半裸男ヌンのバーに向かってはいるのだが、不安でいっぱいなのである。
まず海外でひとりでバーに行ったことがないということ。
そしてブッダ・バーという名前。いかにもレゲエとかマリファナとかを彷彿とさせる。
そんな名前のバー、日本でだったらひとりでなんて絶対行かない。
などといっている間に着いてしまった。そうか、50メートルくらいしか離れてなかったもんな。
着いてしまったのだからええい、とかかっているすだれをよけて店内をうかがった。ら、すぐに中にいた青年と目が合った。ら、彼は即座に「ピー・ヌン!」と大きな声でこちらに呼びかけた。ら、すだれのむこうから先ほどの半裸男が現れた。彼は店先でなにやら七輪をさわっていた。寒いからだろうか。
わたしがあいさつをすると彼はニカッと笑った。すきっ歯だった。
さあさあ入って入って、なに飲む?ウィスキー?ビール?OK、ビア・シンだね。
小さいのでいいかな?はい、そこに座りなさい。
あれよあれよと店の奥に押し込められた。
入口付近の座敷席では若い欧米人カップルが怠惰に寝転がって水パイプをくゆらせている。
二人のうしろにはマリファナがかかれたラスタカラーの布がかかっている。
もう帰りたい。
間もなくビールがおかれ、条件反射のように一口飲んだ。
Hi!Can you speak English?
隣の席のタイ人のおねえさんに声をかけられた。
ちょっとだけ、と言うと、結構結構、こっちに座っていっしょに飲みましょう、
とおいでおいでしている。そのテーブルにはタイ人のおねえさん(とは言っても40才前後か?メンズライクな色気のあるひと)とアメリカ人ぽい青年(金髪碧眼がっちりボディの20才代半ば?)、そしてわたしが店を覗いたときに目が合ったタイ人のさわやかボーイが座っていた。
言われるがままにタイ人ボーイのとなりに座り、日本からきましたハルです~どうぞよろしく~、とへらへらあいさつをした。おねえさんはイラ、アメリカ人はアダム、さわやかはオーという名前。
イラはこの店で働いていて、アダムはイラにめろめろして常連になっていて、オーは地元の青年で半裸男ヌンと親しいようだ。オーはお客さんが店内を覗くたびに「ピー・ヌン!」と店主に声をかけている。
ちなみにこの「ピー」というのは男女を問わず年上の人につける愛称とか呼びかけのようなものだ(年下には「ノーン」)。日本語でいうところの兄さんとか姉さん、アニキアネゴのようなものだろう。
とりあえず乾杯。これは万国共通だなあ。
もじもじしながらもこの楽しい展開にわくわくしてきた。
なんとなくだが英語も聞き取れる。アルコールパワーか。
はなしはタトゥーの話題になり、みなそれぞれタトゥーを見せ合っている。
さわやかオーも太ももにでかいいかついやつを入れていた。
どんな意味かきくと、これは僕が乗ってるバイクのマークなんだ、とうれしそうに笑った。
ハル、ハル、ちょっと5分だけ付き合って、とさすがに寒かったのか半裸じゃないヌンがそういった。
「外のバーに飲みにいこう!ここはウィスキーとビールしかないから。」
なにか別のものが飲めるらしい。ここはとにかく連れ回されておこう。
向かった先は先刻ヌンに声をかけられた屋台バーであった。
テンガロンハットのぷりっとしたおねえちゃんふたりがテキパキとシェイカーを振ったり
グラスをふいたりしている。
ヌンがタイ語で何かを注文すると、透き通った橙色がなみなみ入ったショットグラスがふたつ、タッパーがひとつ置かれた。タッパーの中にはドライフルーツらしきもの。
「これはドライタマリンド。これをまず口にいれてちょっと噛んだらすぐにこのショットを飲み干すんだよ。一気にいかないとだめだからね。」
なるほどなるほど、了解です。
ドライタマリンドのかけらをとって口に入れるときつい塩気とのちにやわらかな酸味がきた。
Drinkin'!というヌンの合図で一気に橙色を飲み干した。
甘いがアルコールが強いせいか妙にすっきりしていてうまい。カンパリから苦味を抜いたようなかんじの味だ。このガツンとくるかんじが非常に久しぶりの感覚である。
どう?ときかれたのでうまい!とこたえた。
即座におかわりが置かれた。
ぼくはね、とドライタマリンドをつまみながらピー・ヌン(彼は37才らしい)がしゃべる。
「ぼくはね、これを毎日たくさん飲むから元気なんだよ。さあ、Drinkin'!」
そんな具合に橙色を3杯飲んでブッダ・バーに戻る。
店内はさっきよりもひとが増え、にぎやかになっていた。
「5分て言ってたのに30分たってるわよ!一体何杯飲んできたの?」とイラが笑っている。
指を三本突き出すと、だいじょうぶよ、酔っ払ってもオーがバイクで送ってくれるわ、とうんうんうなずいている。タイでは飲酒運転はとくに問題ないのだそうだ。
お客さんたちが急に声をあげて盛り上がりはじめた。
なにごとかと思えば、ピー・ヌンがジャック・スパロウに扮装して現れたのだった。
フラッシュの嵐を浴びるタイ人のキャプテン。
パイレーツ・オブ・カリビアン未経験者のわたしは、そのクオリティーがいかほどのものなのか分かりかねたが、 みんな大喜びであった。
カンチャナブリーからバンコクに帰ったときに、本田氏にこのはなしをして、出来の良し悪しよくわからなかったがそれっぽい雰囲気は出てたと思う、というと、「ああ、薄汚いかんじなんや?」とひとことで表した。
ぷぷぷ、薄汚い、、、まあそれでだいたい合っている。
またその後、わたしはサモアの映画館でパイレーツ・オブ・カリビアンを初めて見る。
音声が英語なのでこまかいところまでは理解できないが、それでも痛快でおもしろい映画だった。
そしてジョニー・デップはいうまでもなくかっこよかった。たしかにこっちも薄汚いのに。

そして改めてピー・ヌンの仮装を確認してみた。

はっはっは、この写真おもしろい!
右のタイのピーヒャラした陽気さがにじみ出てしまっているのがピー・ヌン。
となりのおじさんは知らない人だが、なんかバカバカしくていいツーショットだなあ。
ながらくのときを経て、今更ながらサモアで大笑いした。
途中から時空がかわってしまったが、カンチャナブリー初夜は開幕したばかりである。
夜もアルコールもどんどん深まっていく。
まず海外でひとりでバーに行ったことがないということ。
そしてブッダ・バーという名前。いかにもレゲエとかマリファナとかを彷彿とさせる。
そんな名前のバー、日本でだったらひとりでなんて絶対行かない。
などといっている間に着いてしまった。そうか、50メートルくらいしか離れてなかったもんな。
着いてしまったのだからええい、とかかっているすだれをよけて店内をうかがった。ら、すぐに中にいた青年と目が合った。ら、彼は即座に「ピー・ヌン!」と大きな声でこちらに呼びかけた。ら、すだれのむこうから先ほどの半裸男が現れた。彼は店先でなにやら七輪をさわっていた。寒いからだろうか。
わたしがあいさつをすると彼はニカッと笑った。すきっ歯だった。
さあさあ入って入って、なに飲む?ウィスキー?ビール?OK、ビア・シンだね。
小さいのでいいかな?はい、そこに座りなさい。
あれよあれよと店の奥に押し込められた。
入口付近の座敷席では若い欧米人カップルが怠惰に寝転がって水パイプをくゆらせている。
二人のうしろにはマリファナがかかれたラスタカラーの布がかかっている。
もう帰りたい。
間もなくビールがおかれ、条件反射のように一口飲んだ。
Hi!Can you speak English?
隣の席のタイ人のおねえさんに声をかけられた。
ちょっとだけ、と言うと、結構結構、こっちに座っていっしょに飲みましょう、
とおいでおいでしている。そのテーブルにはタイ人のおねえさん(とは言っても40才前後か?メンズライクな色気のあるひと)とアメリカ人ぽい青年(金髪碧眼がっちりボディの20才代半ば?)、そしてわたしが店を覗いたときに目が合ったタイ人のさわやかボーイが座っていた。
言われるがままにタイ人ボーイのとなりに座り、日本からきましたハルです~どうぞよろしく~、とへらへらあいさつをした。おねえさんはイラ、アメリカ人はアダム、さわやかはオーという名前。
イラはこの店で働いていて、アダムはイラにめろめろして常連になっていて、オーは地元の青年で半裸男ヌンと親しいようだ。オーはお客さんが店内を覗くたびに「ピー・ヌン!」と店主に声をかけている。
ちなみにこの「ピー」というのは男女を問わず年上の人につける愛称とか呼びかけのようなものだ(年下には「ノーン」)。日本語でいうところの兄さんとか姉さん、アニキアネゴのようなものだろう。
とりあえず乾杯。これは万国共通だなあ。
もじもじしながらもこの楽しい展開にわくわくしてきた。
なんとなくだが英語も聞き取れる。アルコールパワーか。
はなしはタトゥーの話題になり、みなそれぞれタトゥーを見せ合っている。
さわやかオーも太ももにでかいいかついやつを入れていた。
どんな意味かきくと、これは僕が乗ってるバイクのマークなんだ、とうれしそうに笑った。
ハル、ハル、ちょっと5分だけ付き合って、とさすがに寒かったのか半裸じゃないヌンがそういった。
「外のバーに飲みにいこう!ここはウィスキーとビールしかないから。」
なにか別のものが飲めるらしい。ここはとにかく連れ回されておこう。
向かった先は先刻ヌンに声をかけられた屋台バーであった。
テンガロンハットのぷりっとしたおねえちゃんふたりがテキパキとシェイカーを振ったり
グラスをふいたりしている。
ヌンがタイ語で何かを注文すると、透き通った橙色がなみなみ入ったショットグラスがふたつ、タッパーがひとつ置かれた。タッパーの中にはドライフルーツらしきもの。
「これはドライタマリンド。これをまず口にいれてちょっと噛んだらすぐにこのショットを飲み干すんだよ。一気にいかないとだめだからね。」
なるほどなるほど、了解です。
ドライタマリンドのかけらをとって口に入れるときつい塩気とのちにやわらかな酸味がきた。
Drinkin'!というヌンの合図で一気に橙色を飲み干した。
甘いがアルコールが強いせいか妙にすっきりしていてうまい。カンパリから苦味を抜いたようなかんじの味だ。このガツンとくるかんじが非常に久しぶりの感覚である。
どう?ときかれたのでうまい!とこたえた。
即座におかわりが置かれた。
ぼくはね、とドライタマリンドをつまみながらピー・ヌン(彼は37才らしい)がしゃべる。
「ぼくはね、これを毎日たくさん飲むから元気なんだよ。さあ、Drinkin'!」
そんな具合に橙色を3杯飲んでブッダ・バーに戻る。
店内はさっきよりもひとが増え、にぎやかになっていた。
「5分て言ってたのに30分たってるわよ!一体何杯飲んできたの?」とイラが笑っている。
指を三本突き出すと、だいじょうぶよ、酔っ払ってもオーがバイクで送ってくれるわ、とうんうんうなずいている。タイでは飲酒運転はとくに問題ないのだそうだ。
お客さんたちが急に声をあげて盛り上がりはじめた。
なにごとかと思えば、ピー・ヌンがジャック・スパロウに扮装して現れたのだった。
フラッシュの嵐を浴びるタイ人のキャプテン。
パイレーツ・オブ・カリビアン未経験者のわたしは、そのクオリティーがいかほどのものなのか分かりかねたが、 みんな大喜びであった。
カンチャナブリーからバンコクに帰ったときに、本田氏にこのはなしをして、出来の良し悪しよくわからなかったがそれっぽい雰囲気は出てたと思う、というと、「ああ、薄汚いかんじなんや?」とひとことで表した。
ぷぷぷ、薄汚い、、、まあそれでだいたい合っている。
またその後、わたしはサモアの映画館でパイレーツ・オブ・カリビアンを初めて見る。
音声が英語なのでこまかいところまでは理解できないが、それでも痛快でおもしろい映画だった。
そしてジョニー・デップはいうまでもなくかっこよかった。たしかにこっちも薄汚いのに。

そして改めてピー・ヌンの仮装を確認してみた。

はっはっは、この写真おもしろい!
右のタイのピーヒャラした陽気さがにじみ出てしまっているのがピー・ヌン。
となりのおじさんは知らない人だが、なんかバカバカしくていいツーショットだなあ。
ながらくのときを経て、今更ながらサモアで大笑いした。
途中から時空がかわってしまったが、カンチャナブリー初夜は開幕したばかりである。
夜もアルコールもどんどん深まっていく。