仕事の面接に行ったのは、12月も半ばに差し掛かかろうとしていた頃だった。

 

面接して、すぐ決まったのは、建設業のバイト。

建設業のお仕事というのは、他の仕事と違って、すぐ決まる。

むずかしい採用試験があるわけでもない。

 

人生で何か行き詰ったときの受け皿みたいなものだろうか。

 

こんな年の瀬にすぐ働きだせる仕事など、そうそうあるわけもなく。

”来年から考えています”、というぼくに「すぐ働きだしなさい」と告げた医師の方に

正気ですか?と当時、考えていたことを、ぼんやりと想い出す。

 

振り返ると、ありがとうございますと思う言葉だった。

 

健康診断で、ちょっとした問題があっても、雇ってくれたその会社にも感謝。

 

この時期、人生初のスマートウォッチも導入してみた。

体力があまりに少ない感じがしたので、計測してみたくなった。

GarminのVIVOSMART4というのは、自分のHPを計測できるというので、これにした。

 

HPの残量が心配するほど、少なくて、だから、一生懸命スクワットをした。

12月に30回ほどぐらいからスタート。

3月には、200回できるようになっていた。

 

一日に歩く距離は毎日、おおよそ三万歩。

 

とにかく、何も考えず(もとい考えられない)働いた。

ときどき、仕事中、泣いていた。

でも、そんな変な人間でも、特に気にされないのは、ありがたかった。

他の仕事だったら、メンタルを病んでるヤバイ奴と思われたと思う。

 

毎日、起床するのは、朝の四時半。

ご飯を炊いて、白いご飯と卵焼きという感じのお弁当をもって出勤した。

 

ごく最初の数日間くらいはコンビニで何か買っていたかと思う。

でも、おにぎりを買うぐらいなら、ごはんを詰めて行ったほうが良い気がした。

 

見栄えはよくないお弁当だったけど、そんなことを気にする気持ちもなくなっていた。

 

帰宅したら、スクワット、腕立て伏せ。

風呂。

寝る。

 

こんな単純な日々がぼくを回復させてくれたのだと思う。

この期間というより、妻が赴任してからの七か月、まったく栄養は気にしなかった。

それでも、54キロくらいまで減少していた体重は62キロまで回復した。

 

ただ、考えすぎることだけは、今でも引きずっている。

考えて、どうかなることでないのは、わかっている。

 

”こうしたら、妻が赴任せず済んだのではないだろうか?”と考えるのをとめられなかった。

ぼくを支えてくれたのは、妻の笑顔だった。

 

ここ数年のぼくのスマホには、妻を撮った写真がたくさんあった。

妻は、いつも笑顔とポーズをとっていてくれた。

 

そして、妻のスマホには、ぼくの写真がたくさんあった。