差し出した包みを受け取ろうかどうしようかって顔で僕をみつめるあめちゃんに、


「ほら、僕から渡されるもんは遠慮せんと受け取るんや。」


「でも、これって」


さすがに長崎の人間やな、言いたいことわかるからな、


「ええんや。これは僕の気持ちなんや。かんろちゃんって呼ぶままでも、渡そうって思うてたんや。」


今頃気ぃ付いた?そうや、僕は呼び方変えてたんや、かんろちゃんって呼ぶんは、みんなの中の一人やろ、だけどな、君の名前を呼ぶんは君が僕のもんやって思えるからなんや。かんろちゃんもかわいいねんけどな。それでも敢えて僕は君の名前で呼びたいんや。まぁ、関西のおばはんたちが持ってる飴ちゃんって感じもせへんでもないんけどな・・。それは、考えんのやめとこ・・あめちゃんのかわいらしさが負けそうやし、おばはんパワー強!!
オズオズと受け取るあめちゃんに、


「なぁ、開けてみぃ。気に入るかわからへんけど。僕が付けてあげたい。」


しょうがないなぁって顔しながら、芝生に座りこんで爪でテープをはがすあめちゃんの横に座って包みを開くのを待つ、外した包装紙を綺麗にたたんで、そして、蓋を開けた。


「かわいい。鼈甲にも、こんなかわいいのあったとね~。」


「もしかして、おばはんくさいんと違うかって心配してた?」


「ふふ、はい。ちょっとだけ、だって知らんもんかわいかとがあるって。ありがとうございます。こんないい物いいとやろうか?」


「ええんや、バイト代も入ってん。一日付きおうてくれてたんや、それに今は、僕の彼女になったんや。これは、変な男が寄ってこんように首輪の代わりや。」


そう言いながら、彼女の首にクルスのペンダントをかけた。シンプルであめちゃんの雰囲気によく似合っている。もちろんそれも考えて選んでいるんやけどな。あかん、ペンダントつけるのにあめちゃんの顔が目の前にあるやん。もう我慢できひん、そのまま押し倒すようにしてもう一度あめちゃんの唇を奪った。今度は少し深く口づけてみる。その口づけにあめちゃんも応えてくれる。暫くあめちゃんとの口づけを止めることができひんかった。


「意外と積極的で、色っぽいの返してくれんのやなぁ。」


言わんならええんやけどな、つい言うてしまうんが僕の悪い癖、


「あっ・・もう・・。」


赤くなるあめちゃんのその唇をもう一度奪う、これしかせえへんから許してや、ずっとこうしたかったんや。もっと深くもっともっと・・。時折、あめちゃんの口から声が漏れんのが僕を刺激する、身体の反応はいっぱしの女や。めっちゃ色っぽい。ここが部屋だったら間違いなく僕は彼女を脱がしてたな。


「これ以上やったら、僕は犯罪者になりそうや。ここであめちゃんのこと脱がしそうやねん。あめちゃん、色っぽい声出してんやもん、男刺激するやろ。」


「そ・それは・・三光さんが・・エッ・・・チやけん」


「今聞き捨てならんこと言うたやろ。」


「ほんとやもん。」


「その通りや。僕がスケベなんや。」


二人して吹き出してん、空を見上げたらな、表通りの煙が空一面に広がってて星も綺麗に見えへんのやけどな、かすかに光る明るい星を見つけたらな、なんや、みんなこんな感じの世界を歩いているんやないかって、哲学みたいなこと頭に浮かんできてん。いろんなもんに遮られても、その先に自分の掴む星があると信じて進むしかないんかも知んないな。それで、おみつさんのように、ものの見事に玉砕してもな、何もせえへんで京都でもんもんしてたよりはずっと、堅実だったなやな。そのおかげで、人の優しさに救われたんやし、飴屋さんの温かい人柄に惹かれたお蔭で、僕があめちゃんに巡り合うきっかけを作ってくれたんやもんな。


「明日、おみつさんにあめちゃんとお付き合いするようになりましたって、報告してくるな。御開帳なんやろ幽霊像の。」


そう言うと、はっとした顔と少し寂しそうな顔をして


「うちも行きたかたとけど、明日からは仕事やけんが・・・。三光さん、明日、旅館に会いに行きます。帰る時間が遅かけんが、ちょっとだけ会いに行きますけん。明後日は帰るとでしょう。帰る準備もあるやろうし。だから少しでいいです。会って下さい。」


「そんなんええに決まってるやろ。なんなら僕の部屋でいいことでもする?ってさすがに無理か・・。あめちゃんの叔母さんのとこやったな・・。あっ・・・・。」


しまった、まだ、そこまでは行ってへんなあめちゃんの気持ちが、あ~あ固まったやん・・。僕のアホ。スケベ心も大概にせんと、あめちゃんに嫌われるって。


「ごめんな、ちょっと図に乗りすぎた。」


「今は、まだ、無理です。でも、三光さんなら・・。」


「今は無理ってそれって、いつかわからへんけどって、ちょっと待て、その前にもしかして・・初めて?」


思わず聞いてしまった、こんなこと聞いたらあかんのかもしれへんけど、でもな、それやったらイケイケでやれへんやん。ほんまに気持ちが追いつくのを待つしかないんとちゃう?嬉しいけどな、あっ・・僕ならって言ってたやん。そんなこと頭の中でほんの一瞬のうちに考えていたらし、あめちゃんが真っ赤な顔で頷くのを考え終わってからみた。僕はどこまでスケベなんやろな。


「そうか・・。ほな、ゆっくりな。あめちゃんの気持ちが大丈夫になった時に、全部もらうな。」


そう言いながら、あめちゃんの唇から首筋にかけてゆっくりキスを落としていった。


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