「人生が、ラブストーリーでありますように。」を読む杉井。

私は、「その人」との約束を破った。
生まれて初めて愛した異性。
生まれて初めてバレンタインデーに、チョコレートを送った相手。
完璧な人生の先輩。
愛妻の存在は知っていたけど、私は本気だった。
なのに、だんだん欠点が見え始めた。
大切な時に、仕事。束縛。
年下の私をいつまでも子供あつかいすることにも我慢できなくなった。
会話が途切れた。
長い年月...。
そして大学を出た私には、他に好きな人が。
どこか「その人に」に似ていた。

結婚を決意。
「その人」は黙っているだけだった。
式は、２月１４日。
新しい恋人に私が告白した日。
その朝「その人」と２人きりで会い、お別れのチョコレートを贈った。
「約束を破ってごめんね」という言葉に、「その人」と私は数年ぶりの笑顔をかわした。
バージンロードへ向かう私は、守りきれなかった「約束」を心の中で繰り返していた。

「大きくなったらパパのお嫁さんになるの」
明治製菓のキャンペーン広告より

この文章を片肘つきながら読んでいた僕は、
顔をそっと左肘に移した。