イヌの「できる」を増やすために 7 「飼い主さんのできる」ができる「環境」 | わんこも、そして飼い主さんも

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前回のエントリで「しつけの本には飼い主さんのことは書かれていない」ということを書きました。
むしろ「自分のことが書かれたしつけの本」がいつの間にか出版されて流通してたら、怖いですけど。


そして、前回のエントリの中で「しつけの悩みの発達段階」を書きました。
イヌの問題行動」というのは、あくまでも「飼い主さんが用意した環境の中で起こる、起こり続ける」と。
ですが、大抵の人は、目の前でイヌが「困ったこと」「悪いこと」をすると、「環境を変える」という風にはせずに、「イヌを変える」という方向に動くことが多いようです。


会社なんかではよくある光景ですよね?
誰かが失敗したとき、「そもそも、このシステムに問題があるんじゃないの?」と誰もが思っていても、なぜか出てくる改善策は「社員全員が高い意識を持ってやっていく」てなものになるっていう。


 「上司は『社員全員が高い意識を持って!』を唱えた!しかし何も起こらなかった」みたいな。


「環境が変わらないと、行動は変わらない」とは言いません。
「自分で注意しながら行動を変えていくことができる」という人もいます。
ですが「環境が変われば、行動は間違いなく変わる」ということは言えます。


これの良い例が、いわゆるトヨタの「カイゼン」ってやつですね。
結構有名なエピソードとして、アメリカのGMのある工場が、トヨタによる「カイゼン」の結果、まともに機能していないダメ工場だったのが、北米1の工場に変わったなんてのもありますね。


日本で最近増えてきた「環境へのアプローチ」としては、駅のホームドアでしょうか。
東京では、結構目にする回数が増えているような気がします。
どうしても、一定の割合でホームからの転落事故というのがあるそうです。
特に、視覚に障害のある方などにとっては、本当に命がけです。
そこで「視覚障害を持っている方は、頑張って意識して、落ちないように注意してください」なんて言ったところで、限界はあります。
でも、ホームドアがあれば、問題は一気に解決しますね。


 「問題そのものが起こらない」
 「問題が起こる回数や頻度が低い」


そんな環境を作ることができたら、「褒める」だけでもしつけは前に進みそうな感じがしますよね。

この「問題発生の確率を下げる工夫」という考え方を知らないと、「褒めるだけじゃうまくいかない」という意見が出るのもしょうがないかなと思います。
だって「問題が起こることが前提」となってる考え方ですもんね。
「褒めるだけじゃうまくいかない」って。


でも、そこで「環境」を変える。
どんな環境に変えるのか?
「飼い主さんが、できる環境」に変える。


じゃあ、何が「できる」環境?
「イヌを褒めることができる環境」に変えます。


多くの方は「いま、問題が起こり続ける環境」にいます。
そんな人に対して、闇雲に「褒めましょう褒めましょう」と言ったところで、なかなか難しいものがあります。


 「褒めたいのに、褒めることができない」


そんな飼い主さんも、たくさんいらっしゃいます。
だから「褒めることができる環境」を作る。


これまでにお伝えしてきた「イヌのできるを増やすため」の工夫や考え方は、実はそれがそのまま「飼い主さんがイヌを褒めることができるようになるため」の、工夫や考え方でもあったんです。


「行動」っていうのは、本当に「インタラクション(相互作用)」です。
イヌと飼い主さんが、お互いに影響を与えながら、影響を受けながら、行動が変化し、維持されていきます。
どちらか片方だけを見ていればいいってもんじゃありません。
「イヌ」と「飼い主」この両者を見ないと、難しかったりします。


 どうすれば「飼い主さんが、できる」ようになるのか?


ここを考えるのは、本当にいつも苦労するところでもあり、まだまだうまくいかないこともたくさんあるんですが、それでもやってみる価値はあると思うんですね。
でもってこういう考えから生まれるのが、「あなた(飼い主さん)に合ったしつけ方」なんだろうなぁと思います。


 「イヌと飼い主さんのできる」をサポートする。


それが、今の僕のお仕事です。


続きます