旧右腕は今年の3月に左腕になった。
それは会社勤めに有るまじき無茶苦茶を旧右腕がしたから。
もちろん、旧右腕だけが悪いのではない。
旧右腕は社長が気に入って会社につれてきた人間だ。
確かに仕事はよくできた。
クレバーでもあった。
社長は旧右腕を高く評価して、たくさんの特別扱いをしてきた。
そして、その特別扱いが旧右腕にとっては当然のことになっていった。
うちの会社は最初、社長と正社員2人、パート4人の小さな会社だった。
だからこそ旧右腕への優遇措置も問題にならなかった。
時は経ち、正社員が2桁、パートさんは30人を超え、事業所は3つになった。
かつて社長の一存でできていたことが、そうはいかなくなった。
その結果、今まで通っていた旧右腕の希望は、その希望通りに聞き遂げられなくなった。
社長の一存より会社のルールが優先される仕組みに切り替わったのだ。
そして、今年の3月。
自分の希望が通らなかった旧右腕は社長に噛みついた。
そして、それは当然ながら
大一悶着へと発展していった。
とんでもない大一悶着は
右腕に辞めるか、条件を飲んで仕事を続けるかという二択を提示し、旧右腕が後者を選択することで落着した。
この1件で私の中で旧右腕は左腕へと降格した。
そこから5ヶ月。
旧右腕は新しい事業所で
自分のすべきことをきちんとこなし、
よく仕事をしている。
あんなことがあっても、
これだけきちんと仕事をしてくれてありがたいと思う。
そしてソツのない仕事をみると、やはり能力が高いなと関心する。
それでも、もう私は彼女を
かつてのように右腕にする気持ちにはならないし
社長も明らかに彼女には太い一線を引いている。
信頼を失うということ、
失った信頼を取り戻すことが
どれほど難しいかということ、
腹の底が冷えるような感覚になる。