昨今、政府の教育方針や政財界から必要とする人材像(グローバルエリートの育成、グローバルイノベーションの創出、AI開発人材、IT開発人材)を考慮し、大学では『実学』として所謂STEAM(科学、工学、エンジニアリング、アート、数学)教育に関する学部・学科を教育の軸とし、場合によっては大学内で学部・学科の新設をしていますね

さて、その実学に対し『虚学』と呼ばれる学問が近年出てきているそうです

『虚学』とは何か?

●広辞苑より

きょ‐がく【虚学】 実学に対して、実社会で直接には役に立たない学問。

●文部科学省ホームページより

哲学を「虚学」とする見方がある。この場合の「虚学」とは、社会が直面している現実の課題に取り組む「実学」に対する概念であり、机上の学問というほどの意味である。

なんだか、哲学が不要な扱い

実際、私自身IT業界で仕事をしていると数学(解析学、代数学、幾何学)や情報工学(データマイニング、コンピュータグラフィックス、ネットワーク、コンピュータビジョン、検索エンジン、データベース、計算機科学、ソフトウェア工学)の知識は勿論重要だし、仕事で必要となる知識である

例えば、機械学習の実装には業務特性、データ特性、利用目的等に応じて最適なアルゴリズムを使う。代表的なアルゴリズムには以下があります(既に古いかも…)

●教師あり学習
ランダムフォレスト
ロジスティック回帰
Elastic Net
サポートベクターマシン(SVM)
線形回帰
正則化
決定木
k近傍法(k-NN)
ナイーブベイズ
ニューラルネットワーク(NN)
パーセプトロン

●教師無し学習
クラスタリング
樹形図
K平均法(K-means)
DBSCAN
主成分分析
非負値行列因子分析(NMF)
トピックモデル(LDA)
自己組織化マップ(SOM)
アソシエーション分析


これらアルゴリズムを理解するには、数学や情報工学系の知識が必要不可欠。確かにIT開発人材を育てるという観点からは『実学』なんでしょう。


ただし、上述したアルゴリズム群では、既に訪れている『高度情報社会における責任概念の策定』は出来ません。

どのような責任概念の策定が必要となるのか?

AIによる自動運転などが技術的に可能になると同時に、事故発生時の判断や責任の所在といった倫理的問題がある。

例えば、AIを搭載した機械が事故を起こしたとき、その責任を取るのはその開発者なのか?使用者なのか?または、AI自体なのか?という問題が生じる。こうしたとき、政治的・法律的な責任論だけではなく、どのようなかたちであれば我々人間がより幸せになるのか?という倫理的・哲学的観点でのアプローチが必要だと思う

あくまで一例であるが、データ主権社会であり、イノベーティブな時代では、科学的・技術的な知見だけでは解決出来ない問題が浮き彫りとなるだろう

ゆえに、『哲学』は実社会で直接的に役立つ学問『実学』であると私は思う。