また一人、アルゴリズムの檻に脳を焼かれた人間が、現実世界の地雷を派手に踏み抜いて自爆しました。
大手回転寿司チェーン「はま寿司」で、流れてくるお寿司に洗剤を振りかけるという悪質な迷惑動画。
さらに、同じ人物がハンバーガーに同様の行為をしてトイレに流すという意味不明な奇行までTikTokに投稿していたことが発覚し、猛烈な炎上が起きています。
当然、はま寿司側は激怒し、店舗を特定を急ぎ警察への相談を含めた厳正な法的措置を進める姿勢を示しているとのこと。
世間はこれを「モラルの低下」や「ネットリテラシーの不足」として片付けようとしますが、本質は違います。
これは、単なる「悪ふざけ」や「承認欲求」という言葉では説明がつかない、現代のデジタル環境が作り出した「脳のバグ」の典型例なのです。
1. 「反発が起きる計算」はできるのに、自分の破滅は見えない
この事象で最も歪んでおり、かつ興味深いのは、犯行に及んだ人物は決して「何も考えていなかったわけではない」という点です。
「食べ物を粗末にする」「衛生を脅かす」という行為が、人間の生存や倫理の根本を揺るがし、世間から最大級の怒りと反発(バックラッシュ)を買うだろう、という「計算」自体は完璧にできているのです。
だからこそ、その動画を撮ってアップした。
では、なぜ実行してしまうのか。
普通の人間の脳であれば、ここで因果律のブレーキが働きます。
「大きな反発が起きる(原因)」 ➔ 「だから警察沙汰になり、人生が破滅する(未来の予測)」 ➔ 「絶対にやってはいけない(ブレーキ)」
しかし、インプレッションという名の麻薬にハックされた脳内では、この回路が次のように完全にショートしています。
「大きな反発が起きる(原因)」 ➔ 「ということは、ものすごい数字(アクセス)が稼げる(結果)」 ➔ 「よし、実行だ(脊髄反射)」
彼らにとって、画面の向こうから浴びせられる「何万回もの冷笑や怒り」は、脳の報酬系においてはすべて「バズという名の喝采」へと誤認・変換されてしまいます。
「他人がどう激怒するか」という点(タスク)の計算はできるのに、それによって社会との接点を永久に失い、知性の最後の防衛線である誠実さを手放した自分が、3ヶ月後・数年後にどうやって生きていくのかという線(未来の文脈)の予測能力が完全に退化しているのです。
2. 自分と「リアルな社会」との接続の実感がない
なぜ、ここまで自分の人生に影響があると思えないのか。
彼らには、「自分とリアルな社会が、生々しく地続きで繋がっている」という身体的な手触りが致命的に欠落しているからです。
現代のネット空間は、何か失敗したり嫌われたりしても、アカウントを切り替えれば一瞬で「リセット(初期化)」が可能です。
スマホのアプリがフリーズしたら、タスクマネージャーで強制終了すればいい。
彼は、はま寿司のレーンに洗剤をぶっかけた時も、「動画の撮影を止め、アプリを閉じれば、この出来事もリセットできる」というスマホ世界の全能感をそのまま現実空間に持ち込んでいました。
右から左へと次々に寿司が流れていく回転レーンは、親指一本でスワイプするスマホの画面(タイムライン)と完全に脳内でリンクしています。
彼らにとって、目の前のレーンはリアルな店舗ではなく、「ただの液晶画面の延長(難易度の低いチョロいゲームステージ)」に過ぎなかったのです。
しかし、現実の社会はスワイプして消せるような軽いプログラムではありません。
警察や法律、巨額の損害賠償という、「永久にリセットできない泥臭い因果律」で動いています。
「自分は安全なコックピットから社会を冷笑している」と思っていたサイボーグが、画面の『外側』にある現実の防衛反応(逮捕や賠償請求)に直面したとき、初めて自分が踏んだ地雷の本当の大きさに気づいてフリーズするのです。
3. 「思ったより年長に見える」という本当の恐怖
もう一つ、私たちが最も震え上がるべきなのは、ネット上で「若者」と報じられつつも、その外見が「思ったより年を取っていそう(大人の年齢に見える)」という点です。
「自分たちの若い頃はSNSがなかっただけで、今の若者と中身は変わらない」と大人がしたり顔で語る言い訳は、もう通用しません。
炎上に年齢など関係ありません。
私たちは全員、ある同じ病──現代の超高速なデジタル環境によって「未来を想像するOS」を上書きされ、破壊される病に侵されているのです。
たとえ大人のスペック(見た目や処理能力)を持っていても、日々「数字や効率」ばかりを追い求める環境に身を置き、過度なプレッシャーや評価の恐怖(査定恐怖)に晒され続けていると、人間の脳は一歩引いて未来を想像する力を失っていきます。
冷笑しているあなたも、実は予備軍かもしれない。
大人の炎上は、築き上げてきた社会的立場や組織そのものを巻き込むため、より致命的で、より救いようがありません。
■ 想像力を失った相手に、大人ができること
事業者(はま寿司)側には一切の非がないにもかかわらず、ある日突然、一人の理不尽なテロによって、これまで築き上げてきたブランドの信用を破壊されてしまう。
気の毒という言葉だけでは足りないほどの不条理な経営リスクを常に背負わされています。
大多數の善良な顧客の利益を最優先に守るためにも、事業者が取るべき対策は「モラル教育」などという生ぬるい解決策ではありません。
はま寿司が今回毅然と動いているように、 「脅しではない。一線を越えた人間には、法律に基づいた現実の地獄(ペナルティ)を100%の確率で淡々と執行する」 という絶対的な防衛のコードを常に実行していくことだけです。
「このゲーム(店舗)でバグ(テロ)を起こしたら、人生そのものが強制終了(アンインストール)される」という圧倒的な現実の恐怖を突きつけることだけが、脳の狂ってしまったサイボーグに対する唯一のブレーキになります。
想像力を失った相手にできることと言ったら、もうそれくらいしかないのです。