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「あーぁ…ついてなかったなぁ…」

放課後
今朝の遅刻の罰として先生に理科の実験道具を整理整頓するようにと言われた。

ホコリっぽい室内。
窓をあけ換気すると春の暖かい風が室内の空気と入れ替わりで入ってくる。

「きもちいい…」

この春、龍谷高校の2年生になった吉田かほは、平凡を実体化したような女の子だった。

平均的な身長。体重。
平均より少し低めの成績。
顔も壊滅的な不細工ではないが美女でもない。可もなく不可もなく…。
友達もそこそこいるし楽しく高校生活をおくれる「普通」のJK。

少し普通の子と違うと思えるところは、実家が市内で有名な笠神社ということ。

それにちなんで去年高校入学のお祝いで買って貰ったスマホでインストールしたKASADROIDは、巫女さん風にカスタマイズするのがマイブームとなっている。

寺町で神社仏閣の多い笠岡市だが、今のところ巫女カスタマイズでかぶっている人は会ったことがないのがかほの自慢だった。




「あっ、そうだ!」

思い出したようにスマホを取り出すと、

「ねぇ、巫女!ちょっと見て!」

画面を窓の外へ向ける。
校庭の桜が満開だった。

「丁度1年だよ。1年前の今日、かさ巫女も私もこの龍谷高校に入ったんだよ。」

そう言いスマホに語りかける。

「まだカスタマイズ前だったけど覚えているわ。あなたが私に名前をつけてくれた翌日、ここに通い始めたのよね。」

「本当は朝一番に見せたかったんだけど…」

「遅刻したもんね」

「あはは…はは…」

「かほ、もう少し勉強や普段の生活をキチンとしないと。来年は大学受験なんでしょ!」

画面が赤くなる KASADROIDのお説教モード。

「ごめん、ごめんって!でも大学受験っていってもさ。あと1年以上あるじゃん?」

そのお気楽な返事にかさ巫女はため息をついてみせた。

「1年以上あるっていっても、今のようにだらだらと過ごし続けるとあっという間だよ?」

「それに…」

「んっ?それに?」

「それにかほが大学を近くで考えているなら笠岡から通えるけど、もし他の都道府県で受験することになったら…」

画面が暗くなりしょんぼりするかさ巫女。

「そだね…」

そんなかさ巫女の姿を見て「通える範囲かぁ」と胸の中で呟く。
かほだってかさ巫女と離れたくない。
大学にも家から通えるところに行きたい。

それなら勉強は頑張らないといけない。

わかっている。わかってはいるが、まだ将来何になりたいとか、どう頑張ればいいのかとか、かほには全くわからなくて、将来のことは「まだずっと先のことだ」と自分で自分を誤魔化す毎日だった。