妻は、いつもリュックを使っていた。
最後に持っていたリュックは、ファスナーがほぼ壊れていた。
妻のメモを読み返し、DIYでなおそうとしていたのを知った。
ファスナー交換ということに、ぼくは、まったく知らなかった。
知るにつれて、結構、大変な仕事なんだと気づいた。
また、これは重要な部品でコストをかけたほうが良いものなのだとも知った。
だって、ファスナーが壊れたら、かばんとして機能しなくなるもん。
けど、同時に5千円未満のかばんだったら、コストが掛けられないものでもある。
妻が普段使いしていたリュックは、妻が自分で選んだリュック。
淡いベージュ色だ。
どうして、それにしたのかわからない。
妻と一緒にいたときに、「どうしてそれを選んだの?」
「それ、素敵だね」
そんな会話が出来ていなかった自分を悔やむ。
ぼくは、ファスナーを修理せず、誕生日に新しいリュックをプレゼントした。
家内は何も言わず、それを使ってくれた。
ぼくは、家内のメモを見つけたあと、壊れたファスナーを修理することにした。
修理してくれる店を捜して。
修理は一か月ほど、納期が掛かったけど、とてもきれいになおってきた。
PLUSONEという上野にあるお店。
そして、そのリュックをぼくは、ビジネスでないときは、いつも持ち歩いてる。
妻が自分で選んだもの、それを大切にすること、そんなことを学んだ。
先日、とあるイベントに出かけたとき、そのリュックを褒めてくれる男性がいた。
センスがいいですね、と。
とてもうれしかった。
だって、褒められているのは、妻のセンスだから。