僕の視線を感じたのか、それともかんろちゃんの祈りの時間が終わったのかわからへんけど、かんろちゃんの眼が開いて僕の方に顔を向けた。お互いお見合い状態になって、珍しく僕の方が照れてん、なんや顔がかあっと熱うなってん。
「あっ、なんか変なこと考えとったでしょう?顔が赤いですよ。」
かんろちゃんに指摘されて自分の顔が赤く変わっていたことに気が付いてなんや恥かしゅうてな、
「ちょっとな、エロいこと考えてん。」
と口が滑ったら、冷たい目線が返ってきてん、ああ、ホンマのこと言うべきやった~!!口に出したことは消せへんしな、まぁ僕も健全な男やしな、と心の中で言い訳中の僕らの横を、お墓参りにきはったおばあさんが、
「あら~お似合いのカップルね。飴屋さんの幽霊の開帳は明日ばってんね~、そいとも、なんかね、元気か赤ちゃんのでくっごと頼みよっとかねぇ。」
そう言いながら、通りすぎていった。さすがに元気な赤ちゃんは、まだ早いで・・・。思わず二人で見合わせてしまい、かんろちゃんの顔がいつものように赤くなっていた。あれ?何か考えた?それやったら僕はめっちゃ嬉しいねんけどな。慌ててその場所から離れるかんろちゃんの後からついて行くと、歩きながらかんろちゃんが聞いてきた。
「三光さん、井戸の跡を見てから、水族館に行きましょう。どうしようなかぁ・・旧道を使って行くか、それとも、新道でさっさと行くか・・・。」
「なんか違うん?」
「はい、新道だとすぐに行けるとですけど、旧道の日見トンネルを通って行くのもいいかなと。日見トンネルの上には長崎街道の関所があった場所なんです。だけどなぁ・・。」
「長崎街道の関所跡には寄れるん?」
「いや、そいは無理かな。どうしましょうか。まぁ強いていえば、長崎の坂とカーブを堪能出来るコースが日見越えで、その途中から味わえるのが新道ってとこかな?」
かんろちゃんの顔ちょっと不敵な笑いに変わってんねん、そんな顔されたら、受けて立たんは男の恥やで。
「ほな、旧道でいこか。」
ニコッと笑って了解とわかる表情で返すかんろちゃんに、ドキッっと心臓の音が鳴る、まるで少女漫画の世界やっちゅうねん、僕が少し自分の世界に入っているとかんろちゃんの動きが止まって、
「ここに井戸があったらしいです。ほら、ここんところにちいさかけどお水と御塩があげてあるけんが。(供えてあるから)」
そう言って道路脇にひっそりというか、小さな印が置いてあった。ここにおみつさんがせいさんからプレゼントされて大切にしていた鼈甲の櫛を目印にして置いて行ったんやな、感慨無量や。かんろちゃんが、僕の手をそっと握り繋いだ。指を絡めるてくることはないけど、その手は僕を現実に引き戻してくれた。
駐車場に戻る途中の眼鏡橋の側で、屋台のアイスを2つ買ってみた、売り子のおばあちゃんがな、コーンに乗せるアイスをバラの形にしてくれてん、職人技やん!!ってちょっと思ってん。お味はミルクセーキを少し甘さを控えた感じやねん。ジェラートよりもシャーベットっぽい感じの昔ながらのアイスやってん。暑い中歩くとちょっとこういうの嬉しいねんな。
さてさて、車に戻ってペンギン水族館にいざ出発や、日見トンネルまで行く道はわりと最初は広かったんやけどな、途中から対面道路に変わり狭くなってん、そしてずっと登り道や~でもな思い出してん、この上を歩いていたんを、あの時とは違う形で今回もここの場所を通っている、今回も僕が探しに来てんけどなでもな、今は探した人と一緒にこの場所を越えられるその嬉しさが心を温めるんや。まだ返事もらってへんけどな・・・。
トンネルを越えると、あかんやろ、急な坂道+急なカーブこれ国道やで!!ジェットコースター並みってのは大げさやけどなほんまきっついで、そう思うんはな、かんろちゃん躊躇なく突っ込むんや~。正直めっちゃ怖い。僕、自分が運転したいねん。コワーって思いつつ前を見ていると海が広がってくる、海と山が直につながってる町なんやと改めて思える場所やな。そうこうしてるうちに海のぞばまで下りて来てん、国道から右にそれて海そばまで来たところにペンギン水族館の駐車場はあった。