suzyのふしぎの国 -3ページ目

suzyのふしぎの国

「あら?ジャポネ」の著者スージーが 短編小説を連載します。

ブリュッセル大渋滞



「なんだ あの騒ぎは!?」

外の騒がしさに 気づいたマサは 通りまで出てみた。

すると 信じられないような光景が。。。。


曲がり角では 大通りから こちらの通りに入ろうとしているトラックが曲がりきれずに立ち往生しているのだ。

ブリュッセルの石畳でできた路地は狭い。

そこには ハイエースが二重駐車して 荷を積んだ大型トラックの行くてを邪魔していた。


「た、大変だあ~   ヤバ。。。。」

マサに続いて出てきたコウスケが 悲壮な声を出した。

「どうするんんだ? モハメッド!」

マサは まだ、カウンター席でビールを飲んでいるモハメッドを睨み付けた。

「はあ?! なにかあったのか?」

モハメッドは ちょっとほろ酔い気分で トロ~ンとした目つきをした。

(あいかわらず のんびりしたヤツだ) マサはため息をついた。

「おい! 外を見ろよ! 大変な事になってるんだぞ!」

しぶしぶと ビールを飲み干して モハメッドも外に出た。!


「マァード! ケスクセ サー」(くそったれ! なんだ これは!)

モハメッドが毒づいた!。やっと 事の重大性に気づいたのだ。


3人は 急いで ハイエースに向かった。

ところが 車に近づくにつれ モハメッドの様子がおかしい。。

マサ達は 表通りの 大渋滞を見た。

トラックが 表通りの道をふさいで 後方には 恐ろしいぐらいの数の車とチンチン電車が 止まっていた。

「マサ コウスケ 逃げろ!」

モハメッドが 車のキーを持ったまま 車と逆の方に駈け出した。

「なにやってんだよ! モハメッド!」

マサの声に 振り向きながら モハメッドは 「早くこっちへ来い」 と手招きしている。

「どうしちゃったんだ! モハメッド。。。」

コウスケも 訳がわからん という顔をして しぶしぶモハメッドの後を追いかけた。

「おい! 車は どうするんだよ! 」

マサは叫びながら 途方にくれた。


つづく
シーワールド 続きです



ここの イルカは とっても 人に慣れていて


こんなに 近くに寄ってきます。



$suzyのふしぎの国



前に  イルカが 何度も ぐるぐる回って  近くまで 泳いで 来るので


イルカに 話しかけたんです



そしたら  しっぽを 撥ねて   水  かけられました !!





$suzyのふしぎの国



頭の いい イルカちゃん達  


私達が 喜んでいると  こうして  芸を みせてくれました !





$suzyのふしぎの国



ブルー・ペンギン  小さくて 可愛いです!
ブリュッセル大渋滞


豆腐を買いに行ったマサとコウスケは、高波の親父とおかみさんの出してくれた饅頭をほおばり、モハメッドとの待ち合わせ場所に向かった。


「あれ~ あの角に停まっているの うちのハイエースだよなあ」

マサは 石畳の路地を下った所に、運転席に誰も乗っていないハイエースを 見つけた。

そこは チンチン電車(当時は路上電車が走っていた)の通る大通りから住宅街へとの曲がり角だ。

「だよねえ。 でも、なんであんな所に停めてるんだろう。二重駐車じゃないのか?」

コウスケの言うとおり、路肩に停めた乗用車にピタ~っとつけてはいたが 本来なら走行車線だ。

マサは 周りを見渡した。

「ところでモハメッドは どこなんだ!」

コウスケも きょろきょろ あたりを見回した。



すると、すぐ脇のスタンドバーから モハメッドがひょっこり顔だけ出して手を振っている。

「オーイ! ちょっとビール飲んでいかないかあ?!」

「なんだ、アイツ 昼間っから飲んで。。。」

と言いながらも マサも嫌いじゃないから バーに入っていく。

コウスケは ズボンの後ろポケットをまさぐって

「俺 金 持ってないよ」と言いながらも スタンドに腰掛けた。



「ステラ 1つ」

マサが バーテンに注文した。

バーテンは手慣れた仕草で グラスを少し傾けて ノズルから出る琥珀色の液体の 泡の量を調整しながら注いでいく。

「それ、もう1つ」

並々と注がれたグラスを バーテンが マサの目の前のコースターに置くと すかさずコースケが注文した。

「マサさん 貸し ね」

「ああ、いいよ」

マサは 気前がいい。たいてい こういう時 後で返せとは言わない。

コウスケは 大食いで 貰ったわずかな給料のほとんどは食い物でアッと言う間に消えるから

いつも 金がない 金がない と言っている。

マサの方は 仕事もできるし給料もいいから 飲み代ぐらい 奢ってやってもいいと思っている。


「ここにも ステラね」

今度は モハメッドが 持っていたグラスを ぐいっと開け 2杯目を頼んだ。

結局 マサが3杯分払った。 

モハメッドは抜け目のない奴だから こうなる事は予想が出来た。


3人は しばらく 他愛もない話をして 午後のビールを 味わった。




「あ、いけねえ 車!」

始めに気が付いたのは マサだった。

なんだか 外が やけに騒がしいのである。



つづく



ブリュッセル大渋滞No2




マサは 昼と夜の営業時間の合間に 豆腐を買いに行く用事ができた。



この豆腐は 高波豆腐と言って 当時ブリュッセルでは 美味しいと評判だった。



高波の親父は 若い頃から ベルギーに来て 

様々な仕事をし さんざん苦労したあげく 豆腐を作る事を 思い立ち

自宅で 試行錯誤をしながら 日本の伝統を受け継いだ 美味しいもめん豆腐を作り上げた。


最初の頃は 自転車の荷台に乗せて ブリュッセル中の 日本レストランに行商に行った。

中国人がつくる パックから出せば すぐに崩れてしまう豆腐に比べ

どっしりとした質感のある 味のよい高波豆腐は 日本人の間で評判となった。


そのまま冷奴にしても良し、堅さや食感が 揚げ出し豆腐にしても旨かった。


「お~い モハメッド、 僕は 高波に行かなくちゃあ ならないから

ハイエースで そこまで一緒に行こう」


勇太郎とモハメッドのやり取りを聞いていたマサは 気を利かせて 誘ったのだ。


「あ マサさん 俺も行きたい!」

誘いもしないのに コウスケが言った。

目当ては 高波のおかみさんが出してくれる 茶菓子だ。

苦労人のこの夫婦は 青山登龍で 安い給料で こき使われているマサを 可愛がり

営業の合間に 時々豆腐を買いに来ると 茶菓子などで労った。




ガタガタと 石畳の路地裏を 走り抜け 大通りに出る。

ハイエースは 前に3人 並んで座れる。

運転しているのは モハメッドだ。 

ブリュッセルは 一方通行も多く、道が複雑に入り組んでいる。

だから マサなんかより 道を熟知している彼に 任せた方がいいのだ。

モハメッドの運転は 荒い。 

細い路地でも スピードを落とさないで 突っ走る。


「もう 高波に着くぞ。 早いだろ!

マサ、お前らが 豆腐 買いに行ってる間に 俺の用事を済ませてきても いいか?」

モハメッドは いつもの調子で 自分のペースで事を運ぶ。


「うん、いいよ。 じゃあ どのぐらいで戻ってこれる?」

マサは 助手席から コウスケと共に ハイエースを降りた。


「20分後、 この場所で。。」



そう言うと モハメッドはすぐに 土埃をたてながら 車を走らせて去って行った。 




つづく




ゴールドコーストは 夏 真っ盛りです



シーワールドに 行きました



まずは 定番の オットセイ・ショー を 見て



$suzyのふしぎの国



イルカ・ショー で 盛り上がり ました



$suzyのふしぎの国



冷房の効いた 水族館で 一息 入れて



$suzyのふしぎの国



充実した 一日 でした。。。。
ブリュッセル大渋滞



ある日の昼下がり 青山登龍の従業員であるモハメッドが勇太郎になにやら頼みごとをしている。

「だからあ~ ちょっと荷物をはこびたいんで ハイエース貸してもらえないかなあ」


「はあ!?またかよ。お前に車貸すと ろくな事がないからなあ

この前も 駐車違反のチケット こっちにまわってきてるぞー」

勇太郎の言葉に モハメッドは チェ っと舌打ちした。


「そっ、それはあ~ 俺が悪いんじゃないよー コウスケが ここに停めろと言った。。。」

いつもの 屁理屈が始まった。


モハメッドは自分の非を絶対に認めようとはしないのだ。

これは ヨーロッパ人もアメリカ人も 日本以外の 世界共通している事なのだが

どこまでも自分のあやまちとは認めず、他のせいにして まずは あやまらない。

訴訟の国だから 謝った方が負けなのだ。



         星                      星
                 星  




海外に生活していると よく こういう場面に遭遇する 


    
たとえば 出会い頭に 車同士がぶつかったとする。


日本人は まず 「すみません」と 自分が悪くないと思っていても あやまってしまう。

ところが 外人は 自分は悪くない と主張する

こういう場合、あやまってしまった日本人は 全面的に不利だ。

「お前が ぶつけたんだから 全面的に弁償しろ!」

と相手に責められてしまう。




外人同志なら そんな事にはならない。


お互いに 自分の正当性を主張して譲らず、「そっちが悪い」と まずは言い争いになる。

相手が 自分より弁が立つと判断したり、コイツと喧嘩したら負けそうだ と思ったら

少し 方向性を変えて 

お互いの車の ダメージを それぞれの 保険でカバーしようとか 提案して 歩み寄る。

大抵は 裁判まで持ち込まず  まあまあ 自分に損のないように 


なんとか 保険会社から取ってやろう と言う事で 利益が一致する。 

ポリスを呼んで 事故証明を 作る時には 双方の話し合いが できている。





言葉のできない日本人の駐在員などは そういう場合 不利である。



自分が悪くなくても あたふたと まるで加害者のように動揺し 

ひたすら 「sorry sorry] と言ってしまう。


それから 相手が主張する  「自分の正当性」に 


意味も分からず 「yes yes]  と同調する。



ポリスが来ても 一方的な 相手の言い分を わけもわからず 黙って聞く。



おろおろと 会社に電話して助けを求めようか 

それとも会社に知らせない方がいいのか迷う。



駐在員の頭の中は 

「金で解決できるのなら その方がいい」 

と言う結論に達する。



こうして 本当は何も悪くない駐在員が 

自分の保険を使って 相手のダメージを弁償する羽目になる。



もし、相手がずる賢いヤツだったら 修理の際に 

この事故でのダメージの他に これまで出来た傷やヘコミを 

これ幸いと全て直して請求する。



駐在員は そんな事も知らず 

「外国は 修理代が やけに高いなあ」

と思っても 文句も言えず



「まあ これぐらいで済んだのなら良しとするか」


などと 変な 納得をしてしまうのだ。





つづく 
ブリュッセルの泥棒市



その時 勇太郎は 何を思ったのか マサがズタ袋に入れて持っているジャケットを掴み出した。

それは今朝 赤いマイケル・ジャケットを買うまで マサが着ていた物だ。

ジーンズの生地で出来ているそのジャケットは 薄汚れて 襟足など黄ばんでいる。

元々 店の客が忘れていった物だが、長い間引き取り手もなく、屋根裏のタコ部屋脇の物置にあったのを

金が無くてジャケットも買えなかった頃、マサが洗って 着ていたのだった。


「ええ? ゆうさん これ どうするんですかあ?」

捨てても惜しくないような物だが、それでもマサには愛着があった。

「おい! 店主。このジャケット いくらで買う?」

勇太郎は 真っ赤になって 露天の店主に せまった。

「いやあ、お客さん。それはあ ちょっとねえ だいぶくたびれているから。。。」

しぶっている店主に向かって スージーが言った。

「ムッシュー、 ジーンズって くたびれた方がいいんじゃないの! 

アメリカでは わざわざ洗い古して ヨレヨレにして かぎ裂きがあったのを 売ってるよ」

うんうん とコウスケもうなづいた。

こちらに歩があると思ったのか さっきとは打って変わって 態度がでかくなった。

「そうだ そうだ! 俺達若者は わざと着古したジーンズの方が カッコイイと思うよ

こりゃあ 高く買ってもらわなくっちゃ!」

勇太郎も 勢いを得て 薄汚れたジャケットを ヒラヒラさせながら 大声で吠えた

「さあ! 買ってくれ! いくら出す!」



このやり取りを見ていたポリスが ぼそっと言った。

「店主。 このジーンズのジャケットを 引き取って 

かわりに そちらのジャケットを渡してやったらどうかね。

見たとこ そちらのジャケットは あんまりパッとしないじゃないか。

丈も袖も短くて とても普通の体格じゃ 着れないねえ。 

それに比べてジーンズのジャケットは 丈も袖も普通サイズだ。

どうみても こちらの方が 売れそうだよ。 どうだい店主 お前に損はないと思うがね」


勇太郎は これで決まりだ というように ポン と手を打った。

さっさと自分のジェケットを 貰い受け、意気揚々と 店を出て行く。


スージーは ポリスの意気な計らいに 敬意を表するように 

パチッとウインクして 太ったお腹周りに両手を回し ハグをした。

それは 丁度 小さい子供が 大きなオジサンに じゃれているように見えた。

それでも ポリスは 嬉しそうに身体を揺らして ふんふんと 鼻息も荒く得意そうであった。



マサとコウスケは 勇太郎の後を追いかけながら 

「やるな スージー!」 

と 振り返って 指を2本立てて ピースと合図を送った。



すでに 昼近く ブリュッセルの泥棒市は そろそろ店じまいをする時刻だった。 
 

 

ブリュッセルの泥棒市



「それは こういう事なんだね。 つまり、ムッシューの盗まれたジャケットがここに売られている。

しかし、店主は 8日前に 誰とも知らぬ人が持ち込んで それを買い取ったという訳だ。」

ポリスは 額に汗をにじませながら まだ息をぜいぜいと吐きながら でっぷりと太ったお腹を突き出して 
まるで裁判官にでもなったような口調で言った。


「ですから 旦那 私が盗んだ訳ではないのですよ」

さっきの居丈高な態度とは打って変わって 店主は困ったという表情を作りながら揉み手して言った。

蚤の市の露店主ともなると 陰で何をやっているか分からない連中との付き合いもあり、

もちろん盗品と知っていながら 引き受ける事もあるだろう。

しかしながら 彼も 一筋縄ではいかない。自分の身を守るすべも心得ている。

「旦那 私もね こちらさんには 気の毒だと思っているんですよ。。。」

などと、しらじらしくポリスには 愛想の良い いかにも人情溢れる良識人を装っている。


勇太郎の方は 怒りが収まらない。

「何言ってやがるんだい! 俺の盗まれたジャケットを 売ってる てめえが怪しい!

旦那あ~ こいつに 吐かせてやってくださいよ! 

いったい 誰が盗んでここにもってきたのか。。。。」

唾を飛ばし、こぶしに力を入れ 肩で息しながら 精一杯勇太郎は訴えた。



コウスケは 今度はそろそろと にじり寄って 成り行きに興味深々である。

マサもスージーも ポリスはきっと 公正な立場から 勇太郎の味方をするだろうと 思っていた。


ところが、

「じゃあ ムッシュー どうしてもこのジャケットが欲しければ 買いなさい」

ポリスは さも なんでもない というような 落ち着いた口調で こう言った


勇太郎も、マサも、スージーも  わが耳を疑った。。。。

「はああ~??! な、なんで。。なんで俺が 自分のジャケット 買わなくちゃいけないんですかあ?」

まったく おかしな話だと 勇太郎は怒りを超えて 情けなくなった。

「ええ~!?? それって 変じゃないですかあ~。。。。}

スージーも 納得いかない。。のだった。




つづく





ブリュッセルの泥棒市No5



ジャケットの裏に自分のネームをみつけた勇太郎は 店主を呼びつけた

「おい! これは俺のだ! 先週盗まれた俺のジャケットだ!」

いまにも飛びつかんばかりの勢いで 勇太郎は怒りを込めて怒鳴った。

ところが店主は 謝るどころか 鷲鼻をヒクヒクさせながら たいそうな剣幕で言い返した。

「なんだとお! 俺を泥棒呼ばわりしたなあ!」

胸を張って 腰に手をあて、堂々とした体格で押し出すと 小柄な勇太郎を見下ろした。

「俺はここで もう10年以上も露天やってるんだ。
変ないいがかりはよしてくれ! この店は古着屋なんだ。
誰がどういう服を持ってこようが こっちの知った事じゃねえ。」

背は低いが かっちりした体格の勇太郎は 気の強さでは誰にも負けない。

額に青筋を立てて 顔を真っ赤にして いまにも食いつきそうな鬼のような顔をして言い返した。

「てめえ ニッポンジンを なめてんじゃねえぞ! 
バカ野郎! でけえのがいいってもんじゃねえんだ!」

海外に出てから これまでに 勇太郎は幾度も アジア人だという事でバカにされたり、
さげすまれた苦い経験があった。

そう言うくやしさが 本来の負けず嫌いな性格と合わさって 少々ケンカッぱやくなっていた。


勇太郎と店主の言い争いは激しく、今にも殴り合いになるかと思われた。

コウスケは 「ヤバイぞ」と思いながらラックに掛けてある古着を見ているふりをした。

いつでも その場を逃げ出せるように そろそろと 出入り口に向かっている。

マサは どうしたらいいのかと ただ オロオロしている。

それを冷静に見ていたスージーは 何を思ったか突然 店を出て 露天の路地を走り出した。


    
        
       星       星        星         星      
 
    
   

蚤の市は 地元の住人をはじめ、観光客も沢山来る。置き引き、すりなどの軽犯罪は日常茶飯事の出来事である。

それに加えて、迷子、落し物、喧嘩の仲裁など ポリスもなかなか忙しい。

時々 スージーのように訳の分からぬ事を言ってくるヘンテコな外国人がいる。

「大変なんです!すぐに来てください}

「どうしました? 何が大変なんですか」

スージーは なんとかポリスを見つけたのだが なかなか言いたいことが通じなくて 困っていた。

「とにかくお願いします。喧嘩になりそうなんです!盗まれた服が出てきて~ 一緒に来てください」

「盗難にあったのですか?マドモアゼル」

「私じゃないんです。。。。」

(ああ~ なんて分からない人かしらん)

まどろっこしく思ったスージーは いきなし、大柄のポリスの手をとって 小さな犬が飼い主を引っ張って行くように

ずんずんと マサ達のいる古着屋まで歩き出した。

「マドモアゼル! なに するんですか。。。」

と言いながらも 可愛い女の子に手を握られてまんざらでもない様子で ポリスは引かれて行った。

(注:スージーは 当時30歳になっていたが若作りだったのと アジアの女性は小柄なのでヨーロッパ人に比べて若く見えるのとでポリスは大きな勘違いをしたのである)

 


勇太郎と店主が ますます激しくいい争っていると ポリスを連れたスージーが帰ってきた。

「まあまあ、2人共 何が問題なんだね」

でっぷりと太ったポリスは ぜいぜいと息をはきながら割って入った。

勇太郎は しめた!と思った。ポリスなら この店主を捕まえて ジェケットを返してもらえると思ったのだ。

「まあ、旦那 聞いてくださいよ。これは私の盗まれたジャケットなんです。。。。」

ふんふん と聞いていたポリスは 次に店主の言い分も聞くのを忘れなかった。





つづく 





ブリュッセルの泥棒市 No4




勇太郎とコウスケは スージーと浮かれて大笑いしているマサを尻目に 

近くにあった古着屋に入った。


10日ほど前 勇太郎が青山登龍で働いている間に 自宅に泥棒が入った。 

帰宅して驚いたことに、テレビやレコーダーといった電気製品から衣服まで

ごっそり盗まれていたのだが、

ベッドのマットレスの下に隠し持っていた札束は無事だった。


それには ちょっとした逸話がある

勇太郎は 店で儲かった金を銀行に預け入れる事を嫌っていた。

売り上げを 正直に申告していたら 税金の高いベルギーでは 金は貯まらない。

何処の店でも やっている事なのだが 現金で支払った客の伝票は 

後でこっそり捨ててしまう。

青山登龍では 時々 日本からの観光客や 出張者が来る。

彼らが日本円で払いたいと申し出れば 勇太郎は喜んで 

ホテルなどよりも良いレートで換算してやっている。

そういう客が ドイツ帰りで ドイツマルクがあまったとか 

フランスフランがこれだけあるが 明日帰国するからもう使い道がない などと言うと

それらの金も引き受けてやっていた。(1990年の話ですから ユーロ通貨ではありません)

客は大喜びするし、勇太郎にとっても 現金客は ありがたかった。

なにしろ コウスケも マサも この頃は不法滞在の 不法就労であったから

彼らの給料は こうした申告しない現金で支払われていたからだ。

そういう訳もあって 勇太郎は 常に現金をどこかに隠せば安全なのか思案していたのだ。


この日 とうざの着る服でも探そうかと 勇太郎はマサ達を従えて 蚤の市に来ていた。

「この店は なかなかの品ぞろえだ 良い物 いっぱい持ってるぞ」

手足の長いヨーロッパ人と違って 背が低く 手足の短い勇太郎は 

普通のブティックでは 自分にあったサイズがなかなかみつからない。

こういう古着屋には 中国人や 東南アジアからの移民の着ていた物もある。

中には 日本人駐在員が帰国時に タダ同然でおいて行く掘り出し物もあるのだ。



「あれええ? ゆうさん! ちょっと みてくださいよ~」

奥から コウスケの 素っ頓狂な声がする。

「なんだよ なにかあったのか」

勇太郎は コウスケの示した ジャケットを見て 驚いた。

「ええ~!! これは 俺のだ!  俺の盗まれたジャケットじぇねえか!!」


丁度 その時 マサはスージーを連れだって 古着屋に入ってきた。

「おい マサ、コウスケ ! これを見ろ!」

勇太郎は ジャケットを裏返して 胸ポケットに刺繍された ネームを まじまじと見つめた。

そこには まぎれもなく 漢字で 「青山」と書かれていた。



つづく