可部線の旧安野駅。
二十年以上前に可部から三段峡までが廃線となったが、安野駅だけが当時のままの駅舎とホーム、それに列車(キハ58 )までも残してある。
連休の最中とあってか、人が絶え間なく訪れるこの場所。
「うわ〜!懐かしい!」
駅舎に入るなり、皆が声を上げる。
ホームに佇むキハ58は、近くで見るとかなりの傷みが目立つ。もう二十年以上雨ざらしなのだから、そうなるのも仕方がないだろう。
駅舎の周りは公園として整備され、駅舎もホームも、とてもきれいに掃除が行き届いている。これは地元の方々の、尊い努力によるものだ。
先日の新聞に、傷みが目立つキハ58の撤去の話が出ており、議会がその費用の予算化を議論しているとの記事が載っていた。
公園としての維持を担う地元の方々の高齢化、そして人口減少もあり、この場所をこのままにしておくことが困難になってきているのだ。
鉄道ファンの自らに問う。
お前は、この状況をどう考えるのか。仕方がない?で済ませるのか。
仕事柄、人口減少の続く地区に関わることが多いが、問題はどこも共通している。庄原以北の芸備線など、廃線の危機に瀕している鉄路も然り。
懐かしい!と声を上げることができる場所は、人々の暮らしの営み、そしてその地区の歴史の中で時間をかけて築かれていく。
ノスタルジックになるだけで、ああすればいい、こうすればいいなどど、無責任なことを言うつもりはない。
地域の課題を論じる前に、そこに住む人々の暮らし、人生の営みにどれだけ寄り添えるか。
これがそこに住まわない我々の、まず第一の課題であろう。
五感をフル稼働する時である。