母: りっちゃ~ん、リっちゃ~ん!

りーべ: 母ちゃん、ここだよ。

母: びっくりした(;'∀')

りーべ: 母ちゃんの後ろに居るよ。

母: ああ、良かった。

リーベ!何処にも行かないよ。

母: 前にね。

りーべ: うん。

母: りっちゃんがいなくなったでしょ。

りーべ: そうだっけ?

母: そうだよ。

りーべ: あ!思い出した。

母: あの時は血の気が引いたよ。

りーべ: ごめんね、迷子になったんだよ。

母: ちゃんと帰ってきたから良かったけど。

りーべ: 母ちゃんの声を頼りに

母: 帰ってきてくれたんだね。

 

 

何年か前、リーベを庭に放しながら前庭の手入れをしていました。

リーベも傍でボールで遊んだり、お花の匂いをかいだり、

お得意の私の手元を覗き込んだりしながら、付かず離れずで遊んでいました。

ふと、手を休めてリーベを目で追いましたが近くにいません。

「りーべ~、りっちゃ~ん」

「りーべ~、りっちゃ~ん」

何度呼んでも、現れません。

リーベは呼び戻しの効く子だったので、焦りました。

前の道や大きな道路、畑に行く道など「りーべ~、りっちゃ~ん」と

大声を張り上げて呼びましたが戻ってきません。

血の気が引く思いでした。

取り敢えず、もう一度家に戻ってみると

なんと!お隣の奥さんに抱かれているではありませんか!

嬉しさと安堵の気持ちでお隣の奥さんにお礼を言って、

震えるリーベを強く抱きしめました。

 

事情を聞いてみると、リーベはお隣の庭にいたそうです。

我が家とお隣には裏庭の一部をT字型にフェンスで仕切ってあります。

フェンスと地面の間が少し広くなっている場所があり、

遊んでいるうちにフェンスをくぐってお隣に迷い込んだようです。

すぐにフェンスを塞いでもらいました。

 

 

前庭のリーベの庭のお手入れをしながら、そんなことを思い出していました。

 

夕方居間のガラスにオレンジ色の光が差し込んだので外に出て見ましたら、

夕焼けがきれいでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

短編小説

 

 

化 野

 著者・わびすけ

 

第5章 告白

第二話 

 

 

 「実は最後にお別れした時、

ちょうど公演があった日ですね。

あの日から一週間ほど前、お見合いの話があったんです。

迷っていたんですが、公演が終わった日あなたに相談しようと思っていたんです。

でも....仲間の方もご一緒でしたし、それに....三千代さんでのこと。

とうとうあなたにお話しする事が出来ませんでした。」
 一瞬の間があき、それでも綾は喋り続けた。
 「それから、私は自分に賭けました。

十日待ってみよう。

これから十日の間にあなたから電話が来なければ、

親のすすめるお見合いをしようと。

一日、二日、そして七日、八日、私は祈るような気持ちであなたからの電話を待っていました。
 でも、結局はお見合いをするようになってしまいました。

一流大学を出て、一流商社に就職し、両親から言わせれば何一つ申し分のない人でした。

その一流という言葉を除けば、私にとっても立派な人でした。でも...」
 伏し目がちな目をあげて、創太を躊躇いがちに見ながら
 「でも私はあなたを忘れる事が出来ませんでした。」


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