洞の中のネズミは夢を見ていた。
夢の中で、ネズミは兄弟たちと一緒だった。
4匹の兄弟は初秋の畑を駆け回っていた。
まだ暖かさの残る太陽の光を全身に浴びながら
落穂を拾い、互いにぶつかり合ったりして、
子どもたちは幸せを感じていた。
今、ネズミはまだ夢の中だ。
夜明けが近くなり空気は一層の冷たさを増している
ネズミの吐く寝息は白く
瞼からは一粒の涙がこぼれた
目が覚めて、洞から出たとき、
ネズミは初めて、自分が来た方角を振り返った。
冬枯れした木々と下草の向こうに
生まれた場所を見つけることはできなかった。
ネズミはまた走り出した。