​

​彼女の名はラヴィナ、花の女神の娘であり、癒しの力を持つとされる。


かつては、彼女が手をかざすだけで、どんな枯れ木も花を咲かせ、傷ついた生き物は一瞬で回復した。


しかし、彼女の心は、自分を「癒しの道具」としてしか見ない神々の世界に、疲れ果てていた。


彼女を愛していたのは、月の精霊である白狼のフェンリスだけだった。彼は彼女の自由を願い、陰ながら彼女を守り続けていた。


​物語は、ラヴィナが彼女の心を支配しようとする冷酷な戦の神のもとへと嫁がされる直前から始まる。


彼女は華麗なピンク色のレヘンガを纏い、黄金の刺繍がきらめいていた。しかし、その内面は絶望に沈んでいた。

​

婚礼の朝、ラヴィナは宮殿の庭園で、翼を撃たれた一羽の青い小鳥を見つけた。

その傷は、彼女の癒しの力さえ及ばない、呪われた魔力を帯びていた。


ラヴィナは小鳥を両手でそっと包み込み、その小さな命のために、自分の全生命力を、そして彼女の心を、その手に込めた。

それは彼女の初めての、そして最後の、真の意味での「愛」の癒しだった。


しかし、彼女の力が限界を超えたとき、彼女の体から血が流れ、それはドレスを染めた。彼女の癒しの力は、彼女自身の命を削り取っていたのだ。

​

その瞬間、月の影からフェンリスが現れた。

彼は傷ついたラヴィナを見て、彼女の苦しみが彼女自身が望んだ「愛」の結果であることを理解した。

彼は彼女を抱擁し、その命を、自分の一部として、月の光に変えて吸収することを選んだ。

彼は彼女を癒すのではなく、彼女を自分の一部として永生させることを決意した。

​

ラヴィナの体は、月の光のように透明になり、フェンリスの体と融合していった。


彼女のレヘンガの上の血は、フェンリスの月の光によって、より深く、より永続的な愛の象徴へと変容した。


そして、ラヴィナの手から小鳥が飛び立ち、小鳥の呪いは解け、その翼は月の光を帯びて青く輝いていた。

​

ラヴィナはもう一人の、花と月の女神、灰の月の花嫁として、フェンリスの一部となった。


彼らが共にいる場所には、花々が月の光に照らされて咲き誇り、その中から彼女の血の跡が、新しい命の源として、絶えず湧き出るという。