今日は、初めて見るワンピース姿、キャミソールのような男を刺激するようなワンピースってなわけやなくて、朝ドラの昭和初期に出てきそうな感じの袖のないタイプのワンピースで、色は、オフホワイト。フロントにボタンがあって、て何を解説してんねん。清楚な感じがする今日のファッション。僕の格好釣り合うんかな?まぁ、ええか。僕がじろじろ見てたさかいな、かんろちゃんが


「なんかおかしい恰好してますか?うちあんまりオシャレじゃなかけん。」


ちょっと困り顔で聞いてきた、


「ええよ。かんろちゃんによく似合ってるなぁって思ってん。僕の方こそ釣り合ってへんとちゃうか?」


「三光さんは、何着ても似合ってます。今日もかっこいいです・・・。」


最後の褒め言葉、消えそうなくらい小さい声にならんといてや、すでに顔真っ赤やし・・。ええよ、その顔だけで僕は満足や。


「その、ペンギン水族館にはどうやって行くん?場所がようわからへんのやけど。地図調べたんけどなこっからだと電車とかじゃいけへんよな。」


「大丈夫です、うちが車出しますけん。」


「かんろちゃん運転なん?じゃ、僕は助手席に座ってええんよね。」


「えっ・・。そうして下さい。でも、うちの運転荒かですけん気を付けてくださいね。じゃ、行きましょう。叔母さんに捕まる前にここからでましょう。」


かんろちゃんに促されて外にでると、旅館の前に日産マーチが止めてあった。かんろちゃんが運転席に座って、僕が横に座ると、スポーツタイプのサングラスをかけて、エンジンを入れスタートした。


「スポーツタイプなんてつけるんや、なんや雰囲気ちがうなぁ。」


「これですか?母のなんです。母は、目が少し悪くて、光に弱いんでこんな感じの横から入りにくいタイプのサングラスをいくつか持っててそのうちの一つを車用に置いてあるんです。今日は私がそれを借りているんです。あっ、市内は駐車場が少なかけん、少し場所が離れたところに一度止めますね。光源寺まで歩いて戻らんばですけど。」


こなれた感じの運転で、確かに少し離れた場所の駐車場に車を駐車して、石橋が連なる中島川沿いを二人で歩いた。途中、川べりを歩けるところがあったからな、わざわざ降りて、歩きだしたときに近くを通った家族から、


「お母さん、ここの中にあるハートの石を3っつ見つけたらどんなことがあるんだっけ?」


と小学生の男の子が母親に聞いている声が聞こえた。その言葉を聞いて、かんろちゃんの顔がまずいことを聞かれたっと言う顔に変わってん、これはなにかある。よっく耳澄ましてお母さんの声を聴いていいたらな、


「ああ、3つみつけたら、想いが叶うっていうやつでしょ。でもねぇ~人口のハート型の石も入れてじゃない。そんなのご利益なんてないよ。それよりも落ちないようにね。嫌よ、朝からずぶ濡れは。」


それはいいことを聞いた、かんろちゃんの顔を覗き込むと、それはいいから、はようこの場所から離れたいって顔してん、そんな顔されたら、探さないわけいかんねん。


「かんろちゃん、探そう。」


「うちは知っとるけん意味なかです。」


「僕は知らんねんなぁ。せっかくやしな、愛しの人が一緒にいるしな、僕としては探したいねん。」


「ダメです。ここで時間ばくったら、困るとです。今日は精霊流しやけんが、市内は夕方から車の規制が入るとです。それまでに戻ってこんばいかんですけん。早く行きましょう。」


少しごね気味の僕の手を掴んで、どんどん前を歩いて行くかんろちゃん、愛しいくてたまらへん。掴まれた手を繋ぎなおして、かんろちゃんの横に並んで同じ速さで歩いた。そんな些細なことがめっちゃ幸せで、今まで自分がしてきた恋愛が嘘のような気さえしてくる。繋ぎなおした手を嫌がることなく、自然に指をからめてくれたかんろちゃん、二人の間の距離がまた少し短くなった気がする。そうこうしていると、光源寺にたどり着いた。門をくぐって本殿の前を横切り、寺横の道を奥へ進めば、赤子塚への道しるべがある、そこをたどって塚の前に二人で一緒に立った。もう、前みたいに息が苦しくなることもない、でもな、やっぱり辛い気持ちにはなるんや。不安で不安でたまらなかったあの記憶は、魂に刻まれていて、どうしようもなく切なくて、苦しくなる。ついぎゅっとかんろちゃんと繋いでる方の手に力が入ってしまった。何かに摑まりたかった想いと気持ちがそうさせてしまうんや。そんな僕の気持ちがわかったのか、かんろちゃんがそっと両手で僕の手を包んでくれた。


「お線香持ってきたから、お参りしましょう。今日は送り日ですけん。」


そう言って、バッグの中から、線香とライターを出して塚に添える為に火をつけて半分を僕に渡してくれた。僕は、おみつさんに話したんや、きっかけ与えてくれてありがとうって、ここから先のことはかんろちゃんと僕が出す答えを尊重してやってな。ふと横をみると、かんろちゃんも手を合わせて目を閉じて祈っていた。


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