ゲーム業界ちょっといい話 ビックタイトルに潜む罠※過去ログサルベージ | C.I.L.

ゲーム業界ちょっといい話 ビックタイトルに潜む罠※過去ログサルベージ

2004年12月17日

ゲーム業界ちょっといい話 ビックタイトルに潜む罠

 

山木ドンが探偵ファイルでドラクエ8の話を書いていた が、そんな話は今に始まった事ではない。


オレが直接体験した中で最も卑劣なやり口をしてくれたのは、『バーチャファイター3』発売の際のSEGAである。


今から約8年前、ゲーセン業界は『対戦格闘ゲームバブル』が弾け、深刻な冬の時代を迎えていた。閉店・倒産・夜逃げが当たり前といわれ、期待のビックタイトルが発売されてもすぐにインカム(売上)が落ち込み、ゲーセン経営ではもはや儲けは出せないとまで言われていた。


そんな中発売されたのが、問題のバーチャファイター3である。


バーチャファイターシリーズとは、1993年に第一作目が発売され、本格的な3D格闘ゲームとして、マニアの間で評判となった。続く1994年に発売された『バーチャファイター2』は、『バーチャジャンキー』と呼ばれるほどの熱狂的な信者を生み出し、空前のヒット作となった。


これは経営難に苦しむ当時のゲーセン経営者からすると、久々に大きな儲けが期待できる『救世主的な作品』だったと言える。


ゆえに、バーチャ2の続編である『バーチャファイター3』の発売を、誰もが藁にもすがるような気持ちで待ち望んでいたのである。


だが、SEGA(および問屋)はそんなゲーセン経営者達を奈落の底に叩き落したのである。


バーチャ2の発売から、バーチャ3が発売されるまでの間、SEGAは新作ゲームを次々とリリースしていった。そして、新しいタイトルが発売される度に『バーチャ3開発開始!』や、『バーチャ3開発順調!』、果てには『バーチャ3完成間近!』といったニュースも同時に伝わってきたのである。


挙句の果てには『今度の新作にはバーチャ3で採用されるシステムが盛り込まれているぞ!』などと、何かに付けて『バーチャ3』の陰をちらつかせていたのである。


そして裏では、SEGAや問屋からまた別の話が伝わってきていた。『バーチャ3はご贔屓にして頂いている方にしか卸しません。』と。


暗に『これからSEGAが出す新作は全部買えよ?そうじゃねえとバーチャ3卸さねえぞ?』という事である。


これにより、バーチャ3にすがりたい経営者達は、明らかに売上の見込めないSEGAの新作ゲームを、無理して仕入れ続けるしかない状況に陥らされた。


それだけならまだいい。


基盤であれば、一枚あたりの単価もまだ安く、1ゲーム50円でもなんとか大赤字は出さずにすむ。(売上+人気がなくなってきた頃に基盤を売ってとんとんだが)


だがSEGAの暴走は止まらず、遂に『新型筐体ブラストシティ』を発売する事になる。「バーチャ3は新型筐体のブラストシティじゃないと動きません。」という心のこもったメッセージと共に。

※後にこれは大嘘である事が判明し、簡単なパーツを間に噛ませれば、それまでの『アストロシティ筐体』でもバーチャ3が問題なく動かせた。ようは卑劣な騙しである。


ちなみに基盤とはゲームソフト(ドラクエやファイナルファンタジー)であり、筐体とはハード(ファミコンやプレステ本体)である。


基盤の金額すら売上で賄えない時代だというのに、新たな筐体まで買うとなると、回収の見込みはほぼないに等しい。


そんな状況下において、SEGAは『新作ゲーム数タイトルと新型筐体との抱き合わせ』という、悪魔のようなヤクザ商法を断行したのである。


だがそれでも、経営者達はバーチャ3に夢を見ていた。バーチャ3がバーチャ2のようなヒット作になってくれれば、まだ何とか生き延びれると考えていたのだ。


だが、待ち望んだバーチャ3は致命的なバグが施された逸品であり、バーチャ2のヒットとは程遠い結果に終わった。


これによって、ゲーセン文化はトドメを刺されたと言ってもいい。


その後のゲーセン業界はUFOキャッチャーやプリクラなどの景品機、プライズマシンが主流となり、ビデオゲームのシェアは縮小され、アミューズメント業界と呼ばれるようになる。


ビックタイトルの発売に合わせて抱き合わせ販売が行われるのは仕方のない事だとしても、その業界全体を衰退させるようなやり口はどうかと思う。


PSPが4万円で売られているとか、ドラクエ8が抱き合わせだとか、このSEGAの悪魔の所業に比べれば屁でもない。


まあ確かにFC版ドラクエ3をオトッキーと一緒に買わされた時は殺意を覚えたが…。