驚異の「鉄人」幼虫、雑誌付録に 学研が採用検討

・零下200度の低温に耐え、濃度100%のアルコールも、沸騰したお湯の熱さもへっちゃら。
 驚くべき生命力をもつアフリカ産の小さな蚊の幼虫が、科学教材として来年にも登場しそうだ。
 「科学と学習」などで知られる学習研究社が、独立行政法人・農業生物資源研究所の研究に
 目をつけ、新雑誌の「ふろく」への採用を検討中だ。

 教材になるのは、アフリカ中部に生息する蚊の仲間、ネムリユスリカの幼虫(全長約7ミリ)。
 昆虫では唯一、体が乾燥すると代謝が止まって休眠状態となり、水分を得ると息を吹き返す。
 「生命の驚異を感じるのに最適」(学研担当者)と、学研側が同研究所の奥田隆・主任研究官に
 企画を持ちかけた。今年4月に創刊した小中学生向けの科学雑誌「科学のタマゴ」で、「ふろく」に
 採用する計画だ。

 ネムリユスリカは乾燥地帯の水たまりに住み、乾期で水が干上がると、体内でトレハロース
 という糖を合成。細胞のたんぱく質を包み込み、熱や寒さから体を守る。
 奥田さんらは、ナイジェリアで採取した幼虫を研究室で大量繁殖させることに成功。奥田さんの
 これまでの研究では、零下197度の液体窒素に1週間▽濃度100%のエタノール溶液に
 1週間▽チューブに入れ90度のお湯に1時間、それぞれの状態に乾燥幼虫を置いても、
 水を与えると、1時間後には動き出した。

 販売する際には、外来種の繁殖を避ける目的で幼虫に放射線を当てて不妊化する。
 また成虫になっても動物や人の血を吸うことはない。500円硬貨ほどの容器に乾燥幼虫
 8匹を入れる。水を加え、付属の顕微鏡で生き返る様子を観察する。
 奥田さんらは、雑誌とは別に理科教材用のキット販売も検討。さらに、休眠の原理を
 食肉や血液の新しい乾燥保存法に応用できないか、なども研究中だ。「乾燥すると生物は
 死ぬという先入観を打ち砕かれます。ぜひ実物を見て驚いて」と奥田さん。(