母: やっぱり、悲しいなぁ

リーベ: 母ちゃん、どうしたの?

母: ちょうど一年前を振り返ったらね。

リーベ: うん。

母: りっちゃんが、まだ元気でクルクルしてたんだと思ったら。

リーベ: うん。

母: 会いたくて、抱きしめたくて、又悲しくなっちゃった。

リーベ: 駄目だね、母ちゃん

母: だって

リーベ: いつもリーベは母ちゃんの傍にいるでしょ。

母: でも、少しだけ泣かせてね。

リーベ: 少しだけだよ。

 


今日は眼科検診に行ってきました。

私は眼圧が高く緑内障予備軍です。

10年間以上続く二カ月に一度の定期健診,毎夜の点眼のお陰で症状は進むことなく維持しています。

 

病院の帰り道、去年の今日書いたブログを見ていると、まだリーベは元気に徘徊していました。

そんなリーベの様子を見てリーベに逢いたくてちょっと悲しくなりました。

 

 

短編小説

化 野

 著者・わびすけ

 

第1章 出逢い

第五話

 

茶房”わびすけ”はD大学の正門前にある、一見じじむさい感じの感じのする店だった。

一階では民芸調の小物を売っていた。

それを横目に眺めながら、細い木造の階段をのぼっていく。

階段は、ギシギシ音をたて創太が大学時代毎日のようにのぼった時と音まで一緒だった。

この茶房は大して個性があるといった風ではなく、埃のかぶった花瓶が花もささず無造作に置かれている。

誰が手折ってきたのか、今日は白い小菊がつつましやかにさしてあった。薄暗い照明の中を、木造の床をきしませながら窓際のテーブルに近づいていった。
 野木綾、渡辺、山田、、津田、木村の顔もみえる。

左側のテーブルについている一回生らしい二人の他は、みな覚えのある顔だった。

創太はこれならやれそうだな、と内心胸をなでおろした。


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