母: 今日は風があるね。りっちゃん!

りーべ: 台風の影響かな?

母: 今夜九州に最接近だからね。

りーべ: 台風の影響だね、きっと!

母: 被害が少ないといいね。

りーべ: そうだね、母ちゃん。

母: 日曜日には台風10号が西日本に接近するよ。

りーべ: 台風10号は最大級の勢力だと言っていたよ。

母: そうだね。心配だね、怖いね。

りーべ: 避難用具、用意してる?

母: 用意してるよ。

りーべ: コロナ予防用に追加するものあるよ。

母: うん、マスクとアルコールでしょ。

りーべ: ちゃんと入れた?

母: 入れたよ。

りーべ: さすが、母ちゃん!

 

 

今を生きる

未知のウイルス新型コロナ感染症の流行、

最近ではコロナウイルスについていろんなことが分かってきましたが、

それでも私たちには恐ろしいウイルスです。

そして今年は稀にみる猛暑でマスク生活における熱中症の危険が沢山あります。

それに加えて、台風シーズン、なかなか生き難い世の中です。

それでも、私たちは懸命に生きなければなりません。

守るべき大切なものを亡くして、生きる意味を見失いかけているこの私もです。

 

人はみな生きている環境は違います。

そしてその人たちの生きている環境も刻々と変化していくのです。

私は今、上品な白髪の一人の女性を思い出しています。

彼女とは私が介護の仕事をしていた時に出逢った一人です。

彼女の家はとても裕福で表玄関は大通り、裏玄関は裏通りに面する大邸宅にお住まいでした。

介護に伺って、お話しする中で、彼女はとても旅行好きで海外の殆どの地を巡っていました。

そんな彼女が老いて介護が必要になり何処にも行けなくなった現実を、どう捉えているのか不躾にも尋ねてみました。

彼女は柔和な笑顔で、

「それはね、私の場合徐々に色んなことが出来なくなった訳でしょ。

一度に失われた訳ではないから、一つ一つその時出来ないことを諦めて行ったのね。

だから出来なくなったことを悲しむのではなく、今まで経験できたことに感謝して生きているのよ」と。

そして、介護で伺っている私に対しても、

「私が何もできなくなったから、おくんちゃんと出会たんだし今を感謝して生きているのよ」と。

 

今年はコロナ禍にあって人々の生きる生き方もずいぶん変化してきました。

生活することに沢山の規制があり、不自由も課されています。

でも、私たちは今を生きなければなりません。

今、この現実を生きなければなりません。

 

どうか皆様にとって、より良き今でありますように。

 

 

 

 

 

 

短編小説

化 野

 著者・わびすけ

 

第1章 出逢い

第三話

 

「ああ、野木綾、分かったよ。それはいいね。

相手役のヘルメルはそれでは津田君かな?」創太は訊ねた。
「実はそのことでお電話したんです。ヘルメルを筒井さんにやってもらえないかと思って....」
「何だって! 僕がヘルメルを!それはまた、どうしてなんだ。僕はもうそこを出て四年もなるんだよ」
「そこなんです。二十周年だということで、OBにも特別参加してもらおうということになったんです。それには多少の時間と、演劇に対する情熱を持ちつづけている人でなければ.....そこで、その人は筒井さんしかいない、ということに話が決まったんです。」

渡辺はしだいに雄弁になった。
「多少の時間と、演劇に対する情熱か!それはいいね。」創太は、渡辺の言葉をくり返しながら、多少ひにくをこめて言った。
 「それでは引き受けて下さるんですか」
 創太は、渡辺の人の良さを感じて苦笑した。


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