父が泣いた



僕が入院して二日目。

父が病床の僕の背中を

ずっと30分くらい

さすってくれた

黙ったまま、さすってくれた


僕は父を下から見上げたまま

涙が頬をつたった

耳に、たくさん入った

父の涙も温かった


絶食で鋭気を無くし青白い顔で

点滴に苦しむ僕をみた彼もまた

50年前に同じ十二指腸潰瘍を患った

人生の先輩だった



父   大塚十二人
息子 大塚健二