警察官が自転車防犯登録確認に躍起になていた理由
自転車に乗っていて警察官に停められ、防犯登録を確認されたことのある人は多いと思う。
防犯登録のナンバーを無線で飛ばして、警察署などから「●●名義、被害の届出なし」的な回答を受ける。
警察では窃盗など犯罪名は隠語を使う。これは、一般人に犯罪名を聞かれることで不愉快な思いや色々な憶測をされたりしないためでもあるし、何より、対象の一般人が犯人(被疑者)の場合、警察のやりとりを相手に知られることは勿論厳禁だからである。
私は、2011年に警察学校に入校(警察では、「巡査拝命」という)し、2012年ころから現場に出ていた。
今は少し違うようだが、当時は自転車窃盗を捕まえることが、交番警察官の大きな使命であり、若手として大きな第一歩を進んだ証のようなことになっていた。
なぜこのようになるか。
たかが、自転車窃盗・・・
と思われる方も多いだろう。
まず、綺麗ごとから言うと、自転車も立派な財物であり、それなりの値段がする。
しかも、例えば通勤通学で自転車に乗ってきて、駅などに停め、帰りに自転車がなかったとすれば、どうやって家に帰るのか。
家が近ければいいが、そうでないと相当な労力がかかる。
次の日はどうするのか。
など、被害者が被るものはそれなりにあるということ。そして、「犯罪被害の届出」をわざわざ出していることもある。
次に、警察の内部的な話をする。
警察の仕事は、交番や交通、刑事、警備、生活安全課などの部署があり、許認可など行政的なこと、防犯活動や公安(国の安全)情報の入手などもあり、内容も多岐にわたる。
しかし、他のことは他の官庁に仮に任せられたとしても、これを失くせば「警察」を名乗れなくなる職務がある。
それは、犯人(被疑者)の検挙。
つまり、悪い奴を捕まえる!ということである。
ということで、交番のお巡りさんも110番通報などの事案対処や届出の受理、相談を受けたりするだけでなく、「立派に悪い奴を捕まえるべきは当然。」とういことになる。
厳密にいうと、交通取り締まりも「道路交通法違反」の検挙なわけなので、悪い奴を捕まえるの中に 理想はそうだが、現実は難しい。そもそも、パトロール・職務質問で捕まえるには、対象者が禁制品(持ってはいけないもの)を持っている必要がある。
私は公然わいせつ(陰部を露出)の被疑者を捕まえたことがあるが、目撃者の協力のもとに職務質問を行い、警察署に任意同行したのち、生活安全課捜査員の取り調べによって逮捕されたという例もある。
ただ、被害の申告で捕まえることも勿論大きな手柄で大切ではあるが、そんなに頻繁に出来ることではない。
性犯罪もけっこう頻繁に起きているが、なかなか被疑者をパトロールで見つけ出すのは難しい。
外見的にパトロールで見つけ易く、犯罪が時短で判明するもの。
それが自転車窃盗あるいは占有物離脱物横領の検挙ということになる。
最近は大麻が流行っているが、当時は薬物で流行っていた覚醒剤の所持・使用の検挙は地域警察官(交番員、パトロール専属員)全体にとっても一人前の必須条件だった。
これは、自転車窃盗検挙どまりでなく、一歩進んだ職務質問、所持品検査を行える技術や法的知識の研鑽を推奨するものでもあるとともに、薬物が暴力団など反社に由来することからも、これらの検挙は警察として大きな意義を持つ場合もあると考えられるからである。
別の面からみると、覚醒剤使用者の場合、素振りや動きなど外見に出やすいということもあり、他の犯罪と比べるとパトロールでの検挙のしやすさがある。
薬物の検査等には時間がかかるが、他の犯罪の証拠集めよりは著しく時短で検挙できるものである。
しかし、覚醒剤取締法違反検挙は刑事課に引き継ぐ必要があり交番(地域課)のみで完結できず、刑事の手を煩わせることとなり、刑事から嫌がられる場合も少なくない。
それに比べて、自転車窃盗等の検挙は「微罪処分」または、「簡易書式」で処理できるため、地域課だけで完結できる場合がほとんどなのだ。
微罪処分とは、言わば警察限りで終わらせることのできる、厳重注意処分的な書類となり、検事には月一回刑事課から微罪処分名簿を提出するだけである。
簡易書式は、検事に通常通り書類は送致するが、通常の事件処理に比べて相当簡素化された書類で済むもので、大阪府では地域警察官でも処理できるものとされている。
ノルマはないものの、当時は月一件の検挙があればしっかり仕事が出来ているとされた。
三交代制の地域警察官は、一月に10回出勤し、24時間勤務をする。
その10回の出勤でコンスタントに検挙をあげるには、効率よく確実性のあるものが良いわけで。
その結果が、自転車窃盗検挙に偏っていた理由であります。