時貞が極まりつつあることが運之丞には良くわかっていた、接吻をしていないと、零れる声で周りに気づかれてしまいそうだ、一度高ぶったものから手を離し、袴の帯を外し始めた。


「御召し物が、汚れてしまいます。全部を脱がすわけには参りませぬが、ここは、外させていただきます。」


このような時でも運之丞はいつもと変わらぬ口調で、落ち着いていて、どことなく悔しい。


「運之丞は、いつもと変わらぬな・・・。儂は、乱れるのにの・・。」


「いいえ、私も、精一杯抑えております。」


時貞を見上げる顔は、高揚していることを示すように頬が赤い、そして潤んだような瞳が時貞を見つめていた、その顔を見ているだけで、ぐっと込み上げるものがある、自らも、帯を解くようにしながら運之丞からもたらされるであろう愛情を全て受け止めたいと上半身を裸にし、月明かりの中、運之丞の首に腕を回し抱きついた。


「運之丞、儂の全てを奪え。全てをお主にやる。」


「時貞様、全てを戴きます。そして、私の全てを注ぎます。」


充分だった、言葉だけでぐっと高まるそこに、運之丞が屈み口をつけた、時貞が腰を引いて逃げようとすると、逃がすまいと腰を押され、運之丞の口の中に高まったそれが収められた。舌先で、先端の窪みをこじ開けられるようにされて顎が上がる、吐息と共に漏れる声を何とか抑える為に手首を噛んでしのぐ。その様子がとても悩ましい。筋に沿って舌を這わされキュッと吸い上げられる、それを何度かされているうちに、運之丞の指が、菊の入り口の周りをゆっくりと刺激してきた、立っていられないほどの感覚に、背中を木に当てて必死で耐えていたが、そこに指が触れた途端に、前のモノからドクドクと運之丞の口の中に吐き出してしまった。それは、時貞の背負っている、悲しみ、寂しさ、辛さ全てが入り混じった濃くてドロドロとしたものだった。
その液体をゴクリと飲み干す運之丞に、驚いた時貞が


「どうしてそんなこと・・・吐き出さぬと胸が焼けるぞ。」


と荒く息を尽きながら言うと、


「時貞様の全てを戴くのです。それに、すきっ腹です、これも私の身体の一部となってくれまする。」


そう穏やかに笑って、口を塞がれた、自分の出したモノの苦い味と、運之丞の温かい口内の液体が一緒になって何とも言えない気分だ、気持ち悪いのではなく、心地よいのだ、舌を絡ませながら接吻を繰り返す、接吻に夢中になっていると、運之丞の手が敏感な胸の突起に触れてくる、佐々木と違い、とてもゆっくりと、そして優しく、そうかと思えば、つまみ上げて捩る。巧みに変化するその指の動きに翻弄されてしまう。いつの間にそのような技を運之丞は手にしてきたのだろうと不審に思った時貞は、


「ああぁぁ・・運・・之・・じょ・う・・そなたぁぁん・・どこ・で・・んんあぁあ・・はぁうん・・・・・」


「植野様仕込みでございます。私は、植野様に習っておりました。時貞様には、向きませぬか?」


「んんん・・わ・・し・・の・・乱れ・・具合でわかるであろう・・ああああ・・」


「安心いたしました。時貞様、そろそろ、私も我慢が出来なくなってきました。まだ、もう少し柔らかくしておかないといけないのですが、私も切羽詰まっております。ごめん。」


そう言うと、いつの間にやら袴を脱ぎ、着物一つになっていた。時貞を、自分の方に向かせてゆっくりと上に座らせるようにしながら、先端を中に押し込んでいく、さすがに潤滑のモノがないと入らない、刀の手入れ用に持ち歩いている油を自分の物と、時貞の入り口に塗り込み、そして中に押し入っていった。爆発一歩手前まで、張りつめたそれは時貞の内壁をえぐりながら奥へ奥へと突き進んでいく、余裕がないと言っていたそのもので、出し入れしながら奥まで進むことをせず、一気に中に入って来たのだ。

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