調子づいた俺はオークションで高値で宝石のルースが売買されているのに目をつけた。その中でひときわ目立って高値をつけていた翡翠、調べてみるとミャンマーに世界的な翡翠の産地とマーケットがあるではないか( ☆∀☆)
妻の猛烈な反対も顧みず、翡翠をミャンマーに仕入れに行くジュエリー・ハンティングの旅に出た。俺はたった今から、世界中の煌めきを集めるハンターだ。約4年ぶりの海外、まずはバンコクにとんで、そんでもって南の島パンガン島のビーチ沿いのバンガローで潮風に包まれながらハンモックな揺られビールに酔いしれるぜ!
突然訪れた自由に夢が膨らむ。翡翠市場のあるマンダレーまで飛行機でバンコクから2時間弱、翡翠で年内に3000万円は稼いだるでー、まってろ我が最愛の娘よ、ハムスターではなく今度はゴールデンレトリバー買っちゃるきにー!( ̄- ̄)ゞ
もちろん宝石ド素人な俺は、騙されるリスクを避けるため宝石を鑑別するための屈折計や、顔料など使用されていないか調べる宝石用ルーペやジェダイト・カラーフィルターなど専門機器や専門書を買い漁り、バンコクにあるジュエリー・スクールにまで入校した。
ひさしぶりにプール付きのホテルで3日ほど何もせずに過ごし、ジュエリー・スクールの門をたたいた。
「先生、自分はこれから翡翠を仕入れにマンダレーに行くんで本翡翠と翡翠の見分け方を徹底的に教えて下さい!」
やったぜ、これで俺は間違いなく大金持ちだ。もう毎月30日間もぜってい働かねえぞ!
いかにも目利きといった先生はニコニコしながら
「マンダレーで日本人は翡翠を仕入れられませんよ。」
「・・・・・え?」
「外国人の翡翠の持ち出しは禁止されてます。買えても政府公認のお店で外国人価格で買えるだけです。」
「えー本当ですか?・・・他に日本に持って帰ると高値で売れる宝石って何かありますか?」
「今はeBayとかで沢山売られているから、昔みたいな国ごとの価格差はあまりないんですよ。素人が裸石で利益を出すのは難しいと思いますよ」
じゃーオイラはいったい何をしにはるばる日本からココにやってきたんだ?
「でも、すぐそこにジュエリー・トレード・センターがあるから1個1ドル位の裸石(ルース)買ってシルバーのアクセサリーにして売れば儲かるかもしれませんよ」
呆然とした。
ハンモックはおあずけになった。
先生に宝石の鑑別方法を習い、ジュエリー・トレード・センターでルースを仕入れ、それをセンター近辺にある彫金屋でアクセサリーにしてもらった。
全部で100万円使って70万円戻ってきた。
1000万円位の資本金があればうまくいくかもしれないが、今の俺には無理だということがわかった。