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お茶の水女子大学日本語・日本文学コース  アシスタントblog

お茶の水女子大学日本語・日本文学コースのアシスタントによるブログです。

お茶大のゴミ捨て場には、紙の再利用のための分別ボックスがあります。

そこの分別のラベルに「雑がみ」と書いているのですが、わたしはこれをずっと「ぞうがみ」と読んでいました。

ところが、ほかの人に聞いてみるとみんな「ざつがみ」と読んでいるんです。

 

さて、「雑」という漢字の音読みには呉音の「ゾウ」、慣用音(日本で独自に定着した音読み)の「ザツ」、漢音の「ソウ」があります。

日本で用いられる音読みでは、一般に使われるものは漢音なことが多いのですが、この「雑」という漢字は不思議なことに漢音で読む熟語が(おそらく)なく、ほとんどの語は慣用音の「ザツ」を用いて読んでいます。

(「雑がみ」は「ぞうがみ」と読むわたしも、「雑誌」は「ザッシ」ですし、「雑談」は「ザツダン」です)

 

なぜわたしは「雑がみ」を「ぞうがみ」と読んでしまったのでしょうか。

気になって「雑」を「ザツ」と読む語と「ゾウ」と読む語を『日本国語大辞典 第二版』で引いてみたところ、おもしろい傾向がわかりました。

それは、重箱読みになるものは「ゾウ」と読んでいることが多いという傾向です。

今でも使われている語は「雑木(ゾウき)」と「雑煮(ゾウに)」くらいしか重箱読みの語はないのですが、今では使われていない語では「雑籠(ゾウかご)」(小さなものをあれこれ入れるかご)、「雑蔵(ゾウぐら)」(雑多なものを入れておくくら)、「雑小屋(ゾウごや)」(種々雑多なものを入れておく小屋)、「雑菜(ゾウな)」(野菜)、「雑箸(ゾウばし)」(雑用に使う箸。粗製の箸)、「雑水(ゾウみず)」(よごれた水)、「雑物(ゾウもの)」(こまごまとしたいろいろな物)などがありました。

 

『日本国語大辞典 第二版』によると「ザツ」とも「ゾウ」とも読んでいたらしい語がちらほらあり(「雑記」は「ざっき」「ぞうき」、「雑用」は「ざつよう」「ぞうよう」どちらでも立項されています)、意味も「ザツ」でも「ゾウ」でもそこまで違いはなさそうなので、わたしは意味で考えて「ゾウ」と読んでいたのではなく、「かみ」という訓読みに続くなら「ゾウ」だろう、という類推によって「ぞうがみ」と読んだのかもしれません。

 

重箱読みの語は「ゾウ」と読む……という規則をひとまず採用するとすると「ぞうがみ」もそう変わった読み方ではないはずなのですが、いまだ仲間に出会えていません。

「ぞうがみ」派の人、誰かいませんか?