだよ?!みんな、ずるいのよ」
と泣きそうになり、仕舞いには
「なんでこんな風に、人の事ばっかりな人生になっちゃうんだろう」
と黙りこくった猴枣散。
私の心の声 (まったく人の為になってないと思うぞ…)
ひとりよがりな沈黙に付き合わされるのに限界を感じ、私は口を開いた。
「そんなに疲れるなら、言わなければいいんじゃない?
最終的に、ここまでしてやってるのに誰にも感謝されないって言い出すってことは、自分のどこかに、こんなにいいこと教えてやってるのにって思いがあるからでしょ?
恩に着せて辛くなるほど、引き受けなくていいんじゃない?
だって言われた側はおどかされたとか、イヤな事言われた印象しかないから知らん顔されちゃうってことでしょ?
何でも見えるってのは特殊な能力で、あなたの自信なのかもしれないけどさ、
してあげた気持ちだけが強く残るってことは、自分におごりがあるって事じゃないのかなぁ」
彼女はギョッとして私を見た。