香里奈以外も......今月号の「GINGER」は他雑誌のモデルが勢ぞろい
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今月の表紙は、創刊号以来の表紙ご登場となる香里奈。実は創刊前に業界用に作られた"0号"の表紙も香里奈だったという、まさに根っからの「GINGER」っ子です。それより香里奈+パステルカラーって、どうしても「Ray」(主婦の友社)に見えてしまうのは私だけ? と思ってたら、「Ray」1月号の表紙もしっかりパステルピンクに囲まれた香里奈でした。今月は「大人可愛い」がテーマのせいか、表紙に並ぶ文字に「GINGER」特有の攻め感はあまり感じられません。とりあえず中身をチェック!
<トピック>
◎人気モデル25人「素顔のおしゃれ白書」
◎真冬の「大人可愛い!」100スタイリング
◎風水で開運!「美人顔」メイク
◎「お金がたまる!」秘密のアイデアノート
■優ちゃん髪切って良かったね
最近、長い髪をバッサリ切って、ショートヘアにした山田優。今月号もファッションページのあちこちに登場している彼女ですが、ロングと、ショートが混在している為、パラパラ見ていると髪が伸びたり縮んだりします。ここで感じるのは、「この雑誌的には髪切って良かったね」という事。ショートにしたことで「GINGER」が謳う「自立した女性」感が増した上に、タレントとしての固定イメージも払拭されたように思います。看板モデルとしての彼女の今後に、ますます期待!
■結局、付けまつげ
大特集は、「人気モデル25人『素顔のおしゃれ白書』」26ページです。ファッション誌でよく見るモデルのおすすめ品を紹介する内容ですが、そこは読者を飽きさせない為にはガッツを惜しまない「GINGER」。山田優、松島花、竹下玲奈、加賀美セイラ、加藤夏希、木下ココ......総勢25人というモデルの数に問答無用の迫力を感じます。
この特集の中で唯一気になったのが、「Popteen」モデルの樋口智子、小森純、菅野結以の3人がメイクでデカ目になっていくプロセスを解説した「ギャル誌モデルの驚きメイク術」。「ジェルライナーで際を引く」「リキッドライナーを重ねる」などプロセスは細かく解説しているのに、Afterの写真になると突然説明もなしに、大量の付けまつげがもっさりと上下に装着されています......。他のファッション誌でも、メイクのプロセスがカットされている事はよくありますが、もし「小悪魔ageha」(インフォレスト)ならこんな事態は起こりません。
■いきなり現れる田村淳に注意!
ファッション誌らしいページが続く中、ドーン! と突如現れるロンドンブーツ1号2号の田村淳のカッコつけ写真。いきなり現れるものだから、思わず「キモッ!」と全く心にもない事が、口からポロリしてしまいました。こちらは「田村淳の全貌」と題し、なんと8ページも割いております。インタビューの分量もかなりのボリュームで、田村淳の人となりがとってもよくわかる丁寧なページ作り。更に自宅まで公開しており、モデルルームのようなマンションの全部屋を見せてくれるという太っ腹っぷり!......すでにお気付きかと思いますが、笑いゼロです。なぜなら「GINGER」に笑いとか必要ないですから!
というわけで、連載中の茂木健一郎先生もあの事には触れず(かすかに期待してた)、「GINGER」でよく見られるモデルの変なポーズもさほど見当たらず、田村淳のページを除いては平和感が漂う1月号。6名という少ない編集者たちで作っているとは思えないほどに細かく練られ、読者を飽きさせない工夫が散りばめられた紙面は流石です。特に広告タイアップ記事のなじみっぷりは、女性誌の中でもトップクラスといえるでしょう。
そして、次号の表紙予告に「(秘)2010年、メディアの話題を独占しそうな超大型! 超美形! 新人アーティストが雑誌初登場します!!」との文字が。こんなにハードル上げるほどすごい人なのかしら。ヴァイオリニストの宮本笑里とかだったりして......。12月21日の次号発売が楽しみです。
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今月の表紙は、創刊号以来の表紙ご登場となる香里奈。実は創刊前に業界用に作られた"0号"の表紙も香里奈だったという、まさに根っからの「GINGER」っ子です。それより香里奈+パステルカラーって、どうしても「Ray」(主婦の友社)に見えてしまうのは私だけ? と思ってたら、「Ray」1月号の表紙もしっかりパステルピンクに囲まれた香里奈でした。今月は「大人可愛い」がテーマのせいか、表紙に並ぶ文字に「GINGER」特有の攻め感はあまり感じられません。とりあえず中身をチェック!
<トピック>
◎人気モデル25人「素顔のおしゃれ白書」
◎真冬の「大人可愛い!」100スタイリング
◎風水で開運!「美人顔」メイク
◎「お金がたまる!」秘密のアイデアノート
■優ちゃん髪切って良かったね
最近、長い髪をバッサリ切って、ショートヘアにした山田優。今月号もファッションページのあちこちに登場している彼女ですが、ロングと、ショートが混在している為、パラパラ見ていると髪が伸びたり縮んだりします。ここで感じるのは、「この雑誌的には髪切って良かったね」という事。ショートにしたことで「GINGER」が謳う「自立した女性」感が増した上に、タレントとしての固定イメージも払拭されたように思います。看板モデルとしての彼女の今後に、ますます期待!
■結局、付けまつげ
大特集は、「人気モデル25人『素顔のおしゃれ白書』」26ページです。ファッション誌でよく見るモデルのおすすめ品を紹介する内容ですが、そこは読者を飽きさせない為にはガッツを惜しまない「GINGER」。山田優、松島花、竹下玲奈、加賀美セイラ、加藤夏希、木下ココ......総勢25人というモデルの数に問答無用の迫力を感じます。
この特集の中で唯一気になったのが、「Popteen」モデルの樋口智子、小森純、菅野結以の3人がメイクでデカ目になっていくプロセスを解説した「ギャル誌モデルの驚きメイク術」。「ジェルライナーで際を引く」「リキッドライナーを重ねる」などプロセスは細かく解説しているのに、Afterの写真になると突然説明もなしに、大量の付けまつげがもっさりと上下に装着されています......。他のファッション誌でも、メイクのプロセスがカットされている事はよくありますが、もし「小悪魔ageha」(インフォレスト)ならこんな事態は起こりません。
■いきなり現れる田村淳に注意!
ファッション誌らしいページが続く中、ドーン! と突如現れるロンドンブーツ1号2号の田村淳のカッコつけ写真。いきなり現れるものだから、思わず「キモッ!」と全く心にもない事が、口からポロリしてしまいました。こちらは「田村淳の全貌」と題し、なんと8ページも割いております。インタビューの分量もかなりのボリュームで、田村淳の人となりがとってもよくわかる丁寧なページ作り。更に自宅まで公開しており、モデルルームのようなマンションの全部屋を見せてくれるという太っ腹っぷり!......すでにお気付きかと思いますが、笑いゼロです。なぜなら「GINGER」に笑いとか必要ないですから!
というわけで、連載中の茂木健一郎先生もあの事には触れず(かすかに期待してた)、「GINGER」でよく見られるモデルの変なポーズもさほど見当たらず、田村淳のページを除いては平和感が漂う1月号。6名という少ない編集者たちで作っているとは思えないほどに細かく練られ、読者を飽きさせない工夫が散りばめられた紙面は流石です。特に広告タイアップ記事のなじみっぷりは、女性誌の中でもトップクラスといえるでしょう。
そして、次号の表紙予告に「(秘)2010年、メディアの話題を独占しそうな超大型! 超美形! 新人アーティストが雑誌初登場します!!」との文字が。こんなにハードル上げるほどすごい人なのかしら。ヴァイオリニストの宮本笑里とかだったりして......。12月21日の次号発売が楽しみです。
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マンガがドラマ化される理由~スポ根としての女子まんが序論(1) ~
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――幼いころに夢中になって読んでいた少女まんが。一時期離れてしまったがゆえに、今さら読むべき作品すら分からないジプシーたちに、女子まんが研究家・小田真琴が"正しき女子まんが道"を指南します!
近ごろでは猫も杓子もまんがをドラマ化、映画化していて、中には『オトメン』のような企画もの丸出しのちょっとアレなまんがまでもがドラマ化される始末です。まんが界にとって商業的には喜ばしいこととは言え、例えば『リアル・クローズ』(関西テレビ系)のような惨状を目の当たりにするにつけ、一まんが好きとしては悲しい思いをすることも格段に増えました。
なぜまんがは、こんなにも映像化されるようになったのでしょうか? ひとつには映像界の脚本不足が挙げられます。かつて「トレンディドラマ」と呼ばれるジャンルを席巻した売れっ子脚本家たちは、今やすっかりエッセイストやプロデューサーとして悠々自適の生活を送り、以後新たな才能が育ってきていない業界の現状があります。そして第二にまんがの映像化が立て続けにヒットしたこと。あれは3~5年ほど前でしょうか、『NANA』『のだめカンタービレ』『ハチミツとクローバー』の映画、ドラマ、アニメがある一時期にまとまってヒットしたことがありました。はたして柳の下には何匹のどじょうがいるのでしょう?
今クールだけでも『オトメン』『リアル・クローズ』『深夜食堂』『JIN 仁』『マイガール』と、5本ものまんがを原作とするドラマがあり、また『君に届け』がアニメ化されます。そうした中、近年映像化されるまんがには、女性向けのまんが、特に「少女まんが」よりも上の年代を狙った「女子まんが」とでも言うべき作品群が、数多く含まれているのが特徴です。これは、古い言葉で言うならばいわゆる「F1」層をターゲットとするのに「女子まんが」が最適なコンテンツであるからです。
さらに言うならば、あまりご存じないかもしれませんが、東村アキコ先生がおっしゃるとおり「今って、マンガ界が一番おもしろいことになっている時代」なんです(「FRaU」2009年9月号)。女性向けまんがは、かつてのようにおめめキラキラ、お花畑で「いつか王子様が」なんて世界ではもはやありません。酸いも甘いも知り尽くした大人の女性のためのエンタテインメントであり、また男性読者をも魅了するストーリー性と笑いとを兼ね備えています。
キーワードは「スポ根」。女子まんがは、スポ根化することによってかつてない普遍性を獲得したのです。その先鞭をつけたのが、ほかならぬ安野モヨコ先生の『ハッピー・マニア』でした。
そもそも少女まんがにおけるスポ根といえば、『アラベスク』や『エースをねらえ!』、そして槇村さとる先生のダンス系作品群(『愛のアランフェス』『ダンシング・ゼネレーション』...etc.)に代表されるように、「強さ」と同時に「美しさ」を要求するのが最大の特徴です。また、男性向けスポ根においては添え物に過ぎなかった色恋沙汰のウエイトがぐんと上がって、「恋とバレエ」「恋とテニス」「恋とダンス」といったように、恋以外に打ち込む「何か」があって、しかしやはり恋があるからこそ頑張ってしまう少女たちの姿が描かれていました。
ところが『ハッピー・マニア』において安野先生は、恋そのものを「スポ根」として描いたのです。確かに恋は「美しさ」を要求するものではありますが、恋とセットになるべき「何か」はそこに存在せず、ただひたすら恋、恋、恋。もはや恋は絶対的な独立する要素ではなく、スポーツの一種となりました。しかしそれは決して安野先生が恋を貶めたわけではなく、その根源にある、女子の衝動を発見したからです。それが「情熱」です。
もうひとつ、現在の女子まんが界の隆盛に大きな影響を及ぼしている作品が、ご存じ井上雄彦先生の『スラムダンク』です。「週刊少年ジャンプ」の全盛期を支えたこの不朽の名作は、火を見るよりも明らかに「少年まんが」ではあります。しかし、現在の女子まんが界をけん引する作家の作品に、数多く『スラムダンク』の痕跡が見え隠れするのは一体どうしたことでしょうか?
共に同人誌出身の作家、羽海野チカ先生とよしながふみ先生は、コミケではいちばん最後まで『スラムダンク』を描き続けていた2人です(よしながふみ『あのひととここだけのおしゃべり』より)。「マンガ大賞2009」受賞作家・末次由紀先生は、かつて『スラムダンク』の盗作騒動で辛酸を舐め、そしていま「末次版スラムダンク」とも言うべき力作『ちはやふる』で大ブレイクを果たしました。
少年まんがの側から見れば、『スラムダンク』は史上最多の女性読者を獲得した、エポックメイキングな作品でありました。おそらく『キャプテン翼』の頃からなんとなく腐女子マーケットを意識していた編集部は、『スラムダンク』の成功によって腐女子サイドに大きく舵を切り、今や読者の半数が女性だと言われています。
『スラムダンク』の一体なにが、数多くの女性の心をつかんだのか。ストーリーテリングと圧倒的な画力は、誰もが認める『スラムダンク』の大きな魅力ではあります。しかしそれ以上に鍵となるのが、「大いなる目的の不在」と、それによって際だつ「個人と個人の関係性」です。
次回からは「スラムダンク」と「ハッピー・マニア」に関して、「女子まんが」という視点から、より細かな分析を加えていきたいと思います。
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近ごろでは猫も杓子もまんがをドラマ化、映画化していて、中には『オトメン』のような企画もの丸出しのちょっとアレなまんがまでもがドラマ化される始末です。まんが界にとって商業的には喜ばしいこととは言え、例えば『リアル・クローズ』(関西テレビ系)のような惨状を目の当たりにするにつけ、一まんが好きとしては悲しい思いをすることも格段に増えました。
なぜまんがは、こんなにも映像化されるようになったのでしょうか? ひとつには映像界の脚本不足が挙げられます。かつて「トレンディドラマ」と呼ばれるジャンルを席巻した売れっ子脚本家たちは、今やすっかりエッセイストやプロデューサーとして悠々自適の生活を送り、以後新たな才能が育ってきていない業界の現状があります。そして第二にまんがの映像化が立て続けにヒットしたこと。あれは3~5年ほど前でしょうか、『NANA』『のだめカンタービレ』『ハチミツとクローバー』の映画、ドラマ、アニメがある一時期にまとまってヒットしたことがありました。はたして柳の下には何匹のどじょうがいるのでしょう?
今クールだけでも『オトメン』『リアル・クローズ』『深夜食堂』『JIN 仁』『マイガール』と、5本ものまんがを原作とするドラマがあり、また『君に届け』がアニメ化されます。そうした中、近年映像化されるまんがには、女性向けのまんが、特に「少女まんが」よりも上の年代を狙った「女子まんが」とでも言うべき作品群が、数多く含まれているのが特徴です。これは、古い言葉で言うならばいわゆる「F1」層をターゲットとするのに「女子まんが」が最適なコンテンツであるからです。
さらに言うならば、あまりご存じないかもしれませんが、東村アキコ先生がおっしゃるとおり「今って、マンガ界が一番おもしろいことになっている時代」なんです(「FRaU」2009年9月号)。女性向けまんがは、かつてのようにおめめキラキラ、お花畑で「いつか王子様が」なんて世界ではもはやありません。酸いも甘いも知り尽くした大人の女性のためのエンタテインメントであり、また男性読者をも魅了するストーリー性と笑いとを兼ね備えています。
キーワードは「スポ根」。女子まんがは、スポ根化することによってかつてない普遍性を獲得したのです。その先鞭をつけたのが、ほかならぬ安野モヨコ先生の『ハッピー・マニア』でした。
そもそも少女まんがにおけるスポ根といえば、『アラベスク』や『エースをねらえ!』、そして槇村さとる先生のダンス系作品群(『愛のアランフェス』『ダンシング・ゼネレーション』...etc.)に代表されるように、「強さ」と同時に「美しさ」を要求するのが最大の特徴です。また、男性向けスポ根においては添え物に過ぎなかった色恋沙汰のウエイトがぐんと上がって、「恋とバレエ」「恋とテニス」「恋とダンス」といったように、恋以外に打ち込む「何か」があって、しかしやはり恋があるからこそ頑張ってしまう少女たちの姿が描かれていました。
ところが『ハッピー・マニア』において安野先生は、恋そのものを「スポ根」として描いたのです。確かに恋は「美しさ」を要求するものではありますが、恋とセットになるべき「何か」はそこに存在せず、ただひたすら恋、恋、恋。もはや恋は絶対的な独立する要素ではなく、スポーツの一種となりました。しかしそれは決して安野先生が恋を貶めたわけではなく、その根源にある、女子の衝動を発見したからです。それが「情熱」です。
もうひとつ、現在の女子まんが界の隆盛に大きな影響を及ぼしている作品が、ご存じ井上雄彦先生の『スラムダンク』です。「週刊少年ジャンプ」の全盛期を支えたこの不朽の名作は、火を見るよりも明らかに「少年まんが」ではあります。しかし、現在の女子まんが界をけん引する作家の作品に、数多く『スラムダンク』の痕跡が見え隠れするのは一体どうしたことでしょうか?
共に同人誌出身の作家、羽海野チカ先生とよしながふみ先生は、コミケではいちばん最後まで『スラムダンク』を描き続けていた2人です(よしながふみ『あのひととここだけのおしゃべり』より)。「マンガ大賞2009」受賞作家・末次由紀先生は、かつて『スラムダンク』の盗作騒動で辛酸を舐め、そしていま「末次版スラムダンク」とも言うべき力作『ちはやふる』で大ブレイクを果たしました。
少年まんがの側から見れば、『スラムダンク』は史上最多の女性読者を獲得した、エポックメイキングな作品でありました。おそらく『キャプテン翼』の頃からなんとなく腐女子マーケットを意識していた編集部は、『スラムダンク』の成功によって腐女子サイドに大きく舵を切り、今や読者の半数が女性だと言われています。
『スラムダンク』の一体なにが、数多くの女性の心をつかんだのか。ストーリーテリングと圧倒的な画力は、誰もが認める『スラムダンク』の大きな魅力ではあります。しかしそれ以上に鍵となるのが、「大いなる目的の不在」と、それによって際だつ「個人と個人の関係性」です。
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摂食障害まで!? 『愉快なシーバー家』の知られざる制作秘話
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――海外生活20年以上、見てきたドラマは数知れず。そんな本物の海外ドラマジャンキーが新旧さまざまな作品のディティールから文化論をひきずり出す!
「パネルDジャパン」という言葉をご存知だろうか。1950年代から1960年代にかけて「敗戦した日本人の反米感情を押さえる」「日本人が米国文化を肯定するようになる」ことを目的に実行された、アメリカ政府の心理戦略のことである。そして、この戦略にはアメリカで制作された数多くのテレビドラマやコメディーが使用されていた。
日本で制作されるテレビ番組がまだまだ少なかったこの時期、アメリカのドラマやコメディーは「ごく自然に」日本に輸出され、ゴールデンタイムに放送されるようになった。誰もが楽しめるエンターテイメントを通して、アメリカの自由な文化や風習、民主主義、正義感の強い人々、豊かな消費社会などを日本人に見せつけ、「アメリカは凄い」「かなわない」「アメリカ人のようになりたい」と洗脳させることを目指したのである。
戦争ものやスパイもの、SFやメロドラマ、西部劇など、さまざまなカテゴリーのテレビドラマが日本に輸出/放送されたが、その中で最も効果的だったのは、ファミリー・シットコムだとされている。幅広い年齢層が楽しめる「笑いあり、涙あり」の単純明快なストーリーが魅力のファミリー・シットコムには、広い庭つきの一軒家、かっこいいアメ車、便利な電化製品、豊富な食料、対等な家族関係など、日本人が憧れ、目標にしやすい要素が散りばめられていたからである。
このように、現在の日本のライフスタイルや生活環境を作ったのは、まさしくアメリカ・ドラマだったといっても過言ではない。だが同時に、ファミリー・シットコム作品は、アメリカ人にとっても憧れであり、「目標とすべき理想的なアメリカン・ファミリー」そのものだった。
「理想」を描き続け人気を集めていたファミリー・シットコムだが、1985年、「理想的なアメリカン・ファミリーとは何か」「ファミリー・シットコムはこのままでよいのか」とアメリカの5大ネットワークに問いかけたドラマがスタートした。日本でも高い人気を誇った『グローイング・ペインズ 愉快なシーバー家』である。
ニューヨーク郊外の住宅地ロングアイランドに住む、共働きの中流家庭で繰り広げられる「笑いあり」「涙あり」のファミリー・コメディーで、原題である「成長痛(グローイング・ペインズ)」のような思春期の子供たちが抱える「ちょこちょこした」悩みや問題、そしてそれを家族で乗り越える姿が評判となり、大ヒットした。
大事件が起こるわけでも、ドラマチックな展開があるわけでもないが、「クリーンで理想的な共稼ぎ家庭」が描かれていると幅広い層の視聴者を獲得。見ていて安心できる内容の作品であり、また高視聴率番組であることから、当時売り出し中であった若手俳優や女優らが次々とゲスト出演するようになり、後々ハリウッドで大活躍することになるレオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピット、ヒラリー・スワンク、そしてジェニー・ガース、マシュー・ペリー、ブライアン・グリーンも登場している。
■「等身大の家族」を描くために、出演者に強いられた問題
しかし、番組の成功とはうらはらに裏舞台では様々な問題が生じていた。
長女役のトレイシー・ゴールドは、思春期の成長と共に増加する体重に悩み摂食障害に陥っていた。しかし、ドラマで笑いをとるために「太ってる」「彼氏がいない」とからかわれ続けていたため重度の拒食症になり、入院するために番組を降板。以降、TVコメディーでは思春期の女性に対しての体重ネタは控えられるようになり、その後放送された『フルハウス』で長女役を演じたキャンディス・キャメロンは「(体重に関しては)みんな、腫れ物に触るようだった」と語っている。
そのキャンディスの実兄で、シーバー家の長男役として大ブレイクしたカーク・キャメロンは、シーズンが進むにつれ「自分が演じている役は、あまりにもモラルに欠如している」と脚本家やプロデューサー相手に猛反発するようになった。敬虔な福音主義のクリスチャンであるがゆえ、若者の性的描写を番組に取り入れることに関して頑固として反発したのだが、「時代は等身大のアメリカン・ファミリーを求めている」とプロデューサーらも反発。ネットワークは頭を悩ませ、譲らないカークに怒り番組を去るスタッフまで出る騒ぎとなった。
「ファミリー・シットコムの決定版」とまで称されるようになった『グローイング・ペインズ 愉快なシーバー家』だが、以降「夫婦、子供みんなが幸せな理想的な家庭」を描いたファミリー・シットコムは5大ネットワークから子供向け専門局であるディズニー・チャンネルへとシフトするようになる。そして、代わりに誰もが共感できる「等身大」の「家族の誰もが問題を抱えている」アメリカン・ファミリー・ドラマ/コメディーが、ネットワークで放送されるようになったのだ。
日本への心理戦略に抜群の効果を発揮したファミリー・シットコムだが、理想はあくまで理想に過ぎなかったのかもしれない。そういった意味でも、当時10代後半だったカークの奮闘により、ギリギリの線で「モラル的な理想の家庭像」が死守された『グローイング・ペインズ 愉快なシーバー家』は貴重な作品なのである。
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――海外生活20年以上、見てきたドラマは数知れず。そんな本物の海外ドラマジャンキーが新旧さまざまな作品のディティールから文化論をひきずり出す!
「パネルDジャパン」という言葉をご存知だろうか。1950年代から1960年代にかけて「敗戦した日本人の反米感情を押さえる」「日本人が米国文化を肯定するようになる」ことを目的に実行された、アメリカ政府の心理戦略のことである。そして、この戦略にはアメリカで制作された数多くのテレビドラマやコメディーが使用されていた。
日本で制作されるテレビ番組がまだまだ少なかったこの時期、アメリカのドラマやコメディーは「ごく自然に」日本に輸出され、ゴールデンタイムに放送されるようになった。誰もが楽しめるエンターテイメントを通して、アメリカの自由な文化や風習、民主主義、正義感の強い人々、豊かな消費社会などを日本人に見せつけ、「アメリカは凄い」「かなわない」「アメリカ人のようになりたい」と洗脳させることを目指したのである。
戦争ものやスパイもの、SFやメロドラマ、西部劇など、さまざまなカテゴリーのテレビドラマが日本に輸出/放送されたが、その中で最も効果的だったのは、ファミリー・シットコムだとされている。幅広い年齢層が楽しめる「笑いあり、涙あり」の単純明快なストーリーが魅力のファミリー・シットコムには、広い庭つきの一軒家、かっこいいアメ車、便利な電化製品、豊富な食料、対等な家族関係など、日本人が憧れ、目標にしやすい要素が散りばめられていたからである。
このように、現在の日本のライフスタイルや生活環境を作ったのは、まさしくアメリカ・ドラマだったといっても過言ではない。だが同時に、ファミリー・シットコム作品は、アメリカ人にとっても憧れであり、「目標とすべき理想的なアメリカン・ファミリー」そのものだった。
「理想」を描き続け人気を集めていたファミリー・シットコムだが、1985年、「理想的なアメリカン・ファミリーとは何か」「ファミリー・シットコムはこのままでよいのか」とアメリカの5大ネットワークに問いかけたドラマがスタートした。日本でも高い人気を誇った『グローイング・ペインズ 愉快なシーバー家』である。
ニューヨーク郊外の住宅地ロングアイランドに住む、共働きの中流家庭で繰り広げられる「笑いあり」「涙あり」のファミリー・コメディーで、原題である「成長痛(グローイング・ペインズ)」のような思春期の子供たちが抱える「ちょこちょこした」悩みや問題、そしてそれを家族で乗り越える姿が評判となり、大ヒットした。
大事件が起こるわけでも、ドラマチックな展開があるわけでもないが、「クリーンで理想的な共稼ぎ家庭」が描かれていると幅広い層の視聴者を獲得。見ていて安心できる内容の作品であり、また高視聴率番組であることから、当時売り出し中であった若手俳優や女優らが次々とゲスト出演するようになり、後々ハリウッドで大活躍することになるレオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピット、ヒラリー・スワンク、そしてジェニー・ガース、マシュー・ペリー、ブライアン・グリーンも登場している。
■「等身大の家族」を描くために、出演者に強いられた問題
しかし、番組の成功とはうらはらに裏舞台では様々な問題が生じていた。
長女役のトレイシー・ゴールドは、思春期の成長と共に増加する体重に悩み摂食障害に陥っていた。しかし、ドラマで笑いをとるために「太ってる」「彼氏がいない」とからかわれ続けていたため重度の拒食症になり、入院するために番組を降板。以降、TVコメディーでは思春期の女性に対しての体重ネタは控えられるようになり、その後放送された『フルハウス』で長女役を演じたキャンディス・キャメロンは「(体重に関しては)みんな、腫れ物に触るようだった」と語っている。
そのキャンディスの実兄で、シーバー家の長男役として大ブレイクしたカーク・キャメロンは、シーズンが進むにつれ「自分が演じている役は、あまりにもモラルに欠如している」と脚本家やプロデューサー相手に猛反発するようになった。敬虔な福音主義のクリスチャンであるがゆえ、若者の性的描写を番組に取り入れることに関して頑固として反発したのだが、「時代は等身大のアメリカン・ファミリーを求めている」とプロデューサーらも反発。ネットワークは頭を悩ませ、譲らないカークに怒り番組を去るスタッフまで出る騒ぎとなった。
「ファミリー・シットコムの決定版」とまで称されるようになった『グローイング・ペインズ 愉快なシーバー家』だが、以降「夫婦、子供みんなが幸せな理想的な家庭」を描いたファミリー・シットコムは5大ネットワークから子供向け専門局であるディズニー・チャンネルへとシフトするようになる。そして、代わりに誰もが共感できる「等身大」の「家族の誰もが問題を抱えている」アメリカン・ファミリー・ドラマ/コメディーが、ネットワークで放送されるようになったのだ。
日本への心理戦略に抜群の効果を発揮したファミリー・シットコムだが、理想はあくまで理想に過ぎなかったのかもしれない。そういった意味でも、当時10代後半だったカークの奮闘により、ギリギリの線で「モラル的な理想の家庭像」が死守された『グローイング・ペインズ 愉快なシーバー家』は貴重な作品なのである。
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