舞台金閣寺を観劇した後に浮かんだ鶴川と柏木の会話を書いています。内容が少々BLが入っていますので、


嫌いな方、ファンで許せないと思われる方はスルーしてください。


これは、あくまでもOlailaが勝手に妄想して、書いているものですので、その辺をわかっていただける方のみ読んで欲しいです。差別用語が含まれていますが、原作の感じを大事にしたかったので、あえて使用しています。




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別館 金閣寺




僕は、柏木に、溝口をいかがわしい付き合いに誘うことを止めるように、話をしようと彼に近づき声をかけた。



「やぁ、柏木、君に話があるのだが。」



柏木は、面倒臭さそうに僕のほうをチラッと見たが、手に持っていた本に、また目を戻した。



「君が僕に話しかけるのは、君の何がそうさせるのか僕にはわかってるんだ、溝口のことだろ、君は、溝口のこと気になっているくせにわざと離れてみている。」



柏木は、僕が話そうとしていたことを、全て解っているような口ぶりで僕に目を向けずに話してきた。



「気になっている?当然じゃないか、彼は、僕と一緒の門弟なんだ、彼は心のとても綺麗な人だ、君のような不埒な輩と付き合えるような人間じゃないんだ。わざと離れているのは、大学でも一緒にいつもいるのはお互いの人間性を高めあうには、たくさんの人と交流することが望ましいと思うからなんだ。」




「なんだ、そんなことか。俺はもっと違うことを言いに来たのかと思っていたのだが、そんなことか、子どもじゃあるまいし、君に溝口が誰と仲良くなろうが、口出しする理由はないだろ。俺が誘ったわけじゃない、溝口が俺に話し掛けて来たんだ、まぁ、あいつからしたら、この内反足が奴のドモリと同じに見えたのだろう。あいつが、勝手に俺と仲良くしようとしてるんだ、俺はそれに付き合ってるだけだ。ふっ、溝口の心が綺麗だって笑わせるじゃないか、あいつが聞いたら何て言うだろうな。くくくく。」




興味なさそうに本から眼を離さず話をする柏木に、少し腹が立った。




「君が誘わない限り、彼は道を外すようなことは決してしない、僕の忠告だって今までなら、聞いてくれていた、なのに、君と付き合いだしてからは、僕の話に耳を貸さなくなった。」




「それは、俺のせいだと言いたいのか。」




凄むような眼つきで、柏木が僕の顔を見据えた。その眼は、僕が隠している胸の内まで見透かすような鋭い眼光となり、その光に打ち抜かれ、僕はその場から動けなくなっていた。僕の胸の内に渦巻く闇を見つけ出し、表面に引きずり出そうとされているように感じ、なんとか柏木に背を向けてその場から立ち去ろうとした。




「逃げるのか。そうやって、正義ばかり振りかざし、本質をみようともせず、見せ掛けの外見ばかりに気をとられ自分の本質すら偽ろうというのか?鶴川、君は、溝口の事をそのくらいしか想ってないのか?俺は気付いてたさ、君が僕と溝口が一緒にいると、切なげな顔をよこしていることをさ。溝口は、あいつはちっとも気がついていないな、溝口にとって一番なのは金閣寺だ。あいつはあれに惚れている。あんなもんに惚れたところで、性欲の一つも満足はせんだろうに。おかげで、女一人抱けはせんのだ。」




挑発するような柏木の口車に乗ってしまった僕は、




「簡単に女に手を出せないところが、彼の純粋なところなのだ、君とは違う。君のその破廉恥な行動とともにしている彼の苦しそうな顔を、僕は見ていられない。彼は僕と一緒にいた時は、とても爽やかで、優しい顔をしていた。いつでも、金閣寺に思いを馳せている彼に僕は惹きつけられていた。彼のあの顔が最近ではあまり見られなくなった。その大元を作ったのは僕なのかも知れない。だから、僕は彼のために君に言いに来たんだ。彼を返してくれ、僕の好きな爽やかな笑顔とやさしい顔の彼を僕に返してくれ。」




思わず口にしてしまった。口にした後の柏木の顔が、したり顔となっていた。彼は、僕の口からはっきりと言わせたかっただけだったのかも知れない、口に出してしまった後は、どう弁解の余地もなく、ただ、唇を噛み締め、地面を見ているしかない僕に向って




「なぁに、たいした事じゃない。俺たちは坊主だ、そんな世界、今までだったあった世界なんだよ。知ってるだろ君だって、君が溝口を好いている事を俺は決して溝口には言うまい。あいつにはその気はないようだ、もっぱらの興味は、みなあの金閣寺だ。君も、心のカタワか。いいじゃないか。好きになっちまったもんは仕方ないだろ。よりによって溝口とは、あいつのどこがいいんだ?ドモリか?ドモリは溝口が溝口たる所以だ。で、鶴川、君はどうしたいんだ?奴を抱きたいのか?」




はっきりと聞かれても、僕の答えはそこまでいたってなかった。ただ、溝口が好きということ意外、僕の心の中には先まで考えていなかった。柏木に抱きたいのか、と聞かれそうなのかも知れないと彼を抱く自分を想像してみる。僕の腕の中であの優しい顔が僕に向けられて、僕を受け入れている、それは、金閣の傍に咲く睡蓮の中にいるかのような夢見心地な感情が湧き出だしてくる。




「僕は、溝口とそうしたいのか・・・?」




「正直になればいいさ、俺はいつでも鶴川の相談に乗るとしよう。溝口が俺と一緒いることは、奴が進んでしていることだ、君にとやかく言われようが、溝口は俺との付き合いをやめることはない。奴が、俺の何に魅かれくっついているのかは、俺にはよくわからん。ただ、鶴川、君より、より人間くさいのだろう。」




そういい残して、柏木は僕の前から立ち上がり、独特の歩き方で校舎の方へ歩いていった。その後ろ姿を眼で追いながら、自分の胸の内にある、溝口への想いが僕の心を暗黒の闇に引きずり込んで行くような気がした。


この後、僕は表向きは、柏木とは何も関係がないように振舞っていたが、手紙のやり取りで、彼に僕の胸の内を吐露していた。


そんな矢先、実家から、母が体調を崩し会いたがっているという電報が寺へ届き、僕は、溝口にも何も話せず、寺から実家の東京へ戻ってきた。母の病は、そう重くはなく、暫らく安静にしていれば病状が落ち着くこともわかり、安堵したが、父から、見合いをするように言われた。まさか、そこまで用意されているなど微塵にも思っていなかった僕は、溝口への想いを断ち切れる事など永遠にないような気がして、永遠に、僕を愛してくれる人が、否、僕が愛せる人は、溝口ただ一人。もう、寺へは戻れない。僕は溝口を、もう同じ門下の徒弟とは思えそうにない。


僕が寺に戻る事は、すなわち、暗黒の闇が濃くなるだけで、救いの光など見えてはきそうに思えなくなった。




「さよなら溝口、僕は最後に本当は、君の顔と、声が聞きたかった。」






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如何だったでしょうか。三島さんの文体になるべく近づくように努力してみましたが。


なにぶん、学がないのでこれが精一杯でした。




大東君と高岡君が演じた二人からのインスピレーションです。


ファンの方々、大目にみてね。