首筋にキスをするたびにピクンピクンってええ反応するんや、もう少しおいたしようかと企んでいたらな、携帯の着信がその企みをものの見事に打ち砕きよった。しかも、かけてきてんのおかんや!!まったく、息子をどこまで監視してん!!せっかくのい~いム~ドぶち壊しやん!!


「なんや!!」


『なんやって、えらいいいようやなぁ。なにその不機嫌な声は?ええことしてたんか?』


「そんなとこや!!」


ああ、めっちゃ腹立つ!!早よ用件いいや。あめちゃんとの甘い時間返してくれや。


『ほなよろしおすなぁ。息子があかんことしそうなんを阻むのが親の務めどす~フフフ』


思わず、自分の身体のどこかに発信器でもついとんのかいと探ってしまいそうになったやん、


「なぁ、用件なんなん?今な、一緒にいてる人おんねん、その人に悪いからさっさと切りたいんや。」


『ふ~ん帰ったらどんな子か教えてや。ああ、そうそう、カステラのことやけどな、福砂屋の本店で買うてや他やないで、本店やでほな、ええ時間すごしおす~。』


それだけの為にかけてきたんかい!!本店も支店も関係あらへんやろ!!ちょいと携帯に向かって悪態ついてた僕の様子を笑いながら見ていたあめちゃんが


「お母さんですか?いいタイミングでしたね。ちょっと助かった。」


と一言、あ~あ、絶好のタイミングすぎんねん。もうちょっとあめちゃんのええ声聞きたかったんになぁ。そう言えば、おかんなんで女の子といっしょにいるなんてわかるんや?それも教えてってどういうことなん?親の勘の鋭さに震えが走りそうや。ってことは、あめちゃんの親もそうなんやろうか?これはあかんで、早々色々してたら、あめちゃんとお付き合いさせてもらえへんようになる。押し黙ったまま、ちょっと考え込んでいた僕を何か怒ったとでも勘違いしたんか、


「ごめんなさい、でも、急には出来ないし・・。それに・・外だし・・。」


とあやまるあめちゃん、怒ってないしな、そこまで僕小さくないねん、一応大人やし・・・。


「何もあやまることないで、ごめんな、ほんまにあやまらんとあかんのは僕や。ちょっといたずらが過ぎたな。あめちゃんめっちゃ色っぽいからもっと聞きたくてなちょっと止まらなくなりそうやったんや。ほんまごめん。でも、部屋やったらよかったんかなぁ。さっきの言い方だと?」


「違います~!!もう、なんでそうなると~」


真っ赤な顔して、でも、ちょっと嬉しそうな顔してんやな、次は、もう逃がさへんで。もう一回チュッと軽くキスしてからその場から立ち上がった。

帰り道は、手を繋いで旅館までの道のりをわざと歩いて帰った。一緒にいられる時間は少しでも長く居たいという、あめちゃんの希望に僕も賛成だったからな。夢彩都っていうここいらではでかい商業施設のスタバで二人別々のフラペチーノを買って交換っこしながら歩くあいだ、やかましい爆竹の音さえも、なんや二人の門出を祝ってくれてる気さえしてくるねん。たった3日間というのにな、めちゃ長い時間すごした気がしてん。多分な、一緒にいる長さってな、どんだけ込めたが重要やと思うねんな、たとえ1年一緒にいたとしてもなそこに想いの込め方が少なかったら、この3日間とは比べもんにならんやろな。
あめちゃんを家まで送ってから、僕は旅館に戻った。まだ、電車通りからは、カンカンッカンカンッ、ドーイドーイ!!パンッパンッバババババ!!って銅鑼の音と、人の声と、爆竹の音が鳴り響いて、鎮魂の行列が続いていた。


翌朝は、午前中の御開帳に合わせて旅館を出発した、この3日間あめちゃんがずっと傍らにいてくれたんに慣れてしまってた僕は、今日の一人での行動にすでにさびしくなってる。ほんまに、これから遠距離って言うのに大丈夫なんやろうか僕・・。一つ背伸びしてから、光源寺に足を運んだ、もう、旅館からそう遠くないことわかってたから、電車使わずに歩いて向かった、もう、この道も今日でおしまいなんやな、感慨深く思いながら僕のこの街への旅行の原点の場所へ到着した。相変わらずキュウッって心臓が鳴るんは仕方ないんかもしれへんなぁ。お寺に上がって、子供らと一緒に紙芝居を見て、そして、飴屋の幽霊の像と言われる幽霊像を見せていただいた。それに関しては全然何にも感じへんかったけどな、紙芝居の時はうっかりすると涙が零れそうになるからちょっと気合が必要やった。御開帳の後には、飴が配られたんや、食べると昔懐かしい感じのする飴やった。その飴食べた時にな、ふっと思い出したんや、友達に一度もらったことのある飴を。京都の六道珍皇寺の子育て幽霊飴の飴は、べっこう飴に近かったことを。ほんまに、あめちゃんと縁があったんやな。

お寺の裏にある赤子塚に行くことはしなかったけどな、裏にまわってそこに埋められていた、僕の前世のおみつさんに、


「佐藤 甘露さんと、お付き合いすることになったで、ちゃんと連絡もするし、時間とってこっちに会いに来て気持ちをはぐくんでいくさかい、もう、ゆっくり休んでや。」


そう話しかけて、寺を後にした。心の中に温かい気持ちが流れ込んだ気がした。


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