大野谷文化圏活性化推進委員会は、26年度事業として「梅榮車継承事業」を行ってきました。その概要を報告します。


梅栄車継承事業の内容

 江戸時代後期から大野祭りで曳き回されている十王町梅榮車は、経年劣化で傷んでおり行事に使用する際支障が出ているため復元修理を行いました。併せて、記録作成、人材育成、一般公開などの事業も実施しました。27年度に繰り越して行う事業も一部あります。

1 提灯に係る事業
 現在の提灯枠と提灯は絶えず修理を重ねながら使用しているが、長年の使用で修理不能なものも多くなり、随分その数が減ってきました。宵神楽の山車に吊るす提灯が揃わないことで、伝統的な宵神楽とは趣きが異なってきていることから、提灯及び提灯取付枠を新調しました。
  また、山車の組立て方、塗り物の取り扱い方、解体後の部品の収め方、楫棒を綱で絞める棒締めの結び方、幕を止める房の飾り結びの結び方等の伝統を受け継ぐ若手後継者の育成も行いました。また、その様子をビデオや写真に記録しました。


2 からくり人形に係る事業
 大野まつりで曳行される梅榮車のからくり人形が、経年劣化で傷んでおり、行事に使用する際に支障が出てきているため復元修理を行いました。併せて、からくり人形芸能の若手後継者を育てる事業を行いました。


用具の修復新調及び修理内容
1 提灯の新調 125個
提灯

2 提灯枠の新調
提灯枠

3 麾振唐子の修理
 ・ 胴体締め直し…隙間、歪み、糊切れのため、分解修理、糸穴埋め直しを行いました。
 ・ 腕軸修理…軸のすり減りのため、樫材を使用し修理しました。
 ・ 腕ゴマ修理…ゴマのすり減り及び変形しているため、本桜材を使用し修理しました。
 ・ 糸新調…摩耗、サイズが合わないため、正絹絹糸中口に取り換えました。
 ・ 衣裳クギ新調…虫食いのため、セミクジラヒゲで製作しました。


4 面被り童子の修復
(1) 頭の復元新調…胡粉の傷、彩色が昔と違うため、木曽檜材で胡粉仕上げで新調しました。   

旧頭   新頭
【旧頭】                    【復元新調した頭】

 (2) 陵王面の復元新調…胡粉の傷、割れのため、木曽檜材で胡粉金泥仕上げで新調しました。
旧面   新面
【旧面】                    【復元新調した面】



梅榮車継承事業により得られた効果
1 提灯に係る事業
修理には、昔から伝わる製法で竹ひごを骨材に使い、昔ながらの提灯に仕上げ、その明かりに浸れる山車提灯を後世に残すことができる。
 提灯の骨材は、針金に紙を巻き付けたものを使用していたが、今回新調した提灯は、竹ひごを骨材としているため150g程度とほぼ半分の重量となった。このことは、提灯は5つ縦につなげて飾るので、その重さで提灯が裂けるという問題点があったが、本体が軽くなったことで提灯及び提灯枠への負荷が軽減され予期せぬ効果が得られた。
 提灯工房見学会では、提灯の大きさや形は、工房によって全て違うということ、呼び名が同じでも膨らみ具合とか直径とかが少しずつ違うことなどを学ぶことができた。また、提灯は、たたんで一つずつ袋に入れてしまうのが良いことなど提灯の保存方法を詳しく知ることができた。
2 からくり人形に係る事業
  山車の組み立て解体を含め、綱・房・提灯の取り扱いの技術を習得する若手後継者を育成することで、糸の結び方、つなぎ方から教え、衣装の着け方、梱包材の片付け方や糸の通し方などができるようになった。
  前人形の操りはほぼできるようになった。面被り唐子・笛吹き童子は足の操りを行った。多くの練習に興味を持って熱心に取り組み、次の世代が育ってきたように思う。
大野祭りでの梅榮車曳行とともに、例年県内外から訪れる観光客を魅了し、地域の観光振興や地域経済の活性化に多くの効果をもたらすことが期待できる。また、祭り関係者を始め地域住民が一体となって、梅榮車継承事業に協力し、伝統ある行事や芸能を維持するこが見込まれる。