まさかここで雨が降ってくるなんて青天の霹靂だった。雷鳴は轟かなかったけど、青空も見えているのに俺たちの周りは土砂降り、狐の嫁入りなんていうレベルじゃなく、スコールかってくらい。
周りに雨宿りをする場所もなく、当然俺たちの服はびしょ濡れ、俺はパンツまでビショビショだ。
あっという間の事で二人して濡れ鼠、互いを見合わせて大笑い、


「あ~あ、去年の再来。だけど去年はここまで濡れなかったなぁ。」


「お前は濡れても男前だけどさ、俺は濡れたらただの濡れ鼠だよ。しょうがねぇなぁ・・俺んちここからそれほど遠くないから来るか?服が渇くまでの間、天国の彼の話でも聞かせてくれよ。」


俺の言葉に相当驚いたらしく、少しどもりながら


「いい・・の・か・・その・家に行っても・・。」


「雨に感謝しろよ、こんな姿じゃどこの店にも入れないだろ、ついでにこの辺にはホテルもないしな。」


ホテルという言葉にかなり反応をしていたけど、別にやらしい気持ちで言ったわけじゃない、服を乾かすにはかなりの時間が必要だからだ。
俺は自転車を押しながら、まだ降っている雨の中を秋靖と一緒に歩いて帰った、道端の彼岸花がその道筋を彩っていた。
家に着くと、互いに冷えた身体をシャワーで温め、温かいコーヒーを飲みながら、秋靖の天国の彼の話を聞いていた。吹っ切れたこと、吹っ切れないこと色んな思いを胸に抱えてこいつは今生きてるんだ。
涙を流す彼を引き寄せ、その唇にそっとキスをすれば、


「もっと欲しい」


とねだられた。
そのまま深く深くキスを重ねれば、互いの身体を愛しみ始めるのは当然の成り行きだった。
男の身体の割には肌理(きめ)が細かい肌質で、指を滑られればその弾力が指から伝わる、感じやすい体質なのかどこを触っても震えるように反応を示してきた、彼の熱源が俺の腹に当たった、そこははち切れないばかりに膨らんで俺からの愛撫をそこに集めていると言った具合だった、もっとこいつを狂わしてやりたい、もっとこいつの艶声を聞きたい、理性を保てなくなった俺は、俺の熱源に被せるものを被せたら、秋靖の身体の中に埋め込んだ。
期待していたんだろうな、ほぐしてあるそこは俺を拒否することなくすんなりと受け入れた。
俺が動けば、声を少しでも殺そうと手首を口に当てて甘ったるい声をあげ、潤んだ瞳で俺を見つめてくる。
そんな顔で、そんな目で俺を焚き付けてきた、もう止まらない、もう離せない。
気が付けば、何度も何度も秋靖を抱いていた。


それからずっとこいつは俺の横にいる。
肩口にキスをすれば秋靖は目を開けた。


「もっと欲しい」


「墓参りから帰ってきてからだ。」


「そんなに行かなくてもいいじゃん。カミングアウトしたんだし。」


「違うよ、宣言しに行くんだよ、秋靖と共に歩むって」


「それ、本当?ずっと一緒?」


「そっ、プロポーズ・・・みたいなもんっ」


秋靖からの濃厚なキッスを受け止めながら、彼岸花の事を思い出す。
彼岸花・・・花言葉は「情熱」「再会」「悲しい思い出」「想うはあなた一人」など(ウィキ引用)有毒性の花で、経口すれば中枢神経の麻痺を起して死に至ることもあるが、使い方を間違えなければ、生薬にもなる。
秋靖そのものだ。


「ほら、はやく準備しろよ。お彼岸終わってしまう」


そう言って俺たちは一緒に手を繋いで墓参りに出かけた。


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