少し距離を縮めて歩けるようになって話もしやすうなったんは、ほんまによかったんやけどな、、長崎の女の子は坂をよう歩いてるせいやからやろうか、めちゃくちゃ歩くの速いねん、いや、多分かんろちゃんの歩くスピードが速いねんな。坂登るときでも、息が切れてへんのは感心する。僕の方がヘロヘロになってん。
「ごめんなさい。歩くの速かったですか?」
「うん、速い。僕ようついて行けへん。もうちょっとゆっくり歩いてや年寄りはいたわるもんやで。」
「ふふふ、年寄りってイケメン台無し。」
「だからそのイケメンってやめてぇな。ここら辺がこそばゆいねん。」
かんろちゃん笑ろうたらえくぼ出るんや。彼女を観察しつつも、観光もしっかり彼女の説明が補足をしてくれる。孔子廟は、孔子を祀っているところで、長崎の孔子廟は明治に建てられて、一番絢爛豪華とか、でも、あんまりこれには興味が持てへんで、それよりも、やっぱり坂、オランダ坂。ただの坂やんって言いたくなるんやけどな、周りが幕末期からのこる洋館がまだ建ってて、そこの近くに学校がまた、西洋風で、活水女子大は赤い屋根、最近共学になった海星高校・中学は水色の屋根で並んでて、グラバー園から眺めた建物が近くでみれば、またいい感じや。ほんまに、異国情緒っていうのはこういう建物から感じるもんなんやな。
そこから、また、10分以上は歩いたかなぁ、やっとお昼ご飯が食べれる中華街に着いた。もう、お腹半端なくペッコペコや。
長崎の中華街はあまり大きくはないが、ずっと続いている感じがそこかしこからしてくる、建物もかなり年季が入ってる感じがしないでもない。その中の一軒に入り、定番と言える、ちゃんぽんと、皿うどんを頼んだ。そして、彼女から勧められた東坡肉(トンポウロウ)中国の豚の角煮をちゅかまんでくるんで食べる食べ物を頼んだ。これがまた美味い。肉は柔らかく、周りの皮は中華まんの外側の厚いやつをナンのように長くしてわざわざ曲げたような形でそれを開いてそこに角煮と青菜を挟んで食べるんやけどな、これは食べた人しかわからへん美味さや、そして定番のちゃんぽんも、皿うどんなる物もめっちゃ美味い。本場の味は違う。皿うどんの麺は細くてパリッパリに揚げてあって上にとろーりとしたそれも野菜、豚肉、海鮮がどっさり入ったあんがかかってああ~長崎行ったら食べてや。もう説明できひん。とにかくお腹も満足して、しばし休憩タイムってとこやな。
新地の湊公園では、2月の旧正月にランタンフェスティバルがあるらしく、たくさんの中国の提灯が並ぶそうや。それは色鮮やかできれいなんやそうで、かんろちゃんの顔がうっとりとして話してくれた。一度それも見てみたいなぁ、かんろちゃんと一緒になんて言ったらまたゆでダコになるんやろうなぁ。
「べっこう?!」
突然数人の女の子たちが声をかけてきよった。僕の顔をじろじろと見ながらかんろちゃんに向かって歩いてくる。
「ああ、やっぱりべっこうやった。久しぶり!!元気?デート中やった?」
「そがんじゃなかぁ。」
「めずらしかなぁと思うたっさ、べっこうが男の人と一緒におるなんてさ、なに、あの人彼氏じゃなかとね?」
「かっこよかね~。うちのタイプ!!」
かんろちゃんを囲んでひとしきり、僕の話で盛り上がってるようで、かんろちゃんといえば、困った顔で申し訳なさそうに僕をチラチラとみている、気にせえへんでもええって、
「ねぇ、べっこう紹介してよ。一人占めはずるかよ。」
「あんね、三光さんは、うちの叔母の旅館に宿泊してる人なんよ。叔母から長崎を案内してって頼まれたとさ、彼氏って失礼ばい。」
いえいえ、全然、彼氏でも構いはせえへんで、かんろちゃんの彼氏役だったら、喜んで引き受けまっせ。
「へぇ三光さんって言うんだ。どこの人」
「京都ですわ。すんまへんなぁ、出来たら彼女、僕に返してくれませんか?まだ、回りたいとこあるさかい。」
困ってるかんろちゃんを見てたら、助け舟出したくなってん。僕が口をはさんだことに少し驚いた顔をした彼女らは、
「いや~ごめんなさい。それじゃべっこうまたね。ゲットしなきゃ損だよ。」
キャッキャッと笑いながらかんろちゃんから離れて行った彼女らを目で送りながら、
「ちょっと、意地悪なお友達でんな。からこうて遊んではる。」
うつむいてしまったかんろちゃんの頭にそっと手を乗せて、よしよしと撫でながら
「こっから近い名所はどこになるん?連れてってや。」
と催促してみた。