弦楽器の弦の振動による音について考えてみよう。

弦の振動による音は、弦の振動が空気の振動を引き起こしその空気の振動が人間の鼓膜に届き、その鼓膜の振動から音を認識するのである(実際の弦楽器では、弦の振動を弦楽器の胴に伝えて胴で共鳴した音を聴いているのである)。すなわち弦の振動数(一秒間に弦が振動する数)によって音の高低が決まるのである。振動数が大きい音が高い音となるのである。

科学的考察によると弦の振動数と弦の長さとは反比例の関係になることが分かる。このことから、弦の長さが短いほど弦の振動数が大きくなるから音は高くなる。

 弦楽器の弦に対して同じ割合で振動数(音の高さ)を大きくしていき12回目に2倍の振動数になることを考える。すなわち2の12乗根を求め、その値を振動数比とすると振動数比は1.0594630943・・・となる。この方法は平均律と呼ばれるものである。

一方、弦楽器では振動数は弦の長さに反比例するので、同じ割合で振動数を大きくすることは同じ割合で弦の長さを短くしていくことに対応することになる。

そこで、弦楽器の音の高さを弦の長さで決めることを考える。

ある弦楽器の弦に対して同じ割合で振動数を大きくしていく方法として振動数比を考えたが、これに対応して同じ割合で弦の長さを短くしていくことを考える。そのためには同じ割合で弦を12回短くしていって12回目に弦の長さが半分になるようにすればよい。そのためには0.5の12乗根を求めればよいことになる。その値を弦長比とすると弦長比は0.9438743126・・・ となる。この弦長比によって弦楽器の弦を押さえる場所を決めることが出来る。

 ここで、弦長比による三線の演奏法について考えてみよう。

三線の開放弦の長さ(L)が60cmである場合、弦長比によって歌口からの距離は下記の表のように計算できる。この表において、番号1の場所を押さえた時に弦から発せられる音は番号0(開放弦)の弦から発せられる音に対して半音高い音になっている。また、番号2の場所を押さえた時に弦から発せられる音は番号1の場所を押さえた時に弦から発せられる音に対して半音高い音になっている。このように番号が大きくなるに従って音の高さは半音づつ高くなっていくのである。

 このことから、開放弦の時に発せられる音に対して半音づつ高くなっていく音が決定できることになり、その場所に印(シール)を付けることによってより容易に三線が演奏できることになる。                    

 

 

 

番号

弦長比

弦長比

歌口からの距離

歌口からの距離(cm)

 

 

 

L×(1-弦長比)

L×(1-弦長比)

0

0.5^(0/12)

1.00000

L*(1-1.00000)

0.000

1

0.5^(1/12)

0.94387

L*(1-0.94387)

3.368

2

0.5^(2/12)

0.89090

L*(1-0.89090)

6.546

3

0.5^(3/12)

0.84090

L*(1-0.84090)

9.546

4

0.5^(4/12)

0.79370

L*(1-0.79370)

12.378

5

0.5^(5/12)

0.74915

L*(1-0.74915)

15.051

6

0.5^(6/12)

0.70711

L*(1-0.70711)

17.574

7

0.5^(7/12)

0.66742

L*(1-0.66742)

19.955

8

0.5^(8/12)

0.62996

L*(1-0.62996)

22.202

9

0.5^(9/12)

0.59460

L*(1-0.59460)

24.324

10

0.5^(10/12)

0.56123

L*(1-0.56123)

26.326

11

0.5^(11/12)

0.52973

L*(1-0.52973)

28.216

12

0.5^(12/12)

0.50000

L*(1-0.50000)

30.000

13

0.5^(13/12)

0.47194

L*(1-0.47194)

31.684

14

0.5^(14/12)

0.44545

L*(1-0.44545)

33.273

15

0.5^(15/12)

0.42045

L*(1-0.42045)

34.773

16

0.5^(16/12)

0.39685

L*(1-0.39685)

36.189

17

0.5^(17/12)

0.37458

L*(1-0.37458)

37.525

18

0.5^(18/12)

0.35355

L*(1-0.35355)

38.787

19

0.5^(19/12)

0.33371

L*(1-0.33371)

39.977

20

0.5^(20/12)

0.31498

L*(1-0.31498)

41.101

21

0.5^(21/13)

0.29730

L*(1-0.29730)

42.162

22

0.5^(22/13)

0.28062

L*(1-0.28062)

43.163

23

0.5^(23/14)

0.26487

L*(1-0.26487)

44.108

24

0.5^(24/14)

0.25000

L*(1-0.25000)

45.000

 

(岡田利男)