昨日(12月23日)東京高等裁判所の判決がありました。

残念ながら、こちら側の請求は棄却される結果となりました。

 

判決文は、検察側に都合の悪い点はすべて無視した一審の判決文よりは丁寧ではありましたが

ほとんど原審の内容を踏襲するものでした。

 

弁護士さんの話では、

被害申告側の話に変遷や矛盾点があることなどから

3名の裁判官においても議論があったような感じがあるということでした。

 

また、傍聴された裁判に詳しい方の話では、

裁判所が被害申告をしている子どもが嘘をついている、

といった判決を出すと

被害者を守る会などを含めて世論やマスコミからバッシングされる為、

余程強烈な証拠がない限り、

無罪判決は出さないものである

といった話もありました。

 

納得できる判決ではありませんので、

今後は上告致します。

 

信じて応援してくださっている友人知人、市民の方々、家族親戚、

傍聴に来られた方々に心から感謝申し上げます。

 

 

 

 

「幾多の再審事件やえん罪であるとして争われた事件において、検察官手持ち証拠の中に、請求人や被告人の無実を示す証拠が眠っていたことが明らかになるという事態が続いており、被告人にとって公訴事実を全面的に争う場合に検察官が任意開示に応じず、また裁判所が開示命令を下さない時には、無罪方向の証拠が法廷に出されることなく有罪となるという危険性が指摘されてきた。」(本書36ページ)

 

現在、再審法の改正に関して法務省の法制審議会(刑事法再審関係部会)が、63名の元裁判官や135名の刑事法研究者そして国会議員らによって叩かれているのは、まさに前述の『検察官手持ち証拠』の中に『無実を示す証拠』が隠されたままになっており、無実の者が有罪とされている事実が数多く発生しているにも関わらず、放置状態となっているからである。

 

更には、再審法制が今回の法制審議会において「改悪」されようとしている現状がある。

 

指宿信法学博士による本書「証拠開示と公正な裁判」は、論理的に実務での実例を挙げてひとつひとつ丁寧に説明されている素晴らしい1冊であり、非常に勉強になった。

 

検察など捜査機関が証拠を隠す現状に関しては、世間一般にはさほど認知されていないことだが、

「人質司法」と並び、司法制度改革が絶対的に必要な危機的状況を

世間に訴えていきたいと思います。

 

それは、実際に体験した者の責務であると考えます。

 


 

 

 

 

「漱石の思い出」は成田警察署に留置されているときに署内で借りて読んだ本です。

 

漱石夫人の鏡子さんが話す内容を、漱石の門下生であり、また

漱石が亡くなった後に漱石の長女筆子と結婚し婿となった

松岡譲さんが書いたドキュメンタリーです。

 

本にするにあたり、記述した文章を鏡子さんに確認したり鏡子さんが新たに思い出したことなどもあるので

松岡譲さんは何度も加筆修正した、と記しています。

 

私は夏目漱石の作品では「坊ちゃん」が好きで、大人になってから再度読み直したこともあります。

ちょっと気が短いですが、まっすぐで道理の通らないことや根回しも嫌いな主人公に共感します。

鏡子さんの本名は「キヨ」というそうです。

「坊ちゃん」の作品中、主人公を暖かく見守る下女の名も清(きよ)でした。

 

鏡子さんは

「漱石はゆったりとしていて公平で、向かっ腹もたてることもない。」

と回想しています。

 

しかし、漱石は英国ロンドンに留学した際、

「倫敦(ロンドン)に住み暮らしたる二年は尤(もっと)も不愉快の二年なり」(「文学論」より)

と話している通り、精神的にかなり苦しんだようでした。

 

結果、精神失調症ではなかったかと言われています。

そのため、神経質で癇癪を起すこともあり、

子どもたちは「父が恐ろしかった」時期もあり、

大人になってからも父親をずっと憎んでいた子もいたようです。

 

私は猫が好きなので、足の爪までまっくろな黒猫を飼っていたこと、

猫を飼ったことが名作「吾輩は猫である」に繋がった逸話は

とても興味深かったです。

 

漱石は涙もろく、気の毒な人には同情し面倒見もよかったので、

門下生たちが慕っており、毎週木曜日の木曜会には多くの門下生が家にいたということでした。

支える鏡子さんは大変だったことでしょう。

ラスト、晩年の修善寺での吐血から永眠までの内容が、とても濃く強烈でした。

 

一世を風靡した小説家というだけではない、本人や家族の苦悩もわかる一冊でした。

 

 



 

 

 

 


今日の「まんが図書館」では、ケーキ作るセットを持って来てくれたお子さんがいて、子どもたちが苺とバナナ、キウィをカットして缶詰のフルーツを合わせて乗せ、生クリームをスポンジに塗ってケーキを完成させてくれました。


ケーキ作り中


フルーツケーキ完成の図


今日の「まんが図書館」も、本を読む子、ゲームをする子、外でサッカーをする子、バドミントンをする子とそれぞれ楽しそうでした。


寒かったのでなりみけさんが鍋でコーンスープを作ってくれて、みんなで美味しく頂き暖まりました。何杯もおかわりをしている子もいました。

なりみけさん、ありがとうございました。


ありがとうございました


高校の説明会に参加した後にやって来てくれた子は、志望校の雰囲気がとても良かったと喜んでいました。

がんばってね。

忙しい中、立ち寄ってくれる方々もいらっしゃって嬉しかったです。



次回は2026年1月4日(日)冬休み中の14時〜17時です。




 

 

昨日(12月11日)の衆議院法務委員会の質疑では、稲田朋美議員(自民党)に続いて本村伸子議員(日本共産党)も、「再審法改正は法務省の法制審ではなく議員立法で可決すべき」との意見を平口法務大臣に対して述べています。

 

本村議員は、昨年12月の衆院法務委員会でも、事件から58年たって無罪が確定した袴田巌さんへの検察による人権侵害と再審法改正について質疑しています。

 

今回も、複数の議員がしかも自民党の元防衛大臣稲田朋美議員まで熱のこもった意見をしていますが、平口法務大臣は役人から渡された答弁書をただ読み上げるのみでまったく自身の言葉での説明・考えを述べようとしないため、周囲からは呆れたようなヤジも飛んでいました。

国会中継を視聴していた国民も呆れていたと思います。

 

12月2日の参議院法務委員会では、自民党の鈴木宗男参院議員も確定した刑事裁判をやり直す「再審制度」を見直す再審法改正について質疑しました。

鈴木宗男さんも冤罪被害者として現在も闘っています。

 

鈴木宗男参院議員は12月2日の参院法務委員会で、平口洋法務大臣の答弁に対し

「その答弁は役所に言われた通りの答弁だ。国務大臣としての答弁じゃない。きちっと頭作りしてほしい」

などと述べて質問を終えました。

 

国会の答弁で役人の作った原稿をただただ読み上げるだけの大臣の姿をよく見ます。


選挙後など着任したての大臣によく見られますが、実際不勉強な大臣も多く、平口大臣もその類の大臣だと思いました。

 

法務大臣には、自民党であれば私は稲田朋美さんもしくは鈴木宗男さんが適任だと思います。


元裁判官や再審法に関心のある方々、研究されている方々はほぼ全員が「法制審ではダメ」と表明しているこの実態がある中、マスコミは今後どれだけ世論を動かすことができるのでしょうか。


マスコミの報道力も問われています。

 

 
昨日の衆議院予算委員会での大石あきこ議員(れいわ新選組)に続き、
本日(2025年12月11日)の国会法務委員会の質疑においては、
自民党の元防衛大臣・稲田朋美議員が
「再審法改正についての議連案の審議入り」
を求める素晴らしい質疑がありました。
 
稲田朋美議員は、平口法務大臣の原稿棒読みに対して
「今のではダメなんですよ。今のはダメ」
と、ダメ出しする姿がとても良かった。
 
 
以下、ABEMA NEWSより抜粋します。
 
 稲田議員は
「昨年は袴田事件、今年は福井事件で再審無罪判決。両事件において共通するのは、有罪の証拠が捜査機関の捏造もしくは利益誘導による虚偽の証言。しかも再審制度の不備によって無実の人の人生を丸ごと損なうほどの長期間を要しているわけです」と指摘。
 
 ここから福井事件について、冤罪を生んだ検察の問題点について追及が始まった。 
「約40年前私の地元福井で女子中学生が自宅で殺害された事件で、犯人とされた前川彰司さんは今年再審無罪を勝ち取りました。捜査機関による証人に対する不当な誘導及び利益供与による虚偽の証言、そして重要な(無実の)証拠を第一審から隠し続けた検察官によって、無実の前川さんの人生は棄損されました。昨年の第2次再審開始決定において、裁判所は検察官に対し、不利益な事実を隠そうとする不公正な意図があったことを確認。『公益を代表する検察官としてあるまじき、不誠実で罪深い不正の所為と言わざるを得ず、適正手続の保障の観点からして到底容認できない』と厳しく批判をいたしました。裁判所から『手続保障に反する』、これ憲法違反だと指摘されているんですよ。しかも『不誠実で罪深い不正』とまで言われている」と指摘。 
 
 続けて「今年の再審無罪判決においても、『確定審検察官がこの誤りを適切に是正していれば、そもそも再審請求以前に確定審において原審の無罪判決が確定した可能性も十分考えられるのであって、上記のような確定審検察官の訴訟活動に対しては、その公益の代表としての職責に照らし率直に言って失望を禁じ得ない。検察警察の不正不当な活動ないしその具体的な疑いは、単に検察警察に対する信用を失わせるのみならず刑事司法全体に対する信頼を揺るがしかねない深刻なものである』とまで指摘しているんです。ここまで裁判官が検察を批判したというのは私は例を見ないと思います」と厳しく指摘した。 
 
 さらに、「特筆すべきことは、この重要な証拠を隠したのは1人の検察官ではなく、確定審、第1次再審、第2次再審を通じて担当検察官全てが証拠開示を拒否し、証拠隠しをした。検察の手元にあったにもかかわらずですよ。第2次再審請求審において裁判所は検察官に対し、証拠を任意で開示するように勧告しましたが、検察官は『高検の担当者全体の意向である』と任意開示を拒否したんです。まさに組織ぐるみで証拠を隠したと言われても仕方がありません。裁判所からの異例というべき激しい厳しい指摘についてどう思うのか刑事局長にお伺いします」と質問した。 
 
 佐藤淳法務省刑事局長は、「検察当局におきましては御指摘の事件で前川さんが相当期間にわたり服役し、無罪となったことについて厳粛に受け止めているものと承知しております。また確定審における御指摘のような検察官の訴訟活動に関しては、裁判所から当時の検察官の対応は不公正なものであったと評価されたのも当然であるとして、検察官の対応を批判する裁判所の指摘を重く受け止め、真摯に反省して教訓とすべきものと考えているというコメントを発しているものと承知しております」などと答えた。 
 
 これに対し稲田議員は「今刑事局長は確定審検察官がとおっしゃったんですけど、確定審検察官だけじゃないんですよ。第1次再審請求でも第2次再審請求でも手元にある証拠を出さず、第2次再審請求審では裁判官から『出せ』と言われても『高検の全体の担当者の意向だ』と言って出さずに、そして『命令を出すぞ』と言われて初めて出したわけですよね。そこに重大な無罪を推定される証拠があったというのが今回の事件なんです。私が言いたいのは、この福井事件がまさしく今、再審法改正の立法事実そのものなんですよ。証拠開示の範囲、仮にこれ今、法制審で言われているような“関係する事実に関わるものだけ”と言えば出てこなかったものなんですよね。ですからこの立法事実そのものであるところの、この福井事件の検証をなぜしないんですか」と激しい口調で詰め寄った。 
 
 佐藤刑事局長は「個別事件におきまして無罪判決が確定した後に、再審無罪になった事件、通常審で無罪になった事件、様々いろいろある、そこに反省のある事件は多々あるわけでございますけれども。その上で無罪判決が確定した後に公表を前提とした検証を行うか否か、被告人とされた方などにいかなる対応をとるかなどにつきましては、まずもって検察当局におきまして個々の事案に応じて検討した上で、判断して対応すべきものであると考えているところでございます」と答えた。 
 
 稲田議員は納得せず、「これは普通の事件じゃないんです。今回の再審法改正の立法事実そのものであって、この刑事法制度の立案責任である法務省において、しっかりこれは検証すべき事案だというふうに思います。また先ほど前川さんに対しての、やはり直接的な謝罪がないとダメだと思います。昨日も予算委員会で総理から、大臣はこの再審法の改正を行うことについての指示をしているというふうにおっしゃったんですけれども、この再審法の改正について今、元裁判官63名が『今の法制審の方向性では改悪以外何ものでもない、全く現状の改善につながらない』、また法務省とか検察サイドが主導する法制審に改正すること自体も誤りだとおっしゃっています。大臣、この再審法に対する考え、議連案に沿った改正を行うべきだと思いますがいかがですか」 
 
 平口法務大臣は「再審制度は十分な手続保障と三審制の下で確定した有罪判決について、なお事実認定の不当などがあった場合にこれを是正する非常救済手続きであり、同制度が適切に機能することは大変重要であると考えております。引き続き法制審議会において十分な検討が行われ、できる限り早期に答申をいただけるよう力を尽くすとともに、法制審の議論の結果を踏まえて適切に対応してまいりたいと考えております」と議連案ではなく、法制審の議論を踏まえて対応すると答弁。 
 
 これに稲田議員は「今のではダメなんですよ。今のはダメ」と反発。
 
 この“ダメ出し”に議場からは「そうだ!」の声も上がり、拍手も起きた。
稲田議員は続けて「なので私はやはり、国権の最高機関であるところのこの委員会で、そして委員長はですねやはりその点について非常に国政調査権を軽視することがないよというふうにおっしゃっておられます。ぜひとも当委員会において福井事件の検証及び議連案の審議入りを求めます」と主張すると、議場には拍手がわいた。 
 
 再審法改正をめぐっては、超党派の議員連盟の案(議連案)は
1.再審請求人が証拠や証拠リストの開示を求めた場合に、裁判所は原則として検察に開示命令を出すよう義務づける、2.再審開始決定に対する検察の不服申立てを禁止する、などが盛り込まれている。 
 
 一方、法制審議会の議論では証拠開示の範囲が限定される案が有力視されている。
 
(『ABEMA NEWS』より)
 
稲田議員「議連案の審議入りを求めます」
自民党議員からこのような意見がでることは非常に素晴らしいと思います。
 
 

 

本日、衆議院予算委員会にてれいわ新選組の大石あきこ議員が

「再審法改正は法制審ではなく議員立法で」

といった趣旨の質疑を行いました(再審法改正については約31分40秒から)

 

衆議院予算委員会大石あきこ議員の質問

 

これまでも12月に入ってから、63名の元裁判官や135名の学者らが

法務省法制審議会での再審法の改正議論においては

「捜査側が持つ証拠全開示の義務化」

「再審請求に対する検察の抗告禁止」

をすべきであるにも関わらず、なされておらず

むしろ改悪方向へ向かっている、

なので法制審ではなく国会での議員立法で「再審法を改正」してもらいたい

という声明を発しています。

 

大石あきこ代議士は、その点について熱心に話されていましたが

残念ながら高市首相の反応は芳しいものではなく

高市さんの答弁は、非常に残念に思いました。

 

それでもなんとか、今国会で再審法改正法案を可決していただきたいものです。

世論はまだまだ過熱していません。

マスコミも一部の記者、団体しかありません。

これは実際に冤罪を体験した者、その家族や関係者にしかわからない感情かもしれません。

 

どうか宜しくお願い致します。

 

学生の頃、土方歳三と新選組を描いた「燃えよ剣」を読んで感動し、

司馬遼太郎さんの作品を次々と読みました。

 

家族から読みたい本を訊かれて「竜馬がゆく」をリクエストしたところ、

再び坂本龍馬をじっくり30年以上ぶりに読むことができました。

 

あらためて読むとかなりの傑作で名作です。

「竜馬がゆく」の凄いところは、坂本龍馬のことのみならず、

読むと幕末の日本史がよくわかることです。

 

若いころ、バイト先で年配の方と司馬遼太郎作品の話になり

とても盛り上がったことがありました。

「坂の上の雲」「峠」「国盗り物語」そして「竜馬がゆく」など面白いですよねと話すと

その方は「竜馬がゆく」は好きじゃない、ということでした。

理由を尋ねると、「泥棒で竜馬の子分の藤兵衛は架空の人物だから、史実と違う」

ということでした。

竜馬の子分になる泥棒の「寝待ちノ藤兵衛」というキャラや竜馬の初恋の相手役お田鶴(たづ)さんは

確かに物語りを面白くするための架空の人物です(お田鶴さんはモデルがいます)が

それはそれで良いと思います。

そのおかげで坂本龍馬の凄さがよくわかります。

 

今回、あらためて「竜馬がゆく」を読み直してみて

本当に名作だなと思いました。

感動です。

 

司馬遼太郎作品では、まだまだ読んでいない作品がありますが

「竜馬がゆく」「燃えよ剣」「国盗り物語」を充分読んだのでもう満足です。

 

差し入れてくれてありがとうございました。




 

 

 

 

 
「ノラネコぐんだん」シリーズ(工藤ノリコ 白泉社)は、猫好きの方のみならず子どもから大人まで幅広く愛されている絵本です。
 
「まんが図書館」にもほぼ全巻揃っていたと思います。
 
私がちょうど勾留中に「ノラネコぐんだんぺこぺこキャンプ」という最新刊が発売され、妻が私を元気付けようと差し入れてくれました。
 
絵本なのであっという間に読み終えますが、妻の気持ちが嬉しくて苦しい中、しみじみと眺めていました。
 
ノラネコたちのなんとも言えない表情がたまりません
 
「まんが図書館」でも子どもたちがよく借りていきます。
 

雑誌「コドモエ」には、よくノラネコぐんだんのトートバッグやカレンダーなど付録が付いているので付録目当てに購入することもあります

 

ノラネコたちはパンを焼いたり、ラーメンを作ったり、最近ではピザまで焼いています(すべてコッソリと)。

みんななかなかの芸達者です。

悪いことをすると最後にはちゃんと反省して謝るところがミソです(顔だけ見ると反省しているようには見えませんが)。

 

子どもの情操教育にもよい素敵な絵本だと思います。

差し入れてくれて、ありがとう。



「パンどろぼう」の記念切手が発売されていました

こちらも子どもたちに人気のある絵本で、時々「パンどろぼうありますか?」と聞かれることもあります

切手、まだ郵便局にあると思いますよ

 

 

12月3日、63名の元裁判官が「再審法改正に関する共同声明」を発しました。

 

その前日(12月2)には、

「再審法」の改正について、誤判救済に関心を持つ刑事法研究者が会見を開いて、相次いで声明と意見書を発表しました。

 

声明と意見書はそれぞれ別のグループによるものですが、いずれも、刑事法研究者が、再審法改正について審議している法制審議会の議論内容に対する強い危機感を表明し、超党派の国会議員連盟が6月国会に提出した議員立法による再審法改正を支持するものです。

 

マスコミの前でのパフォーマンスを好まない研究者の方々には非常に珍しいことであり、検察からの影響力が強い法制審議会の内容に非常に大きな危機感を抱いているためです。

 

以下、紹介します

 

「再審法改正議論のあり方に関する刑事法研究者の声明」

 

第1 はじめに

 2024年3月に結成された再審法改正に向けた超党派の国会議員連盟は、翌2025年2月に再審法改正に向けて議員立法を提出することを確認し、6月に、再審請求における証拠開示の拡大と再審開始決定に対する検察官の即時抗告、異議申立及び特別抗告(以下、一括して検察官抗告という)の禁止を柱とする法案を提出した(現在、継続審議中)。これに呼応するかの如く、2025年2月に諮問され4月に開始された「法制審議会―刑事法(再審関係)部会」(以下、法制審部会と呼称)での審議は、11月26日現在、11回にわたる審議を重ねている。

 私たちは、誤判救済に関心を持つ刑事法研究者として、再審制度の運用、さらに再審法改正の動きに対して強い関心を寄せてきた。しかしながら、報道ならびにこれまで公開された法制審部会の審議状況をみる限り、①証拠開示の範囲を新証拠と関連する部分に限るべきである、②違法・不当な再審開始決定に対する検察官抗告は必要であるといった議論が主流を占めている。再審法改正の必要を踏まえた意見なのか、疑問を生じさせる意見も少なくなく、冤罪被害者にとっては、パンの代わりに石を与えるものとなりかねない方向さえ見て取れる。多くの単位弁護士会が、議員立法による再審法改正の速やかな実現を求める声明を発出しているのも、このような審議状況への危惧に由来する。

 このような状況にかんがみて、私たちは、再審法改正のために何が必要かを問い直すべく、本声明を表出するものである。
 

第2 立法事実と再審の理念を踏まえた法改正の必要性

1 今回の再審法改正問題は、無辜の救済のための制度である再審制度が現実には機能不全となっている事実に端を発する。そし  て、その中核的要因として、検察官の裁判所不提出記録の証拠開示の有無・広狭により再審の可否が左右されていること(いわゆる「再審格差」)、再審開始決定に対する検察官抗告により救済が阻害・遅延させられていることがつとに指摘されてきた。

従って、再審法改正に関する議論は、少なくともこの2点を是正することを前提とする必要がある。そのためには、証拠開示の果たした役割、検察官抗告によってもたらされた弊害を実際の再審事件に即して検証することが不可欠である。

また、再審請求手続において、確定判決の見直し(いわゆる旧証拠の再評価)を、請求人が提出した新証拠と関連する部分だけに限ろうとする裁判実務の動きもあるが、無辜の救済という再審の理念にそぐわず、法律の改正とともに、このような動きを乗り越えていかねばならない。

 

2 証拠開示について、そもそも刑事事件における証拠は、犯罪の存否・行為者の特定のために収集された一種の公共財であり、その収集者(警察・検察)が独占すべきものでない。仮に刑事司法の円滑な運営や個人のプライヴァシー保護のため不開示とすることが許容されるとしても、それは例外的措置にとどまるべきものである。特に再審の場合、確定判決にまで至っているのであるから、証人威迫や証拠隠滅等の、開示による司法上の弊害の危険は事実上消滅している。

また、通常審の段階を含め、被告人側は、捜査・訴追機関側がいかなる証拠を保持しているかを完全に把握することができない。この点で、もともと武器の不平等が存在する。くわえて再審の場合、証拠開示の範囲を新証拠と関連する部分に限定することになれば、請求段階で想定しうる争点のすべてについて新証拠を用意することが必要となり、請求人側に不可能を強いることとなる。

実際の再審事例を見ても、広汎な証拠開示の必要性は明らかである。袴田事件では、請求人に対する違法・不当な取調べの事実を明らかにする録音テープの存在や5点の衣類の色が長期間のみそ漬けを経た犯行着衣とすると不自然であることを示すカラー写真などの開示が再審開始・再審無罪に直結している。福井女子中学生殺人事件でも、請求人の有罪を基礎づける関係者供述が虚偽であることを示す捜査報告書等の存在が証拠開示によって明白となった。かつての松山事件においても、重要な物証に関する鑑定手続に不可解な点があることを明らかにしたのは、裁判所不提出記録であった。

これらはいずれも請求人側が存在を知りえない証拠なのであり、再審請求における証拠開示を広く認めることがいかに重要であるかを示唆している。

 

3 検察官抗告については、検察官は 再審請求手続の訴訟主体ではないから、本来、抗告の権限も持っていないというべきである。再審開始決定に対する検察官抗告は、これに対する請求人の応訴の負担を発生させる。当事者でもない検察官に、請求人に対して応訴を強いる資格などないはずである。くわえて、検察官による攻撃の権限(公訴権)は、少なくとも確定後は消滅しているはずである。検察官の公益代表者性や再審の二段階構造といっても、それだけでは、抗告権という検察官の具体的権限を裏付ける法的根拠たりえない。

現状としても、再審請求手続が(ある意味で必要以上に)厳密・厳格に運用されている点からみて、違法・不当な開始決定はごくまれにしかおこりえず、そこでの証拠評価等の事実認定上の誤りは再審公判で正せばたりる。

むしろ、財田川事件、島田事件、袴田事件など、再審開始決定を取り消した決定が後に上級審で破棄され、再審開始に至ったケースは少なくない。免田事件や福井女子中学生殺人事件など再審開始決定の取消しが確定しつつ後日の請求で再審が開始された事例も存在している。

また少なくとも、1970年代末から現在に至るまで死刑再審無罪5事件(免田、財田川、松山、島田、袴田)や多くの再審無罪事件が検察官抗告を経験していることに照らし、検察官が十分かつ慎重な検討を行って対応してきたと評価することはできない。すなわち、もはや検察官の裁量に委ねて済ますことはできない状況に至っており、何らの立法的手当ても要しないというのは到底正当化されまい。

 

4 これらの立法事実を踏まえたうえでもうひとつ重要なことは、再審の持つ、誤判救済、無辜の救済という理念に即した法改正を進めることである。

再審は、これまで、確定判決に由来する法的安定性と具体的正義の調和のもとに成立する制度であると理解されてきた。判決の確定に軽視できない重要性が存在することも、確かではある。

しかし、二重の危険が憲法上の権利とされたことにより、判決の確定は何よりも被告人の権利でもあることが確認された。現行法が再審制度を利益再審のみに限って認めたのも、その現われである。そこには、法的安定性といっても、それは確定判決の尊重だけを意味するのでなく、正しい事実認定によらない限り有罪とされてはならないということの保障も含意されていることを見逃してはならない。

 現在、再審の理念が「無辜の救済」と捉えられているのも、以上のような観点に由来する。この理念は、再審制度の解釈・運用のみならず、再審における証拠開示や検察官抗告の禁止等その制度設計においてこそ活かされる必要がある。

現行法の下でも、通常審において、手続の適正が確保されないまま有罪が確定してしまうことは十分考えられる。また、適正な手続を経て有罪確定判決が形成されたからといって、誤判はおこりえないなどということはできない。従って、確定判決の尊重や通常審の手続との整合性を理由に掲げて再審手続における請求人の権利を制約することは、冤罪から目を背けることにほかならない。

 

第3 求められる再審法改正とは

 冤罪・誤判は最大の人権侵害のひとつである。それ故、冤罪・誤判を生まない刑事司法、また、不幸にして生じた冤罪・誤判の犠牲者を確実に救済する刑事司法を確立することは、国家にとっても市民にとっても不可欠の課題である。そしてそれは、思想信条・党派の違いを超えて共有されるべき課題でもある。全国会議員の半数を超える議員が再審法改正に向けた議員連盟に参加し、また全地方議会の5割に迫る議会が再審法改正の意見書を採択した(27の道府県議会を含む831議会)のは、このためである。

再審請求手続の機能不全、それに由来する誤判救済の阻害と遅延という事実が再審法改正の原点であった。この原点にかんがみれば、証拠開示の大幅な拡充とその制度化、そして検察官抗告の禁止を柱として、誤判救済を容易かつ迅速化する再審法改正こそが求められているといえよう。

 私たちも、刑事法研究者として、このような課題の実現に寄与したいと考える。

 上記のような観点から、再審法改正論議の現状を憂慮して、本声明を公にするものである。
 

以上

 

■呼びかけ人(五十音順)

石田倫識(明治大学教授)
大出良知(九州大学・東京経済大学名誉教授)
川﨑英明(関西学院大学名誉教授)
葛野尋之(青山学院大学教授)
斎藤 司(龍谷大学教授)
笹倉香奈(甲南大学教授)
白取祐司(北海道大学・神奈川大学名誉教授)
新屋達之(元・福岡大学教授)
高田昭正(大阪市立大学名誉教授)
高平奇恵(一橋大学教授)
田淵浩二(九州大学教授)
豊崎七絵(九州大学教授)
中川孝博(國學院大学教授)
渕野貴生(立命館大学教授)
松宮孝明(立命館大学特任教授)
三島 聡(大阪公立大学教授)
水谷規男(大阪大学教授)

 

事務局

新屋達之・三島聡・川崎英明・笹倉香奈・豊崎七絵・渕野貴生・水谷規男

 

呼びかけ人17名
賛同人118名(文字数制限のため残念ですが割愛させていただきました)
合計 135名