また夏が終わる。秋がくる。
彼と出会ったのは、数年前の夏だった。
やけに東京に似合っていて、人見知りのくせに人間に慣れていた。顔はよく覚えていない。初対面なのに、人の心にすっと入ってくるような、そんな不思議な雰囲気に惹かれた。
私たちは、夏に出会って、夏にキスをした。そうなることに、時間はかからなかった。
私は惹かれて、彼は私が惹かれていることをしっていた。だから、そうなることに、たいして時間はかからなかったのだ。
夏が終わっても、私は彼のことばかり考えていた。秋風が吹く頃には、それがどんどん切なさに変わった。でもなにもしなかった。なにもなかった。夏以上の衝撃はなにもなかった。
そして今年も、また夏が終わる。当たり前の季節のサイクルに、私は少しだけ反発したい気分だ。
また秋がくる。なにもないなら、ここで終わりにしようと、何年も何年も考えている。秋は、私にとって節目。忙しく夏を終えて、衣替えとともに、彼を忘れようと、そんなことを考えて、きっと今年もそのうち冬になる。
どうしようもなく秋がくる。なにもない秋の、なにも変われない自分が憎くて愛おしい。
それでも夏が終わるのだ。私は彼と、3年目の秋を迎える準備を心のどこかでしていた。