関西には「めしや 宮本むなし」というチェーン店がある。関東で言うと、白米が食べ放題の「やよい軒」に近く、やよい軒よりもコテっとしたものが多い。
ぼくは宮本むなしに入ると大抵、ハンバーグカツ定食を頼む。
ハンバーグをカツにした、ダイエット食にはならなそうな食べ物なのだけれど、これを頼むときに聞かれるのが

デミグラスソースにしますか
とんかつソースにしますか

である。
これはなかなか悩ましい問いで、我々はその悩ましい問いを、店員の方が横に立っている状態で決断しなければならない。

まず考えねばならないのは、自分はハンバーグカツを、ハンバーグを主体として考えているか、カツを主体として考えているか、だ。
言わずもがな、ハンバーグならデミグラスソースだし、カツならとんかつソースであるが、判断基準はそれだけではない。
希少価値だ。
とんかつソースはすでにテーブルに置いてあるけれど、デミグラスソースは置いていない。名前の響きも、ゴージャスな感がデミグラスには漂っている。

またそれ以外の選択肢もある。何もかけない、テーブルにある醤油をかける、などだ。
そしてどうしても決められない方にお勧めするのは、8切れのうち、3切れだけにデミグラスソースをかけてもらう方法で、これによってデミグラスソース、とんかつソース、醤油、プレーン、全てを味わうことができる。

しかしそれをした時にもしかしたら、一つに決められず全てを味わいたい私はなんと欲深いのだろう、とお悩みになる方がおられるかもしれない。
人間の発展には欲深さは欠かせないものです。
一つを選ぶ欲の潔さ、一つを選ばぬ欲の深さ、どちらも必要なのです。
わたしはしかし、一つを選び、デミグラスソースをかけることに致します。次回は醤油だとしても。

光はいつも かわらぬものを
ことさら秋の 月の影は
などか人に 物を思はする
あぁ鳴く虫も 同じ心か
声の悲しき 
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