このことを境に実光は政務を御座なりにすることはなくなったが、必要以上に明高の自由を奪っていた、束縛という言葉通りに屋敷から一歩も出さないような日もあるようになったが、明高は束縛されることを気にする様子もなく、むしろ喜んでいるようにもみえた。

それは幼い時にも似たようなことを経験していたからなのだ、和気の屋敷では軽率な行動をとればその代償として自由を奪われ一切の外出を禁じられ、それは息苦しさと、反発を生みだしていた、しかし今は束縛さえ実光の愛情と捉えられ、前の様な息苦しさも、反発も生まれることはなかった。

実光が政務から戻れば、時間が許す限り身体を繋げ合い、貪りあい、姿をくらます前よりも、互いを求める貪欲さは深くなるばかりだった。

ある日実光は、情事の後に明高の顔を眺めながら少し思い詰めた表情で話し出した。

 

「明高・・。そなたと共に熊野にでも参ろうかと考えておるのじゃが。」

 

「熊野でございますか?」

 

「うむ。少し都を離れようかと思うておるのじゃ。」

 

「如何なされたのでございましょう。」

 

実光のいつもとどこか違う表情と、声の張りが明高の心に一点の曇りを沸かせたのだった。

明高の表情が曇ったことに気が付いた実光は、その曇りを払うかの様に少しおどけた表情を顔に造り、明高の頬に手を当て唇を吸った。

 

「なぁに、そなたと二人旅を致したいと考えたまでじゃ。いつもとは違う風景をそなたと愛でたいと思うての。また、かようなこともいつもとは違い格別なものにもなろう。」

 

そう言うとまた猛りを戻したそれを明高の秘所に押し当て、何事もなかったかのように押し入れ、そしておもむろに腰を動かし始めた。

 

「ん・・雪信さま・・。はぁぁ。されど・・、熊野・・は遠ござ・・いあゝんん・・まする。」

 

「それは分かっておるのじゃ。じゃからこそ・・良い・・のじゃ。」

 

「なれど・・お時間が有りますまい。政務をんぁああ・・休まれるのもそう長くは・・・ゆえに・・春日大社に詣でるのは如何でございましょう。」

 

その提案を聴いて、少し動くのを止め考えを巡らした後、腰をゆっくり引き、強く押し入れ。

 

「名案ぞ!!朝廷の神事前に二人で詣でようではないか。そして、今宵の様に深く愛しもうではないか。」

 

頬を上気させ、嬉気に明高の唇に吸い付いて、身体の中を猛き物で掻き回したのだった。

このことがまさか二人のこの後に暗い未来を呼び寄せることになるなど、二人とも知る由がなかった。