33.さまようココロ trīgintā duo
事件は、これといった進展もないまま22日目を迎えた。
マンションロビーには、オーナー星倉 管理人山住 1505鶴園 1512柳本
クラブママの木宮そして高木刑事の6人がいた。
「みなさんに話しておくことがあります。」
高木が、重い口調で切り出した。
「鶴園さん、柳本さんはもうすでに気づいているのかも知れませんが
あなたがた二人の他に15階に住んでいらっしゃる方はもういません。」
「えっ!他の住人は、GWで旅行に行ってんじゃないの?」
星倉が、ワントーン高い声で反応した。
「正確に言うならば、ここにいる6人以外は誰もこのマンションには
住んでいないということです。1502の甲斐夫妻 1506の黒木さんそして
1503の樋口千穂さえも部屋は、もぬけの殻です。」
「ちょっと待てよ!俺は何も聞いてないぞ!甲斐も黒木も樋口も
出て行ったのかよ!おい、山住!どうなってんだよ!」
星倉は、怒りに満ちた顔で山住に詰め寄った...が、山住は答えなかった。
「星倉さん、落ち着いてください。そもそもこの事件は、本当に起こったのか?
そこから考えましょう」
「はぁ?あんた何言ってるの?事件があったからあんたら刑事が来たんでしょ!
で、間抜けな東っていう刑事まで行方不明になっちゃうし...あんたら警察は事件解決
する気がねーんだよ!だいたいなぁ...」
「あのー...ちょっといいですか?」
木宮ママが星倉の話を遮った。
「何故わたしがここに呼ばれるのでしょうか?わたし何も関係ないし」
「木宮さん、あなた以前1507に住んでましたよね?
そして僕も以前ここに住んでました。」
「えっ?二人ともここに住んでらっしゃたんですか?」
初めて柳本が口を開いた。
「ええ、住んでました。と言うよりか、僕には、そういうかすかな記憶が
残っているだけですが...」
「ちょっとちょっと、ますます訳わかんねーよ!一体どういうことなんだよ!
ここは、俺がオーナーだよ。俺は、あんたたちを住まわした記憶なんてねーぞ!」
「オーナー...そして高木さん...私からも話をさせてくださいませんか...」
「な、なんだよ!山住、お前もなんか知ってるのか?」
「はい...私の知っている全てをお話します。」
山住は、大きく深呼吸して話し始めた。
「木宮さんそして高木刑事さんだけではありません。実は、行方不明になられた
東刑事も以前1508に住んでいたのです。」
