ひよくんが、2才くらいの時、はなちゃんが、幼稚園?小学校かな?行ってるあいだ、ふたりで、ショッピングモールに出掛けました。

楽しく、ふたりで歩いているときに、視界の隅でなにか動いた気がして、停まってる車の方を見ました。
なんにも動いてない。。。
また、歩きだしました。

そのとき、ショッピングモールは、補修工事か塗り替え工事か何かしていて、足場が組まれて、職人たちが仕事をしていました。
下には、頭上注意発起のために、警備員が。

その警備員とすれ違いました。

警備員が。
なんか、言いました。

振り返りました。

さっきの、停まってる車の方に歩いていく警備員。
私も、もう一度、車を見ました。

やっぱり、なにか、動いてる。

天気のいい空がフロントガラスに写ってるんじゃない。
なにかが動いてると思ったの。さっき。
車の中で誰かが動いたのかと思ったの。
そうじゃない。

フロントガラスをなぞるように、動いていたのは、車のなかに充満した、黒煙でした。

大きな声を出した警備員。

爆発するかもしれない。
ひよくんは?ひよくんは?
2~3歩先にいた、ひよくんを抱き上げました。

車から離れようとしたとき、信じられないことが。

警備員が、大きい声で、なぁーんでだよぉっ!!
って、言いました。

車の中から、聞こえてきたのは、子供の泣き声でした。



叩いてもなにしても、開かない車のドア。
足場の上で仕事をしてる職人たちのところから借りてきたのか、警備員がバールかなにかで、大きなワンボックスのフロントガラスを叩きました。
割れない。
もう一人の男性も、スライドドアと、助手席のドアの間に、工具を差し込んで、テコの原理で、開けようとしたけど、びくともしなくて。

大声と、車を叩く、ものすごい音と、集まる野次馬で、辺りが騒然としてきました。

しばらくして、やっと、ガラスが割れて、ぐんにゃりと大きく、壊れた、スライドドアが開いて、黒煙が立ち上りました。

泣き声は、もう、ずいぶん前から聞こえなくなっていて、周りがうるさいから聞こえないだけなのか、そうじゃないのか、わからなくて。


そのあと。
警備員の手で、子供が外に運び出されました。
ススで、顔も髪の毛も洋服も手も足も、真っ黒。
涙が流れた所だけ、顔のススが薄くなってて。。。

目が開いてる。
生きてる。
そして、もうひとり助け出されました。。
ふたりも、小さな子供が、運び出されました。
ふたりとも、生きてる。


店内放送をかけているみたいだけど、親御さんは来なくて、野次馬たちは、親に向けた、攻撃的な言葉を飛ばしていました。
運び出された子達は、寝かされて。


ずいぶんしてから、お母さんが、やって来ました。
スーパーでお買い物してたの。
聞こえなかったんだと思う。

お母さんの胸のとこには、抱っこひもで、赤ちゃんが。
もう一人いたんだ。

野次馬のあいだをススだらけの、変わり果てた子供のところに歩いていくお母さんの姿が。
野次馬たちは、口々に、
車が大変なことになっちゃったよ、
あの車、もう乗れないよ、
どこいってんだよ。。
やっと来たよ。

子供たちのとこで、しゃがみこんだお母さんの後ろ姿を見て、その場を離れました。
抱っこしてる、ひよくんの洋服で涙を拭きながら。
さささって、早足で。





小さい子を車に乗せたまま、車を離れるのは、いけないことで、しちゃいけないのは、承知してるし、いけないのは、お母さんなんだけど。


あの、野次馬たちが浴びせた罵声は、大喜びしているように見えて、あの事件事故と同じくらい、怖いと思いました。

良かった、生きてて。


帰る頃には、壊れた車は、そこにあったけど、お母さんも子供たちも、もういなくて。

どうやってこんなに早く駆けつけるんだろう?って、不思議なくらい。
テレビの局のカメラたちが、たくさん。
手当たり次第に、この現場を見ていましたか?
最初どんなだったか、状況は、御存知の方いませんか?と、マイクを持った人が聞いて回っていました。

分かりません。

と、言って、車に戻って、家に帰りました。

夜、NHKを見ていた職人さんが、
みと、これじゃないか?
って、
見慣れた、ショッピングモールの映像。
ライターで、遊んでしまったらしい。
車のシートに燃え移ったのだろうと。

ひよくんよりは、大きかったけど、まだまだ、小さな子供でした。


最近、日中は、暑くなることが多くて、
車の中では、エアコンを使うこともあります。

タバコを吸うおうちでも、
車内にライターを置いておくのは、熱くなる車内じゃ危ないんじゃないかな。

自力で出られない密室は、お留守番させるのに安心だけど、密室の中で、なにが起きるか予想は、大人になんか出来ないと思うなぁ。
子供の発想力と行動力はスゴいもの。


お留守番は、難しい。