ボクシングの時間

　床が汗で滑り、規則的3分ごとに金属音が鳴り、熱気と熱狂が空気を熱くし、おっさん(私)も兄ちゃんも無口にサンドバッグを打ち込む、撃ち込む、撃ち抜く。縄跳び→柔軟体操→腕立て→シャドーボクシング→コーチの指導ってメニューを黙々とこなす。１時間が一瞬で過ぎる。

　横で宅配便勤務の若者が愚痴る、「最近、Amazonがセールやってて、現場はてんてこ舞いだよ。ピンポン押しても返事が無いので不在者カードを入れたら、自分は居てたって客にクレーム入れられたよぉ💢」と言いつつ、ミットに怒りをぶつけている。社会の基盤を支える「エッセンシャルワーカー」は欠くことが出来ない存在なのに抑圧されがちだ。化粧品や健康食品の類いは一方的に継続と見なして送りつけるケースも多く、届けた翌日に「取りに来い」の電話が入ると言う。徒労感に陥って当然だ。しんどさがピークに達したのだろう。稀に荷物を車に積んだまま「消える」仲間も居て、その時は手分けして荷物を配り切るそうな。壮絶な話だ。

　1日に100個以上の荷物に対し、完了・不在・引越しにより不明などの入力を長い信号🚦の合間にするので、神経が擦り減ると言う。しかも35度の陽を背に階段を駆ける彼らに幸あれ！「明日は不在者が減ると良いね」と労(ねぎら)いつつ、一個のチョコ🍫を分けっこする。