彼の笑顔は気持ち悪い
オカダにダーツで負けた。
序盤戦は彼の顔が明らかに歪んでいたのに、
終わって見ればこのザマだ。
何が、2人だけのビッグマンだ――
オカダについて話そう。
一浪して今の大学に入学したが、大学には行っていないようだ。
曰く
「ニートじゃねえ、ハーフニートだ」そうだ。
彼と僕との出会いは、3年前にさかのぼる。
地方からこの大学に入り独り暮らしを始めてはみたが、僕は本当に独りだった。
方言を喋る自分がどうしようもなく恥ずかしく、家に籠もっては、早く1日が過ぎればいいと思っていた。
こんな季節だというのに――
僕とは対照的に、彼は多くの仲間を従えていた。
持ち前の人懐こさだろう。
コンパが好きそうだな――
僕の予想は当たっていた。
そんなことはどうでもいい。
彼は僕を一目見るなり、
こう言った。
「解せねぇ。お前ほんと解せねぇ。」
それが、彼との出会いだった。
草木が芽吹く季節だった――
P.S. ダーツとコンパ以外フィクションでした。
オカダ総合研究所、発足。
僕は、恋に落ちた。
その大きな瞳。
美しい黒髪。
習慣によって作り上げられたしなやかな肢体は、永遠に彼女の物であるかのような錯覚を感じさせる。
僕は、眩暈を覚えた。
僕は、「普通の大学生」である。
普通と言っても色々ある。
そうだな、「履歴書の欄を埋めるのに苦労する大学生」というのは上手い表現だ。
これまで、人並みに恋愛を繰り返してきた。
心の繋がりに強いものを感じることもあれば、突然に夢から覚めたこともある。
そして僕は、また夢を見ている。
これまでに無いほど「深い」夢を。
僕の名前は、…
名乗りたい程の名前すら持っていない。
「鈴木」で十分だ。
さあ、そろそろ本題に入ろう。
あの日、「鈴木」は梅田にいた。
梅田の有名な待ち合わせ場所、ビッグマンの前。
土曜の晩だった。
あれは、合コンの待ち合わせだろうか。
背の高い男と華やかな服に身を包んだ女が3人ずつ。
柱の前には、カップルが寄り添っている。
互いの手を温め合う仕草、笑顔が浮かんでいる。
僕は、1人だった。
肌寒い季節に移り変わる時。
「火をお借りしてもいいですか?」
突然のことに、ライターを落としてしまう。
焦って拾おうとした僕の手を、彼女の手が遮る。
2人の指が交錯する。
その瞬間だけは、2人だけのビッグマン。
そう、確かに感じた。
彼女はルーシアに火を着けると一言お礼を言い、何もなかったように立ち去った。
何が、2人だけのビッグマンだ―
次の日、気付くと彼の家にいた。
オカダ。僕の親友だ。
僕は昨日の出来事を出来る限り詳細に話した。
恋を、してしまったこと。
「2人だけのビッグマン」。
何も出来なかった自分。
彼は、いつものようにドラクエ8に熱中していた。
僕の話を聞き終えると、こう言った。
お前の心には「普通」という雪が積もっているんだ―
大丈夫、俺が溶かし方を教えてやるよ―
彼は1枚の紙を広げた。
「土曜の晩のビッグマン」
彼らしい直線的な文字で、そう書いた。
「オカダ総合研究所の設立だ。」
夢の続きを見よう。
いつまでも終わらない夢を見よう。
もう恋なんてしないなんて言わないよ絶対―
※オカダ総合研究所
説明しよう!
オカダ総合研究所、略して「オカダ総研」とは、
普通の男「鈴木」が一度火を貸しただけの女をいかに自分の女にするのか、
つまりどのように「鈴木」が彼女に釣り合う男になるのかを研究するためのプロジェクトである!
具体的には、小手先のモテる技術を延々と議論すると思われる!
これからの活動を全国民が期待している!
P.S. 女の子だけはフィクションでした。