旦那さんのあとから奥さんも続いておずおずと話しかけてきた。
「まだ小さいお子さんもいらっしゃるし、もし何かイヤなことでも起きたらと思うとどうしても黙っていられなくて・・」
おぉ。。なんてイイ人達なんだ!ヤンキー臭いとか言ってごめんなさい!と心の中で猛省する僕。しかし許せないのは「元・博徒」の社長だ・・こんな重要なことを隠したまま売りつけようとするなんて!
妻とも話し合った結果、やはりこの話は無かったことにしようと決めた。しかしあの強欲社長がすんなり手付金を返してくれるとは思えない。。と思ったら案の定だった。
事務所に押しかけて社長を問い詰めると「首吊りなど無かった。前の住人が亡くなったのは心臓麻痺だった」の一点張り。キャンセルするのは勝手だが手付けは返す気は無いとのこと。死因を疑うなら警察に行って調べてもらってもよいとも言う。実は田舎ではままあることなのだが自殺を心臓麻痺とかで処理することって実際あるんだよね。遺族の体面みたいなものでさ。本来ならいけないのだろうけど。
それともうひとつ僕には社長に対する弱みがあったのだ。
実は建売をドタキャンする前にまだ建築中だったその家にいくつか注文をつけて僕好みに外観を改装してもらっていたのだ。そのぶん余計な費用がかかったとか言われてしまっては立つ瀬が無いのだよ。ただ言い訳させてもらうならその建売は見た目がダサダサだったのが僕のおかげで少しはモダンでかっこよくなったんだけどね。僕の後に買った人はお得だったね。フン!
そんなわけで「もう手付けの20万はいいからすんなり御破算にしてくれ。」と言い残し事務所を後にした。高い勉強代だったがこれもいい経験になったと思うことにしてね。
さて・・次の住処を探さなければ。。完全に振り出しに戻っちゃったよ。 つづく