三越伊勢丹グループは、従業員への福利厚生のため2018年から初売りを1月4日にするそうだ。
今年から日本橋三越などを除いて初売りを1月3日にしたのも、その布石である。
何でも百貨店の営業時間は拡張の一途で、社員は勿論テナントや出入り業者が疲弊の極にあったと言う。
世間並みに正月三が日を休日にすることによって、従業員がリフレッシュし個客サービスも向上するとしている。
今流行りの「お客様満足の第一歩は従業員満足から」理論を実践しているようだ。
テナント側も以前から申し入れていたようで、業界のリーダーである三越伊勢丹グループが最初に受け入れを表明したのだと言う。
それは正しい決断なのかも知れない。ネットでこのニュースに関するコメントやブログを見ると、概ね大英断と称賛するものが大半を占める。
私もそれを非とするものではないが、他の百貨店が追随するとすれば、多分強い違和感を感じるだろう。
百貨店のメイン顧客は中高年の主婦層であろうと推察する。(外商など法人顧客を除いた、個人消費者層の話である。)
これらの層は正月も休日も関係なく来店する。またネット販売のウェートが高まれば、経営として高コストの店舗型販売に拘りは薄くなるのも理解出来る。
しかし、である。百貨店がこれから生き残るためには、これまで百貨店に来ない客層の開拓が不可欠ではなかろうか。
その客層とは、サラリーマンや共稼ぎの主婦であろう。
私も含めてこれらの層は日頃百貨店の開いている時間帯には来店困難である。
正月2日・3日の初売りを楽しみにしているのも、これらの層ではないかと思うのだが、三が日が休業となればこれらの層が百貨店に行けるチャンスはなくなる。
従業員・テナントへのサービスのため、初売りを楽しみにしている客層を切り捨てることが、そんなに称賛される話なのか疑問である。
伊勢丹の社訓は「お客様第一」であったと聞くが、今回の決断に活かされているのだろうか?
従業員・テナントのリフレッシュと三が日休業は別次元の話のように思える。
あらかじめ三が日を休む従業員をローテーション化し、必要に応じてアルバイトを雇ったりテナント従業員の穴を内勤社員のローテーションで埋めるとか、休業にしない知恵はいくらでもあるように思えるのだが。
三が日を休むことに最大の価値観を置くならば、JRも私鉄も休めばよい。元旦の年賀状配達もやめればよい。2日の初荷もやめればよい。
国民全員が三が日を休んでお互い不便な正月気分を満喫すればよい。
でも、それは誰かにしわ寄せしていることに他ならない。
昔、正月返上で働く人々を紹介する番組を観たことがある。映される人々は皆誇らしい表情をしていた。
お客さんの喜ぶ顔を見ることを励みに正月も頑張る、それこそ職業人のプライドであった時代は遠くなりにけり。
こういうことを言っている私も古いのかも知れないが、従業員の満足と顧客の満足という相反するテーゼをアウフヘーベン出来ない経営者には、どうにも苛立ちを禁じ得ない。
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