あけぼの。
夜。
夕暮れ。
つとめて。

冬が忍び足で去って行こうとしている今の季節、枕草子の冒頭部を思い出します。
冬は〝つとめて〟
つとめては便宜的に、早朝、と訳されますがただしくは〝翌朝〟だそうです。
ぼくはこの冬の文が好きなのですが、それは春、夏、秋にはない、人の気配があるためです。
ざっと書くとこんな文
「冬は寒い翌朝、雪が降った日はもちろん、霜がおりるような寒い時に火をおこし、炭をもって運んでくる時間はなんとも魅力的だ。昼になって寒さが和らいでしまえば、火桶に入った炭火も白い灰ばかりになって美しくない」
寒いとあまり外に出られないため、室内で一緒に過ごすような身近な人との時間が濃くなる、だから寒さが和らいで寂しい気持ちもわかります。
でも燃え尽きた灰をみて、残念だなぁと思いながら過ぎた時間を思い返すのもなんだか羨ましいですね。今は暖房だから、そんな機会もないですもの。

〜冬はつとめて。雪の降りたるはいふべきにもあらず、霜のいと白きも、またさらでもいと寒きに、火などいそぎおこして、炭持てわたるも、いとつきづきし。昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶の火も、白き灰がちになりてわろし〜