押川 どうぞ御勝手に……。
持山 どうしたんだい。さうお互ひに、短気を起しちやいかんよ。摺沢さん、この男のいゝところは、こゝなんです。どんな場合にでも、一直線の道を歩く。正々堂々と、障碍にぶつかつて行くんです。お気を悪くなさらないで下さい。押川、君もちつと相手を考へろよ。摺沢さんを、敵にしちや損だ。ねえ、摺沢さん。
摺沢 (何事もなかつたやうに)いやなに、わたしも、押川さんのさういふところを見込んで、一肌脱いだ訳なんですから、心のなかでは、何とも思つてやしません。
持山 (他のものに)諸君も、お聞きのやうなわけだ。今日のところは、みんな、厭な顔をしないで別れようぢやないか。
製本屋 どうかして貰ふまでは、動かないつもりですがね、あつしや……。
押川 動かずにゐ給へ。
