内診が終わった後、体勢を整えいきみかたを
教えてもらう。
バーを握っておしりの力をゆるめて(っていうのが
難しかったけど)、足をふんばる。
助産師さんが
「ご主人呼びましょうか」というので
「お願いします」と答えた。

夫が分娩室に入ってきて私の肩に手を置いてくれた。
陣痛の波がきたら大きく深呼吸して体を整えてから
大きくいきむ。その時に目は閉じずに顎をひいて
赤ちゃんの出口のほうをみるように。
そして声を出さないで(これはもっと難しかった)
押し出すようにいきむ。苦しくなったらそのままの
状態で息を吐き切ってもう一度息を吸っていきむ。
この休憩をせずに2,3回連続していきむっていうのが
大変だったけど、まるでびくともしない岩を押してる
ようにゆったんの進んでくる気配はない。

先生からも
「この子はかなり大きいからもちろん簡単に
出てはこない。大変だと思うけど頑張りましょう。」と
言われる。
何度いきんでも状況が変わらないことに私も
焦りを感じ、一体自分の何がいけないのかと
言われたことをもう一度頭の中で整理しようと
するのだけども、波は容赦なくやってくるので
そのたびにいきみながら自分のいきみかたや
タイミングに問題があるのかと不安になって
何か間違えてるのではないかと半分
パニックになってきた。

夫は先生や助産師さんの指導を聞いて
ある程度把握したら私のそばで一緒に
指示を出してくれた。
うなり声をあげてたら
「声を出さないで。」
「吐き切って」
「吸って」
と細かく言ってくれたので言われるままに
従った。
休憩で息を整えている間は手を握ってくれていた。
それが本当になによりも支えになっていた。

もう何回いきんだのかわからない。相当な
回数いきんだのにどうして出て来ないんだろう?と
さらに不安が増す。
私も疲労してきてしっかり息を吸いきれなくなり、
酸素マスクをつけられた。
休憩中に水分をとるように言われたけど、もうそんな
力さえ残ってなかった。口をしめらす程度にしか
水も吸えない。

それからさらにありったけの力を振り絞って
ようやく「頭がみえてきた」と先生が言うのだけれど
最後のひとふんばりがどうしても出来ずに私が
力尽きてしまい、どうしても出て来ない。
とにかく大きいのと私の産道がかたいのとで
赤ちゃんの頭もじりじり、じわじわとしか進んで
来れてないという。

このままだと赤ちゃんも疲れてくるし、危険な
状態になっていくので吸引分娩をしようと思うと
先生がいう。そしてそれでも出て来なければ
帝王切開になると言われて、心の中で
「ありえなーーーーーい!!!!」と叫んでしまう。
ここまで苦しんだのだから絶対に下から産む!!と
自分を燃え立たせた。
先生もあと自力で2,3回頑張ってみてというので
頑張ってみたけれど、いいところまできては
力尽きてしまう。
「もう赤ちゃんの頭が見えてるよ」というので
私も頑張ったし、先生も粘ってみてくれたけど、
どうしてもそこから先に進めなくて、ついに吸引に
切り替えることになった。
吸引となると会陰切開をしないといけなくなる。
これまで切らずに済むようにとマッサージしたし、
先生も柔らかくていい状態だと言ってたので
よかったと思ってたのに、結局切開・・・。
まあ、計画どおりにはいかないものです。
吸引なので通常よりもおおきめに切られたっぽい。
そうしないと裂傷がひどくなるらしい。
局部麻酔されたので切られたのはさっぱり
わからなかった。

先生が吸引の準備で分娩室をいったん出た。
それからしばらくしてもう一人見たことのない男の
先生が一緒に入ってきた。
助手の先生??と思っていたら近くの個人産院の
先生でたまたまぶらりと立ち寄っただけだという。
もう診察時間は終わってる時間帯だったので
ちょっと遊びにきたという感じだったらしい。
そしたら私のこの状況があって、偶然にも
アシストしてもらえることになったという。
助産師さんも
「先生いつのまに呼んだんだろう」と不思議に
思ったらしいけど、本当に偶然だったらしい。
本当にすごいタイミングで現れてくれた。
一回の吸引で出て来なかったら助手の先生が
お腹の上から押し出すサポートをするという。
先生が赤ちゃんの頭に傷つけないよう
パッドをつける作業をしたのだけれど、
もうそれはすごく痛くてこれ以上は勘弁して
くださいって感じだった。
どんな装置かさっぱりわからなかったけど、
いきみと同時に吸引が始まった。
で、実際には1回ではでてこなかった。
もうこれ以上は踏ん張れないというところまで
長くいきんだ。
それでも出て来なかったので、本当に永遠に
赤ちゃんが出て来ないんじゃないかっていう気分に
なってしまった。
気が遠くなりそうな不安を感じながら休憩をする。
2回目では先生が吸引し、助手がお腹を押し、
私がいきむ。この3つのタイミングがしっかり
あわないと出て来れないというので一大事だ。
夫や助産師さんが横で声かけしてくれるのを
頼りにもうこれ以上は無理っていうほどの渾身の
力をふりしぼって、いつもは力尽きてしまうところを
限界を超えていきみ続けた。
ここで力尽きたら帝王切開だと言い聞かせながら
必死にいきむ。手も足も口もガタガタに震えながら
いきみ続けた。
「先生がでてきてるよ、もうすぐだよ」という。
しばらくすると焼けるように熱い感覚がやってきた。
さらに私もいきみつづける。まるで25mプールで
潜水をしていた時に酸素が足りなくなり限界に
きつつもあともう少し、もう少しと言い聞かせ
ながら泳ぎ切った時の感覚に似ている。
もう少し、もう少し、とあきらめずに全身を
震わせながらも押し出すようにいきむ。

するとズルリとなにかが出てくる感触があり、
夫が
「あ、出た」と一言つぶやいたのをきいて
赤ちゃんがでてきてるのをちらりと見たら
パッタリと倒れこんでしまった。
まだ赤ちゃんの泣き声は聞えない。
先生がチューブを口にくわえて赤ちゃんの
口の中のものを吸いだしてるようだった。
バキュームのような音が少ししたら、
ゆったんの大きな産声が聞こえた。

もう感動とか感激とかっていうよりひたすら
「脱力」
終った・・・・という虚脱感というか、安堵というか
涙が出るとかそうのは全然なくて、あまりにも
力を使いすぎて放心状態に近かった。

体をふいて先生がいくつかの作業をして
それからパジャマをたくしあげるように言われた。
私の胸の上のところにゆったんが連れてこられて
それからへその緒を夫が切った。
そしてゆったんが私の胸の上に乗せられた。

生温かい重み。ゆったんの体温が伝わってくる。
でも私は後産が残っていて、痛みはまだまだ続く。
生まれおちてもまだ痛いのか~~~と苦しむ。

ゆったんは泣いたり静かになったりを繰り返して
いた。産後の処置に時間がかかったのでだんだん
泣くようになっていったのだけど、
「もうちょっと待ってね~。もう少しだからね~。」
と痛い思いをしつつもゆったんを一生懸命に励ました。

ゆったんがあまりに大きかったのと、吸引で出したため
腟内に裂傷ができ、数は多くないが、傷が深いということと、
会陰も大きく切ったようなので、縫合に時間がかかった。
それでも二人がかりでやったので早いほうだったんだと思う。
先生の縫合の腕前と手際の良さは腕の動き方でわかった。
おそらく普通の病院だったらほぼ間違いなく帝王切開に
切り替えられたんじゃないかと思う。
先生はギリギリまで私自身の力で産めるように
サポートしてくれたし、骨盤が狭く、産道が硬かった
私が下から産めたということ自体、奇跡に近いものが
ありました。

高齢出産で自然妊娠で自然分娩・・・といっても
吸引だけど、ほぼ自然の力でお産ができたことだけでも
満足です。医療行為の助けがあってこそ、出来る限り
自然な形でのお産ができたと思うし。
先生も「よくこの体でこの大きな子を産んだよ。本当に
よく頑張ったね。たいしたもんだ。」とほめてくれた。
でもほとんど先生の力によるところが大きかったんですよね。
いい先生にとりあげていただいたなと思いました。
昔は医療行為のない出産を理想としていたけれど、結局
その人の状態や赤ちゃんの状況というのは計り知れなくて
私のように医療があってこそ成立できるものもあるので、
自然に寄りそうような形のお産を目指してはいましたが、
促進剤や帝王切開を否定してるわけではないです。
最後は無事に赤ちゃんを胸に抱くことができれば、どんな
形の出産であれ誇らしいものなんだと出産を終えてみて
感じました。

先生が記念撮影をしてくれました。親子三人の初ショット
です。新しい家族なんだな~って思いました。

で、助産師さんが体重計りますよ~と連れていった時が
私たちの一番の注目どころだったんですが、
「3720gです」って言われた時は本当にびっくりして
「え~~~~・・・!」っと声をあげてしましました。
道理で簡単には出て来ないよね・・・ってため息さえ
でたほどです。(笑)

縫合し終えてから8時くらいに初乳をあげました。
ちゃんと飲めるのかな??と思ったけど、本当に
不思議だけれどちゃんと吸いつきました。
生命の神秘だな~~~って感じた瞬間です。

こうして私の出産は一段落ついたのでした・・・。
ま、この後のほうがもっと大変だったんですけどね・・・。