王子警察署へ車庫証明を出しに行った帰り、駅前まで戻ってきて、王子といえば落語「王子の狐」の舞台だなとふと思い、改札口を左に見たままガードをくぐり親水公園口側へと抜けました。なんかあるかなって。

 

狐狸は人を化かすといいますが「王子の狐」は人が狐をだます噺。王子稲荷のお参りの帰り道ひとっこ一人いない野っ原で、狐が若い女の子に化けた現場を目撃した男。あたりを見回すと誰もいない。こりゃあの女狐、俺をだまくらかすつもりだな、よし、じゃこっちからと機先を制して「おう、お玉ちゃんじゃねえか。どしたい。こんなところで逢うとは珍しい。この近くに美味い料理屋があるんがメシでもいっしょに食わないか」 狐がキツネにつままれちゃいけませんな。

 

なんだかわからず男のあとにつき従いやってきたのが当時一流の料亭「扇屋」でござんす。慶安元年(1648年)創業の江戸後期でさえ既に老舗の料理店。ここの名物が玉子焼きなんですね。現代に生きる我々からすれば玉子焼きなんぞなんてこたぁありませんが、当時、玉子は大変高価な高級食材、そこにまた高価な砂糖をたっぷり使った玉子焼きは今なら鰻の蒲焼に匹敵する贅沢な一品だったんですね。 そんな玉子焼きに刺身だ天婦羅だ酒は固めて持って来いってんで狐のお玉ちゃん相手に豪勢な酒盛り。すっかり酔っぱらって床柱に寄りかかりぐっすり寝入ったお玉ちゃんをしり目にかの男、「おう勘定してくれ俺は先に帰る。金は女が払うから」とずらかっちゃった。悪い野郎だね。

 

王子の狐のストーリーを頭ん中でなぞりながらぼんやり歩いていると、おや左側の視界に扇屋の文字がひっかった。あれ、そんなはずはない、でも、あれ?

 

扇屋の看板の下、玉子焼きが売られているんですな。足を止めて眺めると小さな屋台店。おばさん一人でお店番、スポーツ紙なんぞを読んでいる。 「ええ、料理屋のほうはね10年位前かな閉めちゃったんですよ。でもこれはね好きな人が多いから、この小さなところで持ち帰りだけで続けてるんですけどね」 「玉子焼きはもう昔からのまんま、くわしいことはわからないけど」 買う。買います。あの扇屋の玉子焼きでござんしょ。買いますとも。 江戸初期以来の料理店が廃業していたことは残念でしたが玉子焼きは健在だったんですな。これはお家でしみじみ食べたい。さっそく買い求めました。ことわったうえでお店の写真も数枚撮らせていただきました。

 

扇屋の玉子焼きは現代人の味覚からするとかなり甘いです。でもスイーツもなにもなく砂糖や味醂がとても高価だった江戸時代から明治初期にかけては甘さがなによりのご馳走だったんでしょうな。ちょいと酔ってけえってきたおとっつあんのお土産が扇屋の玉子焼きだったら、さぞ子どもたちは大歓声をあげたんじゃないかしらん。 そう350年前から変わらぬ江戸の味。ハイボールと合いましたな。なにやら口ン中に江戸の風が吹き抜けてくような。 街歩きってどこになにが転がっているかわかりません。こういう邂逅に出会えることは人生の楽しみのひとつです。書を捨てよ町へ出ようと言ったは寺山修司。まったくですねぇ。 へい本日はこんなところで御免下さいまし。

 

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