幻色江戸ごよみ | 海辺の読書記

幻色江戸ごよみ


著者: 宮部 みゆき
タイトル: 幻色江戸ごよみ

下町に住む町人の姿を描く、時代小説短編集。
どの作品も、市井作品に宮部みゆき独特のミステリー色を加えたような作品になっている。

最近話題の、宮部みゆき。僕は、今のところ、この人の本はこの本一冊だけしか読んでいないのだが、その文章の秀逸さ(読みやすく引き込まれる)と、独特なミステリー感はよくわかった気がする。
ただ僕は、「時代小説が読みたい」と思って読んだので、時代小説とミステリーの合体のようなこの作品群は、いまいち「時代小説感」に欠けているような気がして、物足りない部分もあったと言える。
勿論、作品一つ一つがよく出来ていたため「つまらない」と感じた作品は無かった。「宮部みゆきが読みたい」と思って読んだ人はどう感じたかが気になるところ。
ちなみに、僕が一番面白かったと感じたのは「首吊り御本尊」という作品。毎日の辛い奉公に耐える、奉公人の捨末が店の大旦那に呼ばれ、掛け軸に描かれている、首を吊ってにこにこ笑っている男、「首吊り御本尊」について語り始める・・・という話。少し不気味なところが、何とも言えず面白い。

時代小説特有の読み難さがほとんど無い、と思うので、初めて読む時代小説としては最適かと思われる本。